せなとひなのナイショのはなしーっ

むらさきおいも

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事故について

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俺は当時の事を思い出すべく、仕事の合間に子役時代からついてくれている松田まつだマネージャーに話を振った。


「なぁ、練習生に結城陽向ゆうきひなたっていただろ?あいつと俺、よく昔子役のオーディション一緒になったりしてさ、仲良くしてたの覚えてる?」

「あ…あぁ、もちろん。お前ら仲良かったからな」

「なのに何で…俺、ひなの事故の事知らなかったんだろ…いや、知らなかった訳ないんだ。なぁ、松ちゃん…なんか覚えてない?」

「あぁ…あれは不慮の事故だよ、交通事故。星那せいなあの頃忙しかったし…忘れちゃっててもおかしくないって」


忘れても仕方ない!?
そんな事ある訳ないだろ!?

あ…そういや、陽向も忘れていいって言ってたよな?
って事は、当時俺は知ってたって事だよな!?
そんな大事な事、何で覚えてないの!?

俺は納得いかなくて、レッスンの休憩中に当時の事故についてネットで調べてみた。
あの時、陽向はそこそこ名の知れていた役者だったから、事故なんて起こしたら取り上げられててもいいはずだ。

『結城陽向 事故』

検索にかけたら一発だった。

当時17歳だった陽向は、六本木の交差点で暴走した車に信号無視で突っ込まれたらしい。
意識不明の重体…

その後の記事には、一ヶ月が経っても目を覚まさず…とある。
一体俺はこの期間何をしていたんだ!?

俺はあいつが勝手に何も言わずにこの業界から居なくなったって、そう思って今まで生きてきたのに…

忘れていた悔しさと知りたい欲求で、俺は次々へと記事を漁りまくった。
すると、ある記事の一文にスクロールする指が止まった。

『事故の現場にはタレントの桐島星那きりしませいなの姿もあり、彼は事故には巻き込まれず無事だった』

「は…?お…れ……?」


俺がその事故の現場に…いた…!?
じゃあ何で何も思い出せない!?

当時高校生…あの頃といえば…
そうだ、陽向の大きな仕事が決まって…それで…

事故の現場はどこだ!?
六本木の交差点…六本木…ろっ―――


「せなっ!」(せなっ!危ない!!)


あっ…ひな…っ!?
陽向に呼ばれて振り返ると、目の前にいるひ陽向少し小さく見えて、あの日の情景が重なる…

俺を突き飛ばし、車に跳ねられた陽向は遠くまで飛ばされて道路で倒れている。

足が震えて立てなくて、他の車のクラクションがうるさくて、でも陽向の所に行きたくて…
俺は必死に陽向の元まで這って行った。

陽向は…どっからどう見ても無事ではなかった…

ひな…っ、ひなぁっ―――


「せなっ!せなっ!!落ち着けって…っ」

「はぁ…っ、はぁ…ひな…っ、ひな…っ」

「大丈夫、俺ここにいるから…」

「ひなぁ…っ、ごめんっ、ごめんね…俺のせいだったぁ…」

「ばかっ、何で検索なんかしたんだよ。思い出さなくても良かったのに… 」

「だって…っ、忘れてたなんて…っ、俺っ…」

「一緒に頑張ろうって…それだけ覚えててくれればそれで良かったんだよ。ばか…せな…」


後からちゃんと聞いた話だと、俺は事故の後陽向が抱えてた大きな仕事を代わりにと振られていたが、代役のプレッシャーと陽向の事を守れなかった後悔で精神的にやられて撮影中にぶっ倒れたらしい。

そして、この事故の記憶がすっぽりと抜け落ちたんだって…

だけど、陽向は一向に目を覚まさないし、事故の記憶は無い方が俺の為だと周りの大人が判断して、俺にその情報を一切入れなかったらしい。

一年も経てば陽向の事故の事なんて誰も記事にしなくなり、何となく世間から忘れられていって、俺の中でも陽向は約束を守らず勝手に辞めてった奴、と言う記憶に塗り替えられていたんだ。

どこで何をしてるのか、気になる時もあったけど…
俺には俺のやるべき仕事があったし、もう会うこともないと思ってたから…

そして記憶が蘇ったと同時に、当時俺が陽向に抱いていた特別な感情も少しずつ蘇ってきたんだ。

陽向がどうだったかはわからない…
これは俺だけの感情…かもしれない…っ

友達として…
そう、今は友達としてライバルとして接しなきゃ。
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