氷雨と猫と君

華周夏

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〖第10話〗

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 ただ好きだから一緒にいる、傍にいたい。だから『愛してる』なんて一番抽象的な言葉を使う。

 でも、それが原動力だったあの頃。ただ直樹が好きだった。だから彼と一緒にいたかった。理由はなかった。

『きらきら光るもの、くれるって言ったじゃない。ずっと私だけって言ってたじゃない!』

みっともなく泣きながら缶チューハイを飲み干した。家に着く前に、酷く眠くなってしまった。滅多にこんなことはないのに、不思議に身体がふわふわした。

 路上のごみ捨て場に仰向けに横になる。カラス避けネットにもたれるとハンモックみたいだ。電灯に雪は反射し、きらきら光っている。

「綺麗ね」

 本当に綺麗。自分で見つけた、きらきら光るもの。手をかざす。左手の薬指に落ちては消える、ダイヤモンドの輝き。

  ***

「あーよかった気がついた。朝ごみ捨てに行ったらさ、雪ん中、女の人が行き倒れになってるからさあ、そのまま置いてくるのもなんだし。おんぶしてきたんだよ。掃き溜めに鶴だね。カラス避けネットの中の綺麗なお姉さん。名前、何て言うの?」
 
 若い、二十代前半くらいの男の子。にこにこと、私から目を逸らすことなくじっと何故か嬉しそうに見つめて目尻を下げる、やさしい瞳とは相反した精悍な顔つきと大柄な体つき。

 アラスカン・マラミュートみたいだと思った。簡単に言えば巨大なハスキー犬。自分が女性にモテると知っているゆえの余裕。

 穏やかで人懐っこい雰囲気で華やかな容姿から出る愛嬌たっぷりの大柄の彼は、私を好奇心いっぱいな視線で見つめる。
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