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第七話「らしくない二人」
しおりを挟む扉の先
歌舞伎町の目立たない建物。
重たい扉を開けると、青い着物姿の男が胡座をかいて寝ていた。
グーグーと寝息を立てるその姿は、とてもホストには見えない。
中三川はそっと近づき、声をかけようとした瞬間――
男はすばやく刀を抜いた。
切られる、そう思った刹那。……ん? 刃がない?
「……よく見ると、刀なのに刃がない?」
男は目を開き、真っ直ぐ中三川を見据えた。
「済まん。この頃、瞑想ができていなかったのでな」
「いや、寝てたでしょ」
「瞑想だ。――君が新人か?」
二人は軽く自己紹介を交わす。
「俺は中三川 蒼真。仮だけど、水色だ」
「拙者、青のチョート・天藍(あまい あい)。京都出身だ」
「君に話したいことは山ほどあるが……まずは顔合わせだ。
――そろそろ、もう一人来ると思う」
オレンジの登場
その時、扉の方から物音。
5人の男たちが、一人の男に蹴られながら転がり込んできた。
レッサーパンダ柄のオレンジ色のスカジャンを着た男が、タバコに火をつける。
「おっ、来てたのか?」
紫煙を吐きながら笑う。
「何でも昨日、めちゃくちゃ強ぇ奴にボコられて、こいつら5人仲良く道に倒れてたんだ」
「んでブルー、コイツらどう思う?」
天藍は首元を指差す。
「……まず薬やってるな。赤い渦のあと、これは南米で流行ってる『ライトシュガー』だ。
銃も刀も海外の一級品。今回の件も“あれ”だな」
「今回?」
思わず中三川が口を挟む。
橘は肩をすくめ、気まずそうに笑った。
「あっ、悪い。勝手に話進めちまったな」
自己紹介
橘は煙草を咥え直し、不敵に笑う。
「俺は橘 龍臣(たちばな りゅうじん)。オレンジだ」
再び二人の視線が中三川に集まる。
「……中三川 蒼真。仮だけど、水色だ」
ゴールドチョートの話
中三川は不安を吐き出した。
「……待ってくれ。俺はチョートトップになりに来たんだ。
ホスト同士の対決は覚悟してたけど、スケールが違いすぎる」
橘が笑みを浮かべる。
「中三川……お前はおそらくゴールドチョートを目指したいんだろ?」
「……この先か?」
「この先?」
「いや、なんでもない。今はゴールドになるための話だ」
天藍が腕を組み、説明を続ける。
「俺たちチョートは、年間を通して次のゴールドチョートを狙っている。
今のところ、現ゴールドを含めて12人。順位は年間のポイントで決まる」
橘が指を4本立てた。
「ポイントを稼ぐ方法は4つ。
一つ、日々のホストクラブの売上。
二つ、8月に開催される『バトルホスト』。
三つ、年末の『事業説明』。
そして四つ、歌舞伎や全国のホストに関する問題を解決する裏ミッションだ」
シャンディガフの立場
天藍は真剣な眼差しで告げる。
「俺たちチョートはURAKABUKI直下のホストクラブを各々持っている。
歌舞伎に9店舗、北海道、大阪、愛知、福岡にそれぞれ1店舗ずつ。
そのトップがチョートだ」
「だが、お前の所属するシャンディガフは違う。
裏ミッションに特化した……いわば一番危険なクラブなんだ」
中三川は顔をしかめる。
「……そんな危険なの、聞いてないよ」
明日への布石
天藍は立ち上がり、軽く手を振った。
「とりあえず今日は遅い。また明日来る。――餞別にな」
橘が笑う。
「そうだな。俺と天、それぞれのメンバーを呼んでシャンディガフでもてなしだ。
インスタで告知、よろしくな」
「……俺が?」と戸惑う中三川。
天藍は肩を叩き、笑みを浮かべる。
「君の気持ちもわかる。だがとりあえず明日――
君と瞳さんの歓迎会、そしてチョートの説明、さらに情報収集を兼ねてここでお客を呼んで騒ぐからよろしく」
中三川はただ頷くしかなかった。
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