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〖第5話〗
しおりを挟む此処でも半端者扱いかと、僕は俯いた。確かに、僕は半分家出してきたような身だけれど、今までずっと両親との約束は果たしてきた。
それに僕は、都合の良いとき、もしくは都合が悪くなったときになって子供ぶるような、そこら辺の卑怯な奴みたいな真似はしない。
可愛らしくないと自分でも思うが、どんなときも冷静に第三者の目を持つように努めた。簡単に言えば『可愛げのない子供』
馬鹿なクラスメイト、幼稚な教師。学校はつまらない。解りきった授業をする無駄な時間。敷かれたレールを走るのか。
そして、お高くとまって、他人をランク付けまでするクズみたいな自分。友達はいないと不便だから作るけど上辺だけだ。いつでも手が切れる、面倒がない人を選ぶ。一流大学へ行き、最後は家の一族の総合病院の院長。何もかもつまらない。
皆が羨望や称賛の眼差しで僕を見る。そう言いつつ、本当は何も持っていない勉強しか能がない、名家のお坊っちゃまだと、可哀想な奴だと称賛の裏で嘲笑されていることも、充分に僕は解っている。僕は空っぽだ。僕には何もない。
たまにだけれど、懸命に培った努力が虚しくなって、揺らぐときがある。何もかもが面倒になる。すべてを放棄して何処かへ逃げてしまいたい。『普通がいい』と、夜、ベッドで丸まり悲しくて仕方がなくて泣けてくるとき、決まって甘い匂いがする。部屋に洩れ入る香りはまるで、
『大丈夫だよ、泣かないで』
という、形はないけれど意思がある、窓からカーテンを揺らして優しく涙を拭ってくれる宵闇の風にまぎれて現れる『何か』のようだった。
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