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21 悩みどころ
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僕に朝稽古をつけた後、朝食を取ったエンジは「行きたくねえ……」と背中を丸めながら仕事に出かけていった。
「いってらっしゃい!」
元気に手を振って見送った後は、家事の時間だ。今日は洗濯はお休みして、実はもう長いこと掃き掃除すらしていなかったんじゃないかという疑いがある屋敷の床を双子と協力して掃除していくことにしたんだ。
「うわっ、埃の塊があるぞ!」
「きゃっ! 何かの骨があるんだけど!」
「ブオッ!? 蜘蛛の巣が凄えなここ!」
「きゃああああ! 虫! 虫の死骸の大群!」
ウキョウとサキョウの何とも言えない悲鳴をバックミュージックに、僕は掃いて掃いて掃きまくった。
ちなみに前世では、ウキョウたちが叫んだようなものとは無縁の生活を送っていた。だけど今世では、お城の敷地でもかなり端っこの自然豊かと言えば聞こえがいいけど手入れされてなかった雑草群の中で暮らしていたので、虫も小動物の死体と遭遇してもなにも思わなくなった。
侯爵令嬢ってあんなワイルドな環境でも生息できるんだね。あの時は当たり前過ぎて疑問にすら思ってなかったけど、普通にGを足で踏み潰してたし。前世を思い出した今は、ちょっと厳しいかもしれないけど。
僕たちとエンジが使っている部屋以外は閉め切りになっていたので、あえてそのまま開かずの間にしておいた。それでも使用している面積だけでもだだっ広いので、ようやく掃除が終わった時には太陽が真上に来ていた。いやあ、よく働いたなあ。
「ウキョウ、サキョウ! お昼ご飯にしようか!」
「やったー! アーネスの手料理がまた食べられる!」
ウキョウが嬉しそうに駆け寄ってくる。サキョウはお箸を並べつつ、感心したように言った。
「しかしまさかアーネスが料理までできるなんて、昨日までちっとも知らなかったわよ。お城には調理人っていなかったの?」
「あー、えーとそれなんだけどね……」
何となく話し辛くて、お城での僕への対応については双子に詳しく説明したことはなかった。それよりも関所越えの方が急務だったし、言ったら同情させちゃうのが分かってたから。
でも、今は本選が始まるまで余裕があるし、エンジと知り合えたお陰で一旦は諦めかけたミカゲさんへの手紙も届けてもらえることになった。
お祖父様との合流はまだだけど、それもきっと近い未来の話だ。幸先はよく、後方の憂いもないから、聞いたら多少凹みそうな話でも、今なら穏やかな心持ちで聞けるかもしれない。
ということで、暇潰しも兼ねて、これまではフィアしか知ることのなかった僕の日々の暮らしについて、初めて双子に話すことにしたんだ。
「実は僕が過ごしていた塔はね――」
調理しながら、できるだけ主観を入れず客観的に語っていく。料理が出来上がって食べ始めた頃、ようやく僕の説明が終わった。
「まあそんな理由で、掃除も洗濯も料理もひと通りはできるんだ!」
努めて明るく締め括ってみたのに、二人の反応がない。あれ? と思って双子を見ると――。
ウキョウは眉毛を変な角度にウネウネさせていて、口もおかしな具合にひん曲がっている。サキョウに関しては、マジギレの顔になっていた。は、般若がいる! 怖いからその顔はやめてくれ!
サキョウの奥歯が、ギリギリ鳴る。
「あんの腐れ外道めらが……!」
「サキョウ落ち着いて」
言葉遣いが任侠映画っぽくなってるから。姐さんって感じでイメージはピッタリだけども!
