チョート

ストレートダーク

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第六話「新たな行き先」

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瞳の告白

「……瞳さん、そもそもどこに行くつもりなんですか?」
問いかけると、瞳さんは微笑んで答えた。

「『シャンディガフ』ってところに向かいなさい。
 私はそこでマスターをやらせてもらえることになったの」

「……え?」

「今朝、電話があったのよ。相手は『赤い爪さん』って言ってたかしら。
 よくわからないけど、もう決まっているみたいね」

不思議な搬送

改めて店を見回すと、店内はすっかり片付いていた。
「……これ、一人で片付けたんですか?」

瞳さんは楽しげに笑う。
「いいえ。不思議なことにね、『信じて』って言われて、
 30分おきに無人の黒い車が来るのよ。誰も乗ってないのに、トランクが勝手に開くの。
 そこに荷物を積んでいったのよ」

「……怪しくないですか?」
「むしろ、このスリル! 65歳にして素敵な経験だわ!」

さらに瞳さんは銀色の鍵を取り出して見せた。
「見て、このカギ。シャンディガフのホストクラブのカギなんだって。
 それに、7日分の服を銀座で買ってくれるらしいのよ」

中三川は苦笑する。
「……瞳さんは7日分の服、俺はネクタイ1本?」

水色のネクタイ

瞳さんが重厚な箱を差し出す。
中には光沢を放つ――水色のネクタイ。
稲妻が走るように淡い光が揺らめき、中三川の痣と共鳴していた。

「最初の車に入ってたのよ。これを身につけてシャンディガフに向かえって。
 ……なにこれ、素敵じゃない?」

ちょうどその時、再び黒い車が静かに停まり、無人でドアがスッと開いた。

「あなた、これに乗っちゃいなさい」
「いやいや、危ないでしょ……!」

瞳さんはケラケラ笑う。
「きっとあなたと同じ“ミノ”の何かよ!」

中三川は即座にツッコむ。
「魅気です! ホルモンじゃないです……!」

さらに車を見ながら苦笑する。
「でも……こんな魅気、何も活かせないじゃないですか?笑」

歌舞伎への道

黒い車は歩行者専用道路すら突き進む。
「……すごいな、歩行者専用の所も走ってる気がする」

万が一に備え、雷の確認。
ビリビリ……「よし、出る」

2時間かけて歌舞伎町の目立たない一角に到着。
車内のドリンクや軽食をいただき、少し眠気に襲われながら、
「……あれ、カギもらってないじゃん」
と呟き、試しにドアノブを引くと――静かに開いた。

闇の会話

場面は変わり、暗い部屋。
顔は見えない二人が向かい合っている。

「……新人君は、あの事件に加えるんですか?」
「そうね。シャンディガフに行ったんなら、そこは必須でしょ」

「てことは――あの二人とは、時期に会う?」
「もう会ってるんじゃないかしら」

「ここにきて、らしくない二人と対面か……」

歌舞伎の影

同じ頃、歌舞伎町の奥。
ソファに腰掛ける男の顔は闇に隠されている。

その瞬間――
どこからともなく伝わった「こんな魅気、何も活かせないじゃないですか?笑」という声。

男の額に、怒りマークのような血管が浮かび上がる。
「……誰が活かせねぇって?」

周囲の黒服たちは凍りついたように沈黙。
その静けさが、男の恐ろしさを際立たせていた。
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