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〖第7話〗会いたいのは貴方じゃないの
しおりを挟む問いかけたくなる気持ちを押さえながらオレはニコニコ笑う。
もう、自分に嘘をつくことと、劣等感を飼い慣らすことは得意になっていた。
**********
真昼の月が白く光る日に、オレは神社を訪れた。
「カナエちゃん。おはよう」
「あ、田貫さん!今日は良い写真撮れそう?」
オレは狸のせいか、狐野郎よりも妖力が弱くて完全に暗示をかけることが出来ないから、日本かぶれのハーフの写真家と言う『設定』になっている。
そして最近、聴きたくない一言がカナエちゃんからの言葉に加わるようになった。
「木常さん、今日は一緒じゃないの?」
前には気にもしなかった言葉。ほぼ毎日聴いているのに気づけなかった言葉。今となってはまるで、
『会いたかったのは、あなたじゃないの』
と言われているようで、つらい。
**********
ことの始まりは偶々この前、神主さんから貰ったお菓子をオレにあげようと、カナエちゃんがオレを探していたとき、運悪く狐野郎と話していたオレたちとが鉢合わせた日からだった。
あいつはオレの先輩の写真家という設定で、カナエちゃんには無愛想に接していた。オレはカナエちゃんに『性格の悪い友達がいる』と思われたくなかった。けれど、あの野郎は、オレがフォローする前に不機嫌そうに、カナエちゃんを一瞥して風と木洩れ日に溶け込んで消えた。
そして、狐野郎がいなくなってから、カナエちゃんは夢を見てるみたいにぼんやりした顔で、
「仕事があるから……社務所戻るね……」
そう、社務所にすぐ戻ってしまった。いつもなら、おにぎりを食べながらベンチに座ってお花の話をするのに。渡す相手のいない花束ほど、寂しいものはない。
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よろしくお願いします。
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