指先だけでも触れたかった─タヌキの片恋─〖完結〗

カシューナッツ

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〖第22話〗ヒト型になれない太白

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「無理して元気になろうと思うな。いくらでも待つよ。ほら、お前のための花束だ。受け取って。神社のアルバイト代で買ったんだよ。綺麗だろ?」

 そう言い、オレを見て苦笑する。今になって思う。木常がいなかったら魑魅魍魎に飲み込まれていた。狐が温かな想いを、余すこともなくオレにくれたから。
 
今、オレが生きてるのは狐のお陰だ。珍しい毛色のオレをヒトがやさしく触っていく。

「真っ白な狸なんて、神社だからかなあ」

「神様のお使いだね。綺麗だね」

「白いけど、目は黒い。アルビノじゃないんだ」
  
生活全般、衣食住を木常便りだった。涙で凝った目の周りの毛を涙やけしないようにと、保湿のアロエだかの成分入りの濡れたティッシュで拭いてくれた。までは良かった、けど無理やり一緒に風呂まで入らされた。

オレは狸の姿だが、木常は人型だ。恥ずかしくて何処を見ていればいいか解らなかった。濡れた髪が白い肌につくのが艶かしくて、限界だった。

「自分が風呂入っている間に、また田貫がいなくなりそうで怖い。私に田貫を、お前を二度と失わせるな!あんな思いはもう嫌だ!」

そう言い泣かれた。照れ臭くて恥ずかしくさが積もり積もったある日、一度木常と口喧嘩して、木常が髪を洗っているのを見計らって、逃げた。

喧嘩というよりも、あまりに木常に負担をかけている自分が情けなくて、姿を眩まそうとした。案の定……失敗した。あの木常に泣かれては仕方ないと今は共に湯に入る。

  
 タオルを巻いた木常に身体を洗われる。湯加減を調節したシャワーで濡らされ、低刺激のシャンプーで洗われ、優しく泡を落とされる。

木常の肌は白くなめらかで、細く華奢なのに身体は柔らかくて、斜め上を見上げればタオルで髪をあげた木常。

化粧もせずこの美しさか、とオレは木常に抱きかかえられながら湯船に入り、思わず見惚れてしまった。うなじのおくれ毛さえも、色っぽくて
ドキドキしてしまう。





◇◆つづく◆◇

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