ウキョウが悔しそうに自分の髪の毛を掻きむしる。
「俺のアーネスに対して優しさの欠片もない仕打ち……! 俺ヘルム王国は別に嫌いじゃなかったけど、たった今大嫌いになった!」
鼻息も荒く宣言したウキョウの言葉を聞いて、やっぱり聞かせなきゃよかったかも、と後悔してきた。
「なんか嫌いにさせちゃってごめんね……?」
「アーネスは悪くねえよ!」
にしても、俺のアーネスってどういうこと? とちょっと動揺して、すぐに「あ、俺が守っているアーネスっていう意味か!」と納得する。
どうも僕は言葉をそのままの意味で受け取りがちだみたいだからね。ふう、危ない危ない、また変な風に勘違いしちゃうところだったよ!
これからはちゃんと意味を理解して、意図を正しく受け取るように心掛けなくちゃだ。よし、頑張るぞ!
「ねえアーネス。ご隠居様は、このことは?」
まだ怒り顔のサキョウが、僕が作ったチャーハンを口に含みつつ、苛立たしげに尋ねてきた。
「いや、あの時はお祖父様にそこまで詳しくお話しする時間がなくて」
あと、自分が置かれていた境遇が侯爵令嬢にしては大分おかしかったって、前世の記憶を思い出して大分経ってから気付いたこともある。あの頃は逃げることとバトルとで頭が一杯だったんだよ……自分のキャパの少なさが時折悲しくなる。
すると、サキョウが吐き捨てるように言った。
「じゃあ知らないのね……チッ。知っていたら私の分まで完膚なきまでに城ごと破壊してもらったのに……!」
城ごと? ていうか今舌打ちしたよね? あ、サキョウのこめかみに青筋が立ってる。本気で怖いから、姐さん。
「とにかく、いい? アーネス」
サキョウが僕を睨みながら人差し指を立てた。僕は素直にコクコクと小刻みに頷く。
「ご隠居様が到着されたら、絶対このことはちゃんと話すこと。いいわね?」
「え? でも過ぎたことだし……」
双子でさえこんなに怒るなら、お祖父様なら絶対もっと怒るんじゃないか。だからお祖父様には言うのをやめておこうと思ったところだったんだけど。
サキョウのこめかみが、苛立たしげにピクリと動いた。
「アーネス?」
「わ、分かった……」
どうしよう。サキョウが怖かったからつい分かったなんて言っちゃったけど、できることならお祖父様には言いたくない。
だって、僕の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、だからといって僕は別に彼らに対して復讐したり反省してもらいたい訳じゃないから。
僕が望んでいるのは、彼らがストーリー通りハッピーエンドを迎えること。これに尽きる。
ストーリーから逸脱した僕は、彼らがストーリー通り大精霊の目を覚ましてくれないと、この先安心して生きていくことができない。
なのに、今はこうして物語の強制力から解放されている状態なのに、もしお祖父様や双子が一矢報いろうとヘルム王国に対して何かしてしまったら? 万が一それでアントン殿下とパトリシアの仲にヒビが入って、大精霊が目覚めてくれなかったら?
考えただけで気が重くなる。二人がイチャラブして大精霊が目覚めてくれないと、国王夫妻に強制回収されて魔力供給機としてのルートが開く可能性が大なんだよ。それだけは絶対に勘弁だった。
そりゃ、魔物の脅威に晒されている国民には、心から申し訳ないと思っている。だけど――国民の為に僕ひとりが犠牲になってハッピーエンドじゃ、僕は何の為に転生したのさ。
本当なら、全部情報を開示して協力を仰ぎたい。でも、僕が転生者で前世の記憶持ちと言ったところで、誰も信じてはくれないと思う。それくらい突拍子もない話だし、下手をしたら「冷遇されすぎて頭がおかしくなった」と思われかねない内容だし。
だから前世のことは、絶対誰にも話すつもりはなかった。
僕を大切に思ってくれているみんなからしたら、僕がただ逃げているようにしか見えないかもしれない。でもみんなは、放っておけば僕が冤罪で断首刑に処されていたことなんて知らない。
うーん……どうしよう。チャーハンを口に運びながら、必死に考えを張り巡らせる。
すると、「僕ってもしかして天才かも!?」レベルの名案が浮かんできた。
そうだよ! 前世の話をしないで何とかうまいこと「彼らは放っておいてほしい」とそれとなく伝える為には、僕がもう祖国のことなんてすっかり忘れてハッピーライフをエンジョイ中ですけどなにか!? とアピールしまくればいいんだよ! おお、ナイスアイデア!
