番になんてなりませんっ!

あいう

文字の大きさ
9 / 22

9話

しおりを挟む
「八雲、体調はどうだ?」

一時間後、帰宅した叶は一番に寝室に訪れた。

「一時的なヒートだから落ち着いた」
「そうか、よかった」

安心した表情で叶はサイドソファに腰をかけた。
それから鼻を一つ鳴らすと、下世話に笑う。

「……お前ヌいただろ」
「サイテー」

デリカシーのない男だ。なんでこんな男でヌいてしまったんだろう。改めてまじまじと叶の姿を眺める。

切れ長の目は晴人先輩に似てるかもしれないが、それ以外は全くと言っていいほど好みにかすっていない。

八雲の好みはまさしく晴人そのもので、こんな男では決してないのだ。

「はぁ……、あ、そうだ。メール来てたんだった。確認しなきゃ」

通知の溜まっていたスマホを手にとってスクロールする。その全てが御影からのものだった。 

『身体大丈夫か?』
『晴人からなんか言われたか?』
『晴人から連絡が来ない』
『どうすればいい』

「いや知るか」

どうやら御影は晴人と連絡が取れないらしい。
いつもよろしく地雷でも踏んだんじゃないのか、と呆れてスクロールしていくとあることに気づいた。

(……あれ、もしかして俺自体が地雷……?)

『転校生のΩと付き合ってるって本当ですか?』

目安箱に悪戯に投書された一文を思い出す。
あれは晴人の精一杯の嫉妬の表現で悪意だ。弁解したとは言っても自分の彼氏に近づくΩのことなんてよく思っていないだろう。
それがつがいのいないフリーのΩなら尚更。
だったら。

「ねえ、叶兄さん」
「ん?」
「俺のうなじ、噛んで」
「は?!」

いつかはやらなければと思っていた。
うなじさえ噛まれれば自分はその対象以外にはフェロモンを撒き散らさずに済む。怖い思いも、何も心配なく普通の人間のように暮らせる。親とも仲良く出来るかもしれない。それがいつまでたっても覚悟出来なかったのは、いつか自分に運命の番が現れると期待していたからだ。

「何言って……」
「兄さんとつがいになんてなるつもりはないよ。ただ、もう疲れただけ。そこら辺は割り切ってほしい」

運命の番なんてどうせ自分には現れない。
Ωのくせにαに媚びることすらできないなんて欠陥品だろう?自分でもそう思う。
だったら、最少のリスクを選ぶ。
自分さえ諦めれば、この先全て幸せになれるのだ。
晴人を傷つけたくない。
この先出会う人も、誰も傷つけたくない。

自分の周りはハッピーエンドじゃないと許せない。

「八雲、お前はヒートでおかしくなってるんだ。そういうのは恋人に頼みなさい」
「叶兄さん以外に触れないのに?親ですら触れないのにどうしろって言うの?」
「それは……」
「別に責任とれって言うわけじゃないんだよ。ただ、俺の未来の為に噛んでほしい」

八雲はそう言うとチョーカーを外して叶に頸を差し出した。

「……噛んで」

ゴクリと、叶の喉が鳴る音がした。

「八雲、やめてくれ」
「俺のこと好きなんでしょ?だったら、やってよ。俺の為に」

八雲はそう言って叶を抱きしめた。
首元に口が近づくように、キツく。
近づく唇。たまらないように、叶は八雲の頸にひとつキスを落とすと大きく口を開けて八雲に齧り付いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...