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恋と仕事と
第18話
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「改めまして。ようこそシーズン公爵家へ。私が当主のシーズン公爵、ビルスです」
滑舌良く、礼儀正しく挨拶をし直すビルスに応え、キャメイリアが自身とノアランを紹介すると、モーランから引き継いだ給仕がふたりをテーブルに案内した。
「シルベスではカーラが大変世話になったと聞いております。今宵はその礼と、せっかくのご縁をより深め、今後各家門の発展に繋げたいと望んでおります。これからも是非我がシーズン公爵家と手を携えてくださるようお願いしたい」
「ご丁寧にありがとうございます。もちろん私どももそのように願っておりますわ」
美しい貴婦人に微笑まれても、海千山千のビルスは揺らぐことはないが。満たされた気持ちを覚え、胸元が擽ったくなった。
ふと視線を感じて目線を動かすと。カーラが睨んでいる!
(ち、違う違う違うそういうのじゃないぞ!誤解するなよカーラ!)
と、思わず口を開きかけ、小さく首を横に振って誤魔化すのだった。
「さ、さあ!では心ばかりの饗しを」
美しい母子は互いに目配せし、頷いた。
「なんて素晴らしいお味なのかしら」
キャメイリアがステーキを褒め称えている。
シルベスにはいない、オポティラビットという大きなげっ歯類の肉を使ったそれは、歯応えはあるのに硬くはなく、臭いは少ないが旨味を感じさせるものだ。
今日しめたわけではなく、熟成させていることも、旨味を引き出す理由だろうが。
「オポティラビットなんて聞いたことありませんね」
ノアランも知らないと言う。
ビルスはあとで公爵家で飼育するオポティラビットを見せると約束していた。
食事を楽しみながら、ビルスはノアランと思いの外話が弾み、食後にはなんと家族だけが使う広間に彼らを招き入れ、ゆったりとワインを振る舞ったほど打ち解けた。
「いやあ、本当に気持ちのいい方ですなノアラン様は!キャメイリア様にとり、さぞ自慢のご子息でしょうなあ」
あからさまに褒められたノアランは恥ずかしそうに視線を彷徨わせたあと、はにかんで笑みを浮かべる。
気に入られようと意識したわけではないが、カーラの父に気に入られるなら、それはありがたいことに違いない。
「シーズン公爵家にも優秀な御嫡男がいらっしゃると聞きましたわ」
「ははは。優秀かどうかはアレですが、次期公爵を担うために頑張ってはいるようです」
ポリポリと頭を掻いたビルスは、ふっとノアランがカーラを見つめる視線に気がついた。
やさしく愛おしげだ。
(うん?んんん?これはもしかして、そういうやつか?)
カーラを見ると、こちらはワインに添えられたスイーツに気を取られている。
(まったく色気より食い気か)
トホホとため息を洩らしたが、一緒に事業を起こすなど、嫌いな相手なら決してしないものだ。見込みがあると、ビルスはやる気が湧いてくるのだった。
滑舌良く、礼儀正しく挨拶をし直すビルスに応え、キャメイリアが自身とノアランを紹介すると、モーランから引き継いだ給仕がふたりをテーブルに案内した。
「シルベスではカーラが大変世話になったと聞いております。今宵はその礼と、せっかくのご縁をより深め、今後各家門の発展に繋げたいと望んでおります。これからも是非我がシーズン公爵家と手を携えてくださるようお願いしたい」
「ご丁寧にありがとうございます。もちろん私どももそのように願っておりますわ」
美しい貴婦人に微笑まれても、海千山千のビルスは揺らぐことはないが。満たされた気持ちを覚え、胸元が擽ったくなった。
ふと視線を感じて目線を動かすと。カーラが睨んでいる!
(ち、違う違う違うそういうのじゃないぞ!誤解するなよカーラ!)
と、思わず口を開きかけ、小さく首を横に振って誤魔化すのだった。
「さ、さあ!では心ばかりの饗しを」
美しい母子は互いに目配せし、頷いた。
「なんて素晴らしいお味なのかしら」
キャメイリアがステーキを褒め称えている。
シルベスにはいない、オポティラビットという大きなげっ歯類の肉を使ったそれは、歯応えはあるのに硬くはなく、臭いは少ないが旨味を感じさせるものだ。
今日しめたわけではなく、熟成させていることも、旨味を引き出す理由だろうが。
「オポティラビットなんて聞いたことありませんね」
ノアランも知らないと言う。
ビルスはあとで公爵家で飼育するオポティラビットを見せると約束していた。
食事を楽しみながら、ビルスはノアランと思いの外話が弾み、食後にはなんと家族だけが使う広間に彼らを招き入れ、ゆったりとワインを振る舞ったほど打ち解けた。
「いやあ、本当に気持ちのいい方ですなノアラン様は!キャメイリア様にとり、さぞ自慢のご子息でしょうなあ」
あからさまに褒められたノアランは恥ずかしそうに視線を彷徨わせたあと、はにかんで笑みを浮かべる。
気に入られようと意識したわけではないが、カーラの父に気に入られるなら、それはありがたいことに違いない。
「シーズン公爵家にも優秀な御嫡男がいらっしゃると聞きましたわ」
「ははは。優秀かどうかはアレですが、次期公爵を担うために頑張ってはいるようです」
ポリポリと頭を掻いたビルスは、ふっとノアランがカーラを見つめる視線に気がついた。
やさしく愛おしげだ。
(うん?んんん?これはもしかして、そういうやつか?)
カーラを見ると、こちらはワインに添えられたスイーツに気を取られている。
(まったく色気より食い気か)
トホホとため息を洩らしたが、一緒に事業を起こすなど、嫌いな相手なら決してしないものだ。見込みがあると、ビルスはやる気が湧いてくるのだった。
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