ああ、それと「もう殿下の存在なんて忘れました」アピールには、僕に恋人ができるのが一番手っ取り早いんじゃないか!? でも、恋人かあ……どうやって作るものなんだろう? 経験皆無の僕にはさっぱりだ。
ここで問題になるのが、先日ウキョウに尋ねられて横に置いておいた「僕は男と女、どっちがイケる派なのか」問題だ。
僕の中で真っ先に女といって思い浮かぶのはフィアだ。でもフィアは乳姉妹だから、姉弟的な感覚が圧倒的に強い。次に出てくるのはサキョウだけど、こちらはフィアよりもっとお姉様感があって、恋愛とは何か違う気がするんだよなあ。
反対に、男といえば真っ先に思い浮かぶのはアントン殿下だ。でも彼に対する思いは、好きというよりも信頼とか依存とかいう方が近いんじゃないかと気付いたばかりで、本当に恋愛的なものだったのかは最早疑わしい。あと絶対思い込みもあるよね。だって結婚するつもりでいたんだし。
じゃあ他に男といえば、ウキョウは無鉄砲なところもあるけど頼りになるお兄ちゃんキャラ。
そして最後に思いついたのが、エンジだった。
エンジの姿を脳裏に思い描いた瞬間、今朝ぎゅうぎゅうに抱き締められたシーンが浮かんでしまい、「ゴフッ」とむせる。
「けほっ、ごほっ」
「アーネス大丈夫か? ほら、水飲め」
「ご、ごめん、ごほっ」
ウキョウにもらった水をコクコク飲みながら、どうして僕の心臓が急にドクドク言い出したのか分からなくて、ひとり首を傾げたのだった。
「いってらっしゃい!」
元気に手を振って見送った後は、家事の時間だ。今日は洗濯はお休みして、実はもう長いこと掃き掃除すらしていなかったんじゃないかという疑いがある屋敷の床を双子と協力して掃除していくことにしたんだ。
「うわっ、埃の塊があるぞ!」
「きゃっ! 何かの骨があるんだけど!」
「ブオッ!? 蜘蛛の巣が凄えなここ!」
「きゃああああ! 虫! 虫の死骸の大群!」
ウキョウとサキョウの何とも言えない悲鳴をバックミュージックに、僕は掃いて掃いて掃きまくった。
ちなみに前世では、ウキョウたちが叫んだようなものとは無縁の生活を送っていた。だけど今世では、お城の敷地でもかなり端っこの自然豊かと言えば聞こえがいいけど手入れされてなかった雑草群の中で暮らしていたので、虫も小動物の死体と遭遇してもなにも思わなくなった。
侯爵令嬢ってあんなワイルドな環境でも生息できるんだね。あの時は当たり前過ぎて疑問にすら思ってなかったけど、普通にGを足で踏み潰してたし。前世を思い出した今は、ちょっと厳しいかもしれないけど。
僕たちとエンジが使っている部屋以外は閉め切りになっていたので、あえてそのまま開かずの間にしておいた。それでも使用している面積だけでもだだっ広いので、ようやく掃除が終わった時には太陽が真上に来ていた。いやあ、よく働いたなあ。
「ウキョウ、サキョウ! お昼ご飯にしようか!」
「やったー! アーネスの手料理がまた食べられる!」
ウキョウが嬉しそうに駆け寄ってくる。サキョウはお箸を並べつつ、感心したように言った。
「しかしまさかアーネスが料理までできるなんて、昨日までちっとも知らなかったわよ。お城には調理人っていなかったの?」
「あー、えーとそれなんだけどね……」
何となく話し辛くて、お城での僕への対応については双子に詳しく説明したことはなかった。それよりも関所越えの方が急務だったし、言ったら同情させちゃうのが分かってたから。
でも、今は本選が始まるまで余裕があるし、エンジと知り合えたお陰で一旦は諦めかけたミカゲさんへの手紙も届けてもらえることになった。
お祖父様との合流はまだだけど、それもきっと近い未来の話だ。幸先はよく、後方の憂いもないから、聞いたら多少凹みそうな話でも、今なら穏やかな心持ちで聞けるかもしれない。
ということで、暇潰しも兼ねて、これまではフィアしか知ることのなかった僕の日々の暮らしについて、初めて双子に話すことにしたんだ。
