17 / 24
〖第17話〗私にも花束を
しおりを挟む「何処へ行く?こんな気力がない状態で魑魅魍魎に会ったら捲き込まれて同化する!一応は狸族の長の嫡男なんだ!自分の妖力を考えてみろよ!」
「もう、いい。全部いらない。何も、誰も、要らない!」
オレは、狐野郎の足許に蹲り、千切れるように泣いた。もう綺麗な思い出はない。たくさんの写真が残ったけれど、自分の姿は写真からも消える。オレはいないヒト。カナエちゃんと一緒にいた記憶はオレの頭の中しか残ってない。
優しい、笑った顔、
可愛らしい、拗ねた顔、
身を切るように痛かった、
木常を想い焦がれる顔。
「狐。オレ、あの子が好きだった。好きだったんだよ。だから………お願いだ。あの子を大事にしてあげてくれよ。あの子、お前が好きなんだ。優しい子だよ。きっとお前も好きになるよ」
狐野郎はオレを抱き起こした。
**********
「お……私は、お前しか要らない。田貫以外の気持ちはいらない。……私にもブーケをくれよ。なんでもいい。蒲公英でも白詰草でもいい。私にも、私だけの花束をくれよ!小さな花束をカナエちゃんに贈る田貫を見るのが悲しかった。羨ましくて、妬ましくて。神の眷属らしからん自分の初めて浮かんだ、歪んだ感情に狼狽えた。私を見て、田貫。私を見てくれ。あの子を見るみたいに笑ってくれなんて贅沢は言わない。お前に気づかれないように盗み見て、そっと見つめるだけで精一杯で、お前を見る視線でさえ棄てられてきた私を、ほんの少しでいいから、可哀相だと思うなら、一緒にいる口実にしてくれ」
「いや、あのな……気持ちは…嬉しいけど、でも、でもさ、お前……おとこ…じゃねえか……」
────────────《to next ⑱》
0
あなたにおすすめの小説
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
Short stories
美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……?
切なくて、泣ける短編です。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる