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六話
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しおりを挟む「それより、今は王家がクロードくんを見つけてしまったことが問題だよね。今回は主犯が小物だから一旦尻尾切りをするだろうけど、本体が動いてクロード君を確保するとなると面倒かも」
「クロードを確保? ――誰がそんなこと出来るって?」
俺の声の調子が少し変わったことに気がついたのか、アレンは眉を寄せて茶をすすった。貴族令息とは思えないマナーだ。拗ねたガキかお前は。
「ヴィンセント。穏便に済ませるって選択肢はないのかい」
「そんなの向こうの出方次第だな」
「強引にこようとしたら?」
「――国ひとつ、ぶっ潰す」
はぁ、とアレンがため息をついた。俺はしれっと茶すすりながら頬杖をつく。こちとらマナーとか知らん冒険者だ、お貴族様の前だろうが知った事か。
さっき、あのウィトリー家の施設からこの研究所まで根を伸ばす過程で、王都全てを覆うように地下を繋げておいた。これで近郊も含め作物の育ちも管理できるし、水を山から下りてこないよう堰き止めることも出来るし、王都の井戸に毒を仕込むのまでやれちまうんだわ。
そんな小さな嫌がらせだけでなく、地面から一斉に葉を伸ばした触手で、王都の民も貴族も王族も一瞬で虐殺することが出来る。既に喉元にナイフを突きつけられている状態だと、王家の奴らは気付くのかどうだか。
と、そんな物騒な事を考えていたら突然ポコッと頭を殴られた。『へっ?』と間抜けな声を上げて目の前のアレンを見遣る。
今度は俺の頬を両手で摘まんで、グイグイと横に引っ張りはじめた。いてぇ、地味に痛ぇ。
「なんだよ!」
「怒りで我を忘れてるみたいだから思い出させてあげてるんだけど」
「はぁ? ふぉい、やへれ、……んぐぐぐぁ!」
左右に限界まで引っ張られた頬からパチンと指が外されて、ヒリヒリする頬が俺の顔に戻ってきた。いってーわ。身体が触手になってようがなんだろうが、いてーもんは痛い。アレンはまた深いため息をついて椅子に沈んだ。
確かに俺はちょっと冷静じゃなかったかもしれない。過去とかテンタクルボールの知識だとかがドッと入ってきたことで、ヴィンセントという人格を若干失いかけていた。俺は別に滅多刺しにされて殺されたヤツじゃないし、元人間だから人間の営みをどうでもいい事とは思わない。
王都の民を皆殺しにするのは、本意じゃない。……そう、おそらくこっちが俺の思考だ。
「アレン、悪かっ……」
「困るんだよね、国全部が研究対象なんて確かに心躍るけど、王都の貴族で僕だけが生きててもさあ。研究に支障が出るし、死んだ王国になるから発表の場がないし。王家なんて生かさず殺さず維持させるのが一番なんだよ?」
「……」
全くモンスターマニアなところにかわりはなく、俺を落ち着かせようとした理由もこんなものか。ちょっと感動したのにどうしてくれんだコノヤロウ。
ってか、王都の民が虐殺される時、自分だけは生き残ると思ってんのか。まあ、正解だけどな。俺は、たぶん身内の冒険者やアレンみたいな顔見知りは、殺せないだろう。どれだけ正気を失っていたとしてもだ。
「ま、後は向こうの出方次第だね。じゃあ僕はやることがあるから、クロードくんの所に戻っててくれる?」
「クロードの?」
「そうだよ。一応護衛必要でしょ? 狙われてるんだし。……それにハイ、種入れる籠」
「……」
「向こうに全部持ってって、それが全部発芽しちゃったから種の在庫が空なんだよね。頑張ってー」
相変わらずのアレンに部屋を追い出されて、俺は空の籠を手にため息つきながらクロードの元へ向かった。
‡
クロードの部屋に戻ると、丁度チビ達とお楽しみ中だった。
俺が例の施設で何度も中出ししたせいで種が降りてきてたんだろうな。クロードはベッドでうつ伏せになったまま、触手にアナルを犯されて快楽に悶えている。
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