31 / 55
第三十一話……マエダ少将の命令
しおりを挟む
ゲルマー星系第四惑星エーレントラウト。
この惑星の統治者はハーバー伯爵であるが、様々な利権などの要因で、反政府的な勢力も並立して存在していた。
その反政府組織はゼノン王の支援を受け武力蜂起。
そのため、ハーバー男爵はコローナ臨時政府と同盟を締結し、同時に惑星コローナに援軍を要請していた。
それに際し、惑星コローナ臨時政府はマエダ少将を司令官とした地上軍を派遣した。
惑星エーレントラウトに向かう輸送船団の作戦室。
晴信は今回の派遣軍司令官であるマエダ少将に呼び出されていた。
「まぁ、かけたまえ」
「はい」
晴信は少将の勧めるままに席に着いた。
マエダ少将は小柄で、でっぷりとしたお腹をした中年の将軍だった。
「早速要件だが、……君の船は強い。よって単艦によって、惑星エーレントラウトの南極に向かって欲しい」
「はい。それで南極って何があるのですか?」
エーレントラウトは比較的寒冷な土地柄で、極地の寒さは相当なものだった。
であるからには、戦略上のメリットもない場所だったのだ。
「今は何もないが、今後は極めて重要な場所だ。別途命令があるまでそこを堅守して欲しい」
「わかりました」
こうして晴信は南極守備という任務を与えられ、作戦室を退室。
その後、惑星エーレントラウトの衛星軌道上で本隊と別離した。
晴信を乗せたドレッドノートは単艦で大気圏突入、一路南極へと向かった。
☆★☆★☆
「予定地点に降下。着陸します!」
「了解!」
ドレッドノートは氷の大地へと着陸。
大気圏で熱された艦体が急速に冷やされる。
晴信が艦橋の窓から外を見ると、凄まじい勢いのブリザードが吹き荒れていた。
「寒いところだね」
「ですねぇ」
別に艦内は寒くないのだが、晴信もディーも寒い気分になる。
きっと、視覚的な心理効果であろう。
「……で、なにしたらいいんだっけ?」
晴信はディーに問う。
「えーっと。なにもするなって、ことじゃなかったですっけ?」
ディーは呆れたように答える。
ちなみに惑星コローナ軍の本隊は赤道上の地点に降下後に展開。
丁度、敵とにらみ合っているはずの時分であった。
「……うーん、しばらく様子をみるかぁ……」
晴信もあきれ顔で応じる。
当然ながらにこんな寒いところに敵がいるわけがない。
もしかしたら、という可能性もあるので一応探査機を飛ばす。
……が、その日一杯、索敵に徹しても敵は現れず、さらに言うなら人為的な構造物さえ周囲20kmには存在しなかった。
つまり、遠路はるばる隣の惑星まで来て、やることはないといった具合だったのだ。
☆★☆★☆
「大佐、マエダ少将に関するデータをお持ちしました」
「ありがとう」
晴信に書類を持ってきたこの女性、名前をエリーという。
カンスケがつけてくれた犬族の副官であった。
「どれどれ……」
晴信は書類に目を通す。
あまり他人に興味のない晴信であったが、変な命令をする上官であったので、調べてみたくなったのだ。
調べて分ったことは、出世欲が軍人の服を被ったような者であった。
少将までスピード出世してきたが、収賄容疑など数々のきな臭い噂がある人物だったのだ。
「これどう思う?」
晴信はエリーに聞いてみた。
「間違いなく、大佐に手柄をとられたくないのだと思います」
ディーもそう思うと言わんばかりに、ランプをチカチカさせた。
「帰っても良い気がするんだよなぁ……」
「命令違反は良くないですよ」
晴信はディーに窘められる。
たしかに晴信は、惑星コローナの支配者の配偶者であったが、軍においては大佐という位置づけで、上官の命令には服する必要があるという訳のわからない立場であった。
――この時分。
マエダ少将率いる本隊は地上戦を展開。
寒冷地である惑星エーレントラウトも、作戦展開地の赤道付近は熱帯雨林が拡がっていた。
それに際して、乾燥した砂漠に適した惑星コローナの兵器は故障が相次ぐ。
戦車や装甲車は泥濘に足をとられ、兵士たちは害虫に悩まされたのだった。
「何をしておる。さっさと進まんか!」
「すいません」
マエダ少将の乗る指揮車両も、しょちゅう泥沼にはまるといった体たらくであった。
唯一、満足な稼働率を誇ったのは、古代遺産の兵器であるゴーレムだけ。
しかし、ゴーレムは貴重品の為、3体しか持ってきておらず、その数は敵に対してさほど有利に働きそうになかった。
☆★☆★☆
――三日後。
現在位置より25kmの地点に古代遺跡発見。
晴信にとっては嬉しい情報が、索敵機によってもたらされた。
言わずもがな、古代遺跡は宝の山である。
人が寄り付かない極寒の南極地だからこその存在だったかもしれない。
「当然、行ってもいいよね!?」
俄然晴信は元気になり、副官のエリーに聞いてみた。
どうせ左遷中なのだ。
遺跡調査していても構わないだろうと晴信は思ったのだ。
「連絡を絶やさない範囲であればいいと思いますわ」
「やったー」
晴信はディーと共に喜ぶ。
このエリーという副官。
副官というよりは、彼等の保護者という表現が適当だったかもしれない。
「寒いから沢山着ていってくださいね」
「うん、そうするよ」
晴信はエリーにそう答え、ドレッドノートを操艦。
古代遺跡が存在すると思われる地点の氷上に再び着陸させたのだった。
