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五話
1-1
しおりを挟む森に焼け跡を見に行ったあの日から、拍子抜けするほど平穏な日々が続いていた。
俺とクロードの関係も変わりない。研究室で会って、抱いて、種を産ませてそれをアレンに持って行く。少し変わったことといえば、クロードは自分が何者か思い出したせいかぼんやりとしている事が多くなった。
相変わらず俺が抱いてる時の色気はハンパなくて、その時だけ淫魔系のモンスターなんじゃないかと疑ってしまう。それくらい誘引力が強かった。
鍛錬は日課なのかよく身体は動かしているし、そのせいでむちっとした胸筋が白いシャツから垣間見えたりすると……もう駄目だ。肌が白いから乳首の薄い紅色が鮮やかで、やばいくらいそそるし触りたくなる。
もう自制心とかどこいった? ってくらい歯止めが効かなくなる毎日だった。気がつくと一日にとれた種の数を上向きに更新しているし、喘ぎ過ぎたクロードの喉が枯れたりして主治医のアレンには呆れられてしまった。
そもそもアレン・バーツィーの研究所は、所長のアレンが偏屈なため最低限の人員しか配置されていない。静かだし、俺がクロードの部屋で何発も激しくヤって淫らな声を上げさせても、全然問題なかった。監視の魔道具で見てるのもたぶんアレンだけだ。
アレンが俺達の関係に言及したのは『体液を飲まない方がいい』と言ったあの一度だけで、それ以降は何も言ってこない。おそらく研究が継続できて、依頼通りに種が納品されていればあとは興味がないんだろう。俺からアレンに、何か特別に説明するという事もなかった。
だから、今日もまた昨日と同じ日が、続くのだと思っていた。
――しかし、それは簡単に覆された。
ちょっと気が向いて街に立ち寄り三人分の屋台メシを買ってから研究所の入口を潜った俺は、顔なじみの職員が数人焦ったように会話しているのを目にした。俺が彼らを見つけたの同時に、向こうもこちらに気付いて走り寄ってくる。
「ヴィンセントさん!」
「お? どうした?」
「所長が!」
「クロードさんが!」
誰も彼もが口々に言うので、理解するのに少し時間がかかった。ちょっと落ち着け、とそいつらを連れて事務所に入る。そこにはいつも時間交代で一人の職員が配置されていて、もう一人は宿直室にいる。ここにいる奴らは普段、同じ時間に二人以上集まることはなかった。
しかし今日は、朝番昼番夜番の三人と、補助要員一人の計四人が集まってしまっている。俺でも判るが、たぶん緊急事態なんだろう。
なんだ? 研究所内でテンタクルボールが大発生したとかか? と思ったが、話を聞いてみたら違った。どうやら貴族のお偉いさんが来てアレンと研究資料、さらにはクロードと触手の種まで全て持って行ってしまったらしい。
「お、お、横暴です! 何て野蛮な! 剣で脅されて、所長は連れ去られて……!」
「へぇー、剣に怯えるタマかねぇ? あいつ」
「俺達がちょうど交代する時間帯だったんですが、貴族のほうは何人も護衛を連れてました! あいつら何の先触れもなく来たんですよ! それで誘拐ですよ! もう騎士団呼びますか!」
「護衛ねぇ……クロードに剣の一本も持たせれば伸せたかもしんねーけど」
「うわああんヴィンセントさん! 二人を助けてくださいよぉ!」
唯一冷静だったのは交代要員で仕事を回している男だった。宿直室で寝ていたところ騒ぎで起こされて、連れ去られて行く二人を窓から目撃したらしい。貴族の馬車についていた家紋まで絵に描いて見せてくれた。その紋様にもの凄く見覚えのあった俺は、深いため息をついて額を覆う。
「え、え、なんかマズイんですか。どうしたんですかヴィンセントさん」
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