「実は僕が過ごしていた塔はね――」
調理しながら、できるだけ主観を入れず客観的に語っていく。料理が出来上がって食べ始めた頃、ようやく僕の説明が終わった。
「まあそんな理由で、掃除も洗濯も料理もひと通りはできるんだ!」
努めて明るく締め括ってみたのに、二人の反応がない。あれ? と思って双子を見ると――。
ウキョウは眉毛を変な角度にウネウネさせていて、口もおかしな具合にひん曲がっている。サキョウに関しては、マジギレの顔になっていた。は、般若がいる! 怖いからその顔はやめてくれ!
サキョウの奥歯が、ギリギリ鳴る。
「あんの腐れ外道めらが……!」
「サキョウ落ち着いて」
言葉遣いが任侠映画っぽくなってるから。姐さんって感じでイメージはピッタリだけども!
ウキョウが悔しそうに自分の髪の毛を掻きむしる。
「俺のアーネスに対して優しさの欠片もない仕打ち……! 俺ヘルム王国は別に嫌いじゃなかったけど、たった今大嫌いになった!」
鼻息も荒く宣言したウキョウの言葉を聞いて、やっぱり聞かせなきゃよかったかも、と後悔してきた。
「なんか嫌いにさせちゃってごめんね……?」
「アーネスは悪くねえよ!」
にしても、俺のアーネスってどういうこと? とちょっと動揺して、すぐに「あ、俺が守っているアーネスっていう意味か!」と納得する。
どうも僕は言葉をそのままの意味で受け取りがちだみたいだからね。ふう、危ない危ない、また変な風に勘違いしちゃうところだったよ!
これからはちゃんと意味を理解して、意図を正しく受け取るように心掛けなくちゃだ。よし、頑張るぞ!
「ねえアーネス。ご隠居様は、このことは?」
まだ怒り顔のサキョウが、僕が作ったチャーハンを口に含みつつ、苛立たしげに尋ねてきた。
「いや、あの時はお祖父様にそこまで詳しくお話しする時間がなくて」
あと、自分が置かれていた境遇が侯爵令嬢にしては大分おかしかったって、前世の記憶を思い出して大分経ってから気付いたこともある。あの頃は逃げることとバトルとで頭が一杯だったんだよ……自分のキャパの少なさが時折悲しくなる。
すると、サキョウが吐き捨てるように言った。
「じゃあ知らないのね……チッ。知っていたら私の分まで完膚なきまでに城ごと破壊してもらったのに……!」
城ごと? ていうか今舌打ちしたよね? あ、サキョウのこめかみに青筋が立ってる。本気で怖いから、姐さん。
「とにかく、いい? アーネス」
サキョウが僕を睨みながら人差し指を立てた。僕は素直にコクコクと小刻みに頷く。
「ご隠居様が到着されたら、絶対このことはちゃんと話すこと。いいわね?」
「え? でも過ぎたことだし……」
双子でさえこんなに怒るなら、お祖父様なら絶対もっと怒るんじゃないか。だからお祖父様には言うのをやめておこうと思ったところだったんだけど。
サキョウのこめかみが、苛立たしげにピクリと動いた。
「アーネス?」
「わ、分かった……」
どうしよう。サキョウが怖かったからつい分かったなんて言っちゃったけど、できることならお祖父様には言いたくない。
だって、僕の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、だからといって僕は別に彼らに対して復讐したり反省してもらいたい訳じゃないから。
僕が望んでいるのは、彼らがストーリー通りハッピーエンドを迎えること。これに尽きる。
ストーリーから逸脱した僕は、彼らがストーリー通り大精霊の目を覚ましてくれないと、この先安心して生きていくことができない。
なのに、今はこうして物語の強制力から解放されている状態なのに、もしお祖父様や双子が一矢報いろうとヘルム王国に対して何かしてしまったら? 万が一それでアントン殿下とパトリシアの仲にヒビが入って、大精霊が目覚めてくれなかったら?
