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父と子〖第49話〗──①
しおりを挟む外の風がひびくだろうと。薫さんは、暁の肩に羽毛の肩かけをかけてあげていた。
空を背負いながら振り向く。二人の姿が小さくなっていく。
「良いお嫁さんもらったな。幸せそうだ。空、今日はありがとう。助かった。お前のお陰だ」
「そうにいちゃん、怪我は、いいの?」
「ああ。右腹を少しかすったくらいだ」
「神泉の湯の花を塗るほど?」
切なそうな空の声が、胸を苦しくさせる。
「何処かに怪我があるようじゃ、空を守れない。それに何処で敵が見ているか解らない。傷は悟られたら不利になる」
今日、暁に言われたことを思い出した。
『何も出来なかった』
と悔し涙を流す自分に、
『出来ることをやれ、得手、不得手がある。これは恥ずかしいことじゃない、個性だ』
と暁は言った。
『俺の本気の咆哮で、普通ひとの骨は砕ける。けれど、俺は親父さえ……見誤った。そういうことだ』とも。
「ごめんね。でも、話はちょっと変わるけど、僕ね………そうにいちゃんとのお風呂、好き」
「どきどきするから、やめてくれ、空」
──────────
狛井家に着き、空を伴い父に会いに行った。ことの次第を話す。刺客に襲われたとき、実は怪我を負ったことも、今更だが話した。
「怪我は、いいのか?」
父は難しそうな顔をして、茶を啜った後苦い顔をして言った。
「神泉の湯の花を塗ったら大分良く……」
「湯の花を塗るほどの怪我を負ったことを何故言わなかった」
言葉を遮り、父は言う。圧を感じる。言わなければよかったと後悔した。やはり、空をつれていて怪我をしたら山神さまの手前、外聞が悪いとでも思っているのだろう。素直に謝った。
「申し訳ありません」
「怪我をしたら、言え。そんなに私は不甲斐ない親か?我が子が手傷を負ってそれを知らずにいるのがどんな思いか、お前には解らんのか?」
思いもしない言葉に驚かされる。育てることもせず、庇いもせず、ただ居るだけの父だった。まるで上司と部下のような関係。自分を育てた父は爺だ。今更心配している様子が不思議な感じがした。
「それで、今はどうなのだ?」
父は訊いた。
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