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六話
1-4
しおりを挟む着替えの途中だったのか、半脱ぎのシャツから隆起した背中の筋肉がよく見えた。白い肌に浮いた汗の雫が、つうっと背筋を流れていく。相変わらず匂い立つような色香が漂っていて、クロードの堪えた息遣いを聞いてるだけでごくりと喉が動いてしまった。
それが聞こえたのか、ハッと顔を上げたクロードは部屋の入口にいる俺を見て、カアッと一気に赤面した。焦ったまま薄い毛布を引っ張り身体を隠そうとして、シーツの上にあった種がころころと床に落ちる。
ひとつ、ふたつ、……みっつ……? まだまだあるな。
落ちたのだけでも結構な数だが、まだシーツの上に残ってんだよなあ。どんだけヤったんだっけ?
「あ、あ、これは……その、ヴィンセント……ッ」
「悪い。種を産むとこまで一緒にいてやらなきゃいけなかったな」
ベッドに近寄り、クロードの身体を抱き起こすと後ろからぎゅうっと抱き締めた。面食らったような顔して振り返るから、ちゅっと半開きの唇にキスを落とす。
瞬く金の睫毛がうっすら涙で濡れていて、触手に可愛がられている間も泣いて善がったのだろうとわかった。
チビ達とも感覚を繋げようと思えば繋がるが、忘れていて惜しいことした。今からでもクロードを可愛がることにしよう。
「あと何個くらい残ってるか判るか?」
「あ……」
すり、と手のひらで下腹部に触れる。しっかり筋肉の割れた腹を強めに撫でると、奥で種が動いたのかクロードが小さく声を上げた。
ビクビクと震える腰がイッてるときと同じ動きで、艶かしい。むくりと堪え性のない熱が起き上がるが、それを尻に擦り付けるようにしたらクロードの耳朶が真っ赤に染まった。後ろからでも酷く動揺しているのがわかる。
なんで、と小さく戸惑うような声まで聞こえた。え、なんでってどういう意味だ。
「クロード?」
「ひ、……や、……なんでそんな、触り方、を」
「なんだよ。どうかしたか?」
「え、だっ……だって、変だ。いままでと、ちがう……ヴィンセントが、なんか、なんか甘い」
肩越しに振り返るクロードは困ったように眉を寄せていた。剣を振るうときは逞しい剣士で、ベッドの上では娼婦顔負けのド淫乱な色気をまき散らすくせに、今のクロードは初恋にときめく少年みたいだ。ウブな子供をたぶらかしているみたいで、ちょっと背徳感がある。俺こういうのに燃えるたちだっけ、いやこれクロードだからだよな。
「そりゃあ、恋人だからな」
「こ、こいびとだと、今までと違うのか」
「え。当たり前だろ。むしろ同じだと思われるとか心外」
「それは……どういう」
戸惑うように見つめてくるクロードを、ひとまずベッドに押し倒し、後ろからぎゅうっと抱きしめたままため息をつく。そうかそうか、そっからか。まああの家の環境では『愛情』のかたちが判らなくても仕方ない。
悪いけど俺は結構、マジになると執着の強い男だからな。ちなみにこれはテンタクルボールと同化する前からだ。
へらへら根無草みたいに冒険者やってたのは、ひとつの事に固執すると身の破滅みたいな事が起きるんじゃないかと思ったから。今となっては、その判断は正しかったんだろうと思う。
「クロード。俺もともとは女を抱く方にしか興味がなかったんだ」
「そうだろうな」
「即答かよ。まあ、そんな普通の男の俺ですがねぇ? 生まれて初めてモンスター退治の最中なんかに男に欲情した」
「……それは」
「もちろんお前にだよ。テンタクルボールの繭から引っ張り出したお前を、初めて腕に抱いた時からだ。『役割』でも、言い訳してお前を抱けることが嬉しかったし、他の奴らに渡したくなかった」
クロードはころんと身体の向きを変えて、向き合う姿勢になってから真剣な目で俺を見た。俺の一世一代の告白をちゃんと聞こうとしてくれてるみたいだ。その鼻先にちゅっと軽く口付けて、俺は笑った。
「……だからさ、思い知れよ。俺のクソ重い執着と、ベッタベタな愛情をさ」
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