考えただけで気が重くなる。二人がイチャラブして大精霊が目覚めてくれないと、国王夫妻に強制回収されて魔力供給機としてのルートが開く可能性が大なんだよ。それだけは絶対に勘弁だった。
そりゃ、魔物の脅威に晒されている国民には、心から申し訳ないと思っている。だけど――国民の為に僕ひとりが犠牲になってハッピーエンドじゃ、僕は何の為に転生したのさ。
本当なら、全部情報を開示して協力を仰ぎたい。でも、僕が転生者で前世の記憶持ちと言ったところで、誰も信じてはくれないと思う。それくらい突拍子もない話だし、下手をしたら「冷遇されすぎて頭がおかしくなった」と思われかねない内容だし。
だから前世のことは、絶対誰にも話すつもりはなかった。
僕を大切に思ってくれているみんなからしたら、僕がただ逃げているようにしか見えないかもしれない。でもみんなは、放っておけば僕が冤罪で断首刑に処されていたことなんて知らない。
うーん……どうしよう。チャーハンを口に運びながら、必死に考えを張り巡らせる。
すると、「僕ってもしかして天才かも!?」レベルの名案が浮かんできた。
そうだよ! 前世の話をしないで何とかうまいこと「彼らは放っておいてほしい」とそれとなく伝える為には、僕がもう祖国のことなんてすっかり忘れてハッピーライフをエンジョイ中ですけどなにか!? とアピールしまくればいいんだよ! おお、ナイスアイデア!
ああ、それと「もう殿下の存在なんて忘れました」アピールには、僕に恋人ができるのが一番手っ取り早いんじゃないか!? でも、恋人かあ……どうやって作るものなんだろう? 経験皆無の僕にはさっぱりだ。
ここで問題になるのが、先日ウキョウに尋ねられて横に置いておいた「僕は男と女、どっちがイケる派なのか」問題だ。
僕の中で真っ先に女といって思い浮かぶのはフィアだ。でもフィアは乳姉妹だから、姉弟的な感覚が圧倒的に強い。次に出てくるのはサキョウだけど、こちらはフィアよりもっとお姉様感があって、恋愛とは何か違う気がするんだよなあ。
反対に、男といえば真っ先に思い浮かぶのはアントン殿下だ。でも彼に対する思いは、好きというよりも信頼とか依存とかいう方が近いんじゃないかと気付いたばかりで、本当に恋愛的なものだったのかは最早疑わしい。あと絶対思い込みもあるよね。だって結婚するつもりでいたんだし。
じゃあ他に男といえば、ウキョウは無鉄砲なところもあるけど頼りになるお兄ちゃんキャラ。
そして最後に思いついたのが、エンジだった。
エンジの姿を脳裏に思い描いた瞬間、今朝ぎゅうぎゅうに抱き締められたシーンが浮かんでしまい、「ゴフッ」とむせる。
「けほっ、ごほっ」
「アーネス大丈夫か? ほら、水飲め」
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ウキョウにもらった水をコクコク飲みながら、どうして僕の心臓が急にドクドク言い出したのか分からなくて、ひとり首を傾げたのだった。
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