この惑星の統治者はハーバー伯爵であるが、様々な利権などの要因で、反政府的な勢力も並立して存在していた。
その反政府組織はゼノン王の支援を受け武力蜂起。
そのため、ハーバー男爵はコローナ臨時政府と同盟を締結し、同時に惑星コローナに援軍を要請していた。
それに際し、惑星コローナ臨時政府はマエダ少将を司令官とした地上軍を派遣した。
惑星エーレントラウトに向かう輸送船団の作戦室。
晴信は今回の派遣軍司令官であるマエダ少将に呼び出されていた。
「まぁ、かけたまえ」
「はい」
晴信は少将の勧めるままに席に着いた。
マエダ少将は小柄で、でっぷりとしたお腹をした中年の将軍だった。
「早速要件だが、……君の船は強い。よって単艦によって、惑星エーレントラウトの南極に向かって欲しい」
「はい。それで南極って何があるのですか?」
エーレントラウトは比較的寒冷な土地柄で、極地の寒さは相当なものだった。
であるからには、戦略上のメリットもない場所だったのだ。
「今は何もないが、今後は極めて重要な場所だ。別途命令があるまでそこを堅守して欲しい」
「わかりました」
こうして晴信は南極守備という任務を与えられ、作戦室を退室。
その後、惑星エーレントラウトの衛星軌道上で本隊と別離した。
晴信を乗せたドレッドノートは単艦で大気圏突入、一路南極へと向かった。
☆★☆★☆
「予定地点に降下。着陸します!」
「了解!」
ドレッドノートは氷の大地へと着陸。
大気圏で熱された艦体が急速に冷やされる。
晴信が艦橋の窓から外を見ると、凄まじい勢いのブリザードが吹き荒れていた。
「寒いところだね」
「ですねぇ」
別に艦内は寒くないのだが、晴信もディーも寒い気分になる。
きっと、視覚的な心理効果であろう。
「……で、なにしたらいいんだっけ?」
晴信はディーに問う。
「えーっと。なにもするなって、ことじゃなかったですっけ?」
ディーは呆れたように答える。
ちなみに惑星コローナ軍の本隊は赤道上の地点に降下後に展開。
丁度、敵とにらみ合っているはずの時分であった。
「……うーん、しばらく様子をみるかぁ……」
晴信もあきれ顔で応じる。
当然ながらにこんな寒いところに敵がいるわけがない。
もしかしたら、という可能性もあるので一応探査機を飛ばす。
……が、その日一杯、索敵に徹しても敵は現れず、さらに言うなら人為的な構造物さえ周囲20kmには存在しなかった。
つまり、遠路はるばる隣の惑星まで来て、やることはないといった具合だったのだ。
☆★☆★☆
「大佐、マエダ少将に関するデータをお持ちしました」
「ありがとう」
晴信に書類を持ってきたこの女性、名前をエリーという。
カンスケがつけてくれた犬族の副官であった。
「どれどれ……」
晴信は書類に目を通す。
あまり他人に興味のない晴信であったが、変な命令をする上官であったので、調べてみたくなったのだ。
調べて分ったことは、出世欲が軍人の服を被ったような者であった。
少将までスピード出世してきたが、収賄容疑など数々のきな臭い噂がある人物だったのだ。
「これどう思う?」
晴信はエリーに聞いてみた。
「間違いなく、大佐に手柄をとられたくないのだと思います」
ディーもそう思うと言わんばかりに、ランプをチカチカさせた。
「帰っても良い気がするんだよなぁ……」
「命令違反は良くないですよ」
晴信はディーに窘められる。
たしかに晴信は、惑星コローナの支配者の配偶者であったが、軍においては大佐という位置づけで、上官の命令には服する必要があるという訳のわからない立場であった。
――この時分。
マエダ少将率いる本隊は地上戦を展開。
寒冷地である惑星エーレントラウトも、作戦展開地の赤道付近は熱帯雨林が拡がっていた。
それに際して、乾燥した砂漠に適した惑星コローナの兵器は故障が相次ぐ。
戦車や装甲車は泥濘に足をとられ、兵士たちは害虫に悩まされたのだった。
「何をしておる。さっさと進まんか!」
「すいません」
マエダ少将の乗る指揮車両も、しょちゅう泥沼にはまるといった体たらくであった。
唯一、満足な稼働率を誇ったのは、古代遺産の兵器であるゴーレムだけ。
しかし、ゴーレムは貴重品の為、3体しか持ってきておらず、その数は敵に対してさほど有利に働きそうになかった。
☆★☆★☆
――三日後。
現在位置より25kmの地点に古代遺跡発見。
晴信にとっては嬉しい情報が、索敵機によってもたらされた。
言わずもがな、古代遺跡は宝の山である。
人が寄り付かない極寒の南極地だからこその存在だったかもしれない。
「当然、行ってもいいよね!?」
俄然晴信は元気になり、副官のエリーに聞いてみた。
どうせ左遷中なのだ。
遺跡調査していても構わないだろうと晴信は思ったのだ。
「連絡を絶やさない範囲であればいいと思いますわ」
「やったー」
晴信はディーと共に喜ぶ。
このエリーという副官。
副官というよりは、彼等の保護者という表現が適当だったかもしれない。
「寒いから沢山着ていってくださいね」
「うん、そうするよ」
晴信はエリーにそう答え、ドレッドノートを操艦。
古代遺跡が存在すると思われる地点の氷上に再び着陸させたのだった。
13
あなたにおすすめの小説
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる