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9話
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「八雲、体調はどうだ?」
一時間後、帰宅した叶は一番に寝室に訪れた。
「一時的なヒートだから落ち着いた」
「そうか、よかった」
安心した表情で叶はサイドソファに腰をかけた。
それから鼻を一つ鳴らすと、下世話に笑う。
「……お前ヌいただろ」
「サイテー」
デリカシーのない男だ。なんでこんな男でヌいてしまったんだろう。改めてまじまじと叶の姿を眺める。
切れ長の目は晴人先輩に似てるかもしれないが、それ以外は全くと言っていいほど好みにかすっていない。
八雲の好みはまさしく晴人そのもので、こんな男では決してないのだ。
「はぁ……、あ、そうだ。メール来てたんだった。確認しなきゃ」
通知の溜まっていたスマホを手にとってスクロールする。その全てが御影からのものだった。
『身体大丈夫か?』
『晴人からなんか言われたか?』
『晴人から連絡が来ない』
『どうすればいい』
「いや知るか」
どうやら御影は晴人と連絡が取れないらしい。
いつもよろしく地雷でも踏んだんじゃないのか、と呆れてスクロールしていくとあることに気づいた。
(……あれ、もしかして俺自体が地雷……?)
『転校生のΩと付き合ってるって本当ですか?』
目安箱に悪戯に投書された一文を思い出す。
あれは晴人の精一杯の嫉妬の表現で悪意だ。弁解したとは言っても自分の彼氏に近づくΩのことなんてよく思っていないだろう。
それがつがいのいないフリーのΩなら尚更。
だったら。
「ねえ、叶兄さん」
「ん?」
「俺のうなじ、噛んで」
「は?!」
いつかはやらなければと思っていた。
うなじさえ噛まれれば自分はその対象以外にはフェロモンを撒き散らさずに済む。怖い思いも、何も心配なく普通の人間のように暮らせる。親とも仲良く出来るかもしれない。それがいつまでたっても覚悟出来なかったのは、いつか自分に運命の番が現れると期待していたからだ。
「何言って……」
「兄さんとつがいになんてなるつもりはないよ。ただ、もう疲れただけ。そこら辺は割り切ってほしい」
運命の番なんてどうせ自分には現れない。
Ωのくせにαに媚びることすらできないなんて欠陥品だろう?自分でもそう思う。
だったら、最少のリスクを選ぶ。
自分さえ諦めれば、この先全て幸せになれるのだ。
晴人を傷つけたくない。
この先出会う人も、誰も傷つけたくない。
自分の周りはハッピーエンドじゃないと許せない。
「八雲、お前はヒートでおかしくなってるんだ。そういうのは恋人に頼みなさい」
「叶兄さん以外に触れないのに?親ですら触れないのにどうしろって言うの?」
「それは……」
「別に責任とれって言うわけじゃないんだよ。ただ、俺の未来の為に噛んでほしい」
八雲はそう言うとチョーカーを外して叶に頸を差し出した。
「……噛んで」
ゴクリと、叶の喉が鳴る音がした。
「八雲、やめてくれ」
「俺のこと好きなんでしょ?だったら、やってよ。俺の為に」
八雲はそう言って叶を抱きしめた。
首元に口が近づくように、キツく。
近づく唇。たまらないように、叶は八雲の頸にひとつキスを落とすと大きく口を開けて八雲に齧り付いた。
一時間後、帰宅した叶は一番に寝室に訪れた。
「一時的なヒートだから落ち着いた」
「そうか、よかった」
安心した表情で叶はサイドソファに腰をかけた。
それから鼻を一つ鳴らすと、下世話に笑う。
「……お前ヌいただろ」
「サイテー」
デリカシーのない男だ。なんでこんな男でヌいてしまったんだろう。改めてまじまじと叶の姿を眺める。
切れ長の目は晴人先輩に似てるかもしれないが、それ以外は全くと言っていいほど好みにかすっていない。
八雲の好みはまさしく晴人そのもので、こんな男では決してないのだ。
「はぁ……、あ、そうだ。メール来てたんだった。確認しなきゃ」
通知の溜まっていたスマホを手にとってスクロールする。その全てが御影からのものだった。
『身体大丈夫か?』
『晴人からなんか言われたか?』
『晴人から連絡が来ない』
『どうすればいい』
「いや知るか」
どうやら御影は晴人と連絡が取れないらしい。
いつもよろしく地雷でも踏んだんじゃないのか、と呆れてスクロールしていくとあることに気づいた。
(……あれ、もしかして俺自体が地雷……?)
『転校生のΩと付き合ってるって本当ですか?』
目安箱に悪戯に投書された一文を思い出す。
あれは晴人の精一杯の嫉妬の表現で悪意だ。弁解したとは言っても自分の彼氏に近づくΩのことなんてよく思っていないだろう。
それがつがいのいないフリーのΩなら尚更。
だったら。
「ねえ、叶兄さん」
「ん?」
「俺のうなじ、噛んで」
「は?!」
いつかはやらなければと思っていた。
うなじさえ噛まれれば自分はその対象以外にはフェロモンを撒き散らさずに済む。怖い思いも、何も心配なく普通の人間のように暮らせる。親とも仲良く出来るかもしれない。それがいつまでたっても覚悟出来なかったのは、いつか自分に運命の番が現れると期待していたからだ。
「何言って……」
「兄さんとつがいになんてなるつもりはないよ。ただ、もう疲れただけ。そこら辺は割り切ってほしい」
運命の番なんてどうせ自分には現れない。
Ωのくせにαに媚びることすらできないなんて欠陥品だろう?自分でもそう思う。
だったら、最少のリスクを選ぶ。
自分さえ諦めれば、この先全て幸せになれるのだ。
晴人を傷つけたくない。
この先出会う人も、誰も傷つけたくない。
自分の周りはハッピーエンドじゃないと許せない。
「八雲、お前はヒートでおかしくなってるんだ。そういうのは恋人に頼みなさい」
「叶兄さん以外に触れないのに?親ですら触れないのにどうしろって言うの?」
「それは……」
「別に責任とれって言うわけじゃないんだよ。ただ、俺の未来の為に噛んでほしい」
八雲はそう言うとチョーカーを外して叶に頸を差し出した。
「……噛んで」
ゴクリと、叶の喉が鳴る音がした。
「八雲、やめてくれ」
「俺のこと好きなんでしょ?だったら、やってよ。俺の為に」
八雲はそう言って叶を抱きしめた。
首元に口が近づくように、キツく。
近づく唇。たまらないように、叶は八雲の頸にひとつキスを落とすと大きく口を開けて八雲に齧り付いた。
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