異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪

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第三十一話……マエダ少将の命令

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 ゲルマー星系第四惑星エーレントラウト。
 この惑星の統治者はハーバー伯爵であるが、様々な利権などの要因で、反政府的な勢力も並立して存在していた。

 その反政府組織はゼノン王の支援を受け武力蜂起。
 そのため、ハーバー男爵はコローナ臨時政府と同盟を締結し、同時に惑星コローナに援軍を要請していた。
 それに際し、惑星コローナ臨時政府はマエダ少将を司令官とした地上軍を派遣した。


 惑星エーレントラウトに向かう輸送船団の作戦室。
 晴信は今回の派遣軍司令官であるマエダ少将に呼び出されていた。

「まぁ、かけたまえ」

「はい」

 晴信は少将の勧めるままに席に着いた。
 マエダ少将は小柄で、でっぷりとしたお腹をした中年の将軍だった。

「早速要件だが、……君の船は強い。よって単艦によって、惑星エーレントラウトの南極に向かって欲しい」

「はい。それで南極って何があるのですか?」

 エーレントラウトは比較的寒冷な土地柄で、極地の寒さは相当なものだった。
 であるからには、戦略上のメリットもない場所だったのだ。

「今は何もないが、今後は極めて重要な場所だ。別途命令があるまでそこを堅守して欲しい」

「わかりました」

 こうして晴信は南極守備という任務を与えられ、作戦室を退室。
 その後、惑星エーレントラウトの衛星軌道上で本隊と別離した。

 晴信を乗せたドレッドノートは単艦で大気圏突入、一路南極へと向かった。



☆★☆★☆

「予定地点に降下。着陸します!」

「了解!」

 ドレッドノートは氷の大地へと着陸。
 大気圏で熱された艦体が急速に冷やされる。
 晴信が艦橋の窓から外を見ると、凄まじい勢いのブリザードが吹き荒れていた。

「寒いところだね」

「ですねぇ」

 別に艦内は寒くないのだが、晴信もディーも寒い気分になる。
 きっと、視覚的な心理効果であろう。


「……で、なにしたらいいんだっけ?」

 晴信はディーに問う。

「えーっと。なにもするなって、ことじゃなかったですっけ?」

 ディーは呆れたように答える。
 ちなみに惑星コローナ軍の本隊は赤道上の地点に降下後に展開。
 丁度、敵とにらみ合っているはずの時分であった。


「……うーん、しばらく様子をみるかぁ……」

 晴信もあきれ顔で応じる。
 当然ながらにこんな寒いところに敵がいるわけがない。
 もしかしたら、という可能性もあるので一応探査機を飛ばす。

 ……が、その日一杯、索敵に徹しても敵は現れず、さらに言うなら人為的な構造物さえ周囲20kmには存在しなかった。
 つまり、遠路はるばる隣の惑星まで来て、やることはないといった具合だったのだ。



☆★☆★☆

「大佐、マエダ少将に関するデータをお持ちしました」

「ありがとう」

 晴信に書類を持ってきたこの女性、名前をエリーという。
 カンスケがつけてくれた犬族の副官であった。

「どれどれ……」

 晴信は書類に目を通す。
 あまり他人に興味のない晴信であったが、変な命令をする上官であったので、調べてみたくなったのだ。

 調べて分ったことは、出世欲が軍人の服を被ったような者であった。
 少将までスピード出世してきたが、収賄容疑など数々のきな臭い噂がある人物だったのだ。


「これどう思う?」

 晴信はエリーに聞いてみた。

「間違いなく、大佐に手柄をとられたくないのだと思います」

 ディーもそう思うと言わんばかりに、ランプをチカチカさせた。


「帰っても良い気がするんだよなぁ……」

「命令違反は良くないですよ」

 晴信はディーに窘められる。
 たしかに晴信は、惑星コローナの支配者の配偶者であったが、軍においては大佐という位置づけで、上官の命令には服する必要があるという訳のわからない立場であった。


――この時分。
 マエダ少将率いる本隊は地上戦を展開。
 寒冷地である惑星エーレントラウトも、作戦展開地の赤道付近は熱帯雨林が拡がっていた。

 それに際して、乾燥した砂漠に適した惑星コローナの兵器は故障が相次ぐ。
 戦車や装甲車は泥濘に足をとられ、兵士たちは害虫に悩まされたのだった。

「何をしておる。さっさと進まんか!」

「すいません」

 マエダ少将の乗る指揮車両も、しょちゅう泥沼にはまるといった体たらくであった。

 唯一、満足な稼働率を誇ったのは、古代遺産の兵器であるゴーレムだけ。
 しかし、ゴーレムは貴重品の為、3体しか持ってきておらず、その数は敵に対してさほど有利に働きそうになかった。



☆★☆★☆

――三日後。

 現在位置より25kmの地点に古代遺跡発見。
 晴信にとっては嬉しい情報が、索敵機によってもたらされた。

 言わずもがな、古代遺跡は宝の山である。
 人が寄り付かない極寒の南極地だからこその存在だったかもしれない。


「当然、行ってもいいよね!?」

 俄然晴信は元気になり、副官のエリーに聞いてみた。
 どうせ左遷中なのだ。
 遺跡調査していても構わないだろうと晴信は思ったのだ。


「連絡を絶やさない範囲であればいいと思いますわ」

「やったー」

 晴信はディーと共に喜ぶ。
 このエリーという副官。
 副官というよりは、彼等の保護者という表現が適当だったかもしれない。


「寒いから沢山着ていってくださいね」

「うん、そうするよ」

 晴信はエリーにそう答え、ドレッドノートを操艦。
 古代遺跡が存在すると思われる地点の氷上に再び着陸させたのだった。
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