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5話 念願の場所

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「……全然眠れん」

 真昼と一緒に眠りへ就いたのはいいが、全くと言っていい程眠れん。
 仕方なく目を開けると、真昼の顔が真横に合った。
 端正な顔が横にあり、胸がドキドキ……いや違う。
 いまならば真昼を。
 俺の手が真昼に伸びた。
 次の瞬間、スマホに着信音がなる。
 スマホの音で俺の手は止まり、我に帰る。

「俺はいま何をしようと……?」

 自分の手が震えるのが分かる。
 落ち着け、冷静になれ。
 意識を逸らす為にスマホを見る。
 着信音の相手は由那だった。

『ねぇ音羽、美菜と喋ってた話し。どういう事?』

 雪ノ宮と喋ってた話し? 
「俺は真昼を救う」
「あの子に出来るだけ、いい思いをさせて」
 彼奴が聞きたいのこれの事か?

『お前が聞きたいのって?』
『美菜と最後話してた奴!』
『ああ、お前には関係ない話だ。知りたかったら雪ノ宮に聞け』

 俺は由那に最後のメッセージを送り、スマホの電源を落とす。
 着くまでの間、一体どうするか。
 真昼の方に意識を向けると、また変な事をしかねない。
 なるべく真昼に意識を、向けてはいけない。

「寝れる気はしないが少し目を瞑るか」

 俺は再び目を閉じる。
 寝れなくてもいい、少しでも体を休める。
 ……いまは何時だ? 目を瞑った辺りから記憶がない。
 ただ、体が揺らされているのは分かる。
 目を開けると、真昼が焦った表情で、俺の顔を覗き込んでいた。
 人の体を揺らしながら、真昼は一切言葉を発さず揺らして来る。
 流石に何か一言、欲しい物だ。
 と、思っていた矢先喋った。

「もう終点だよ!!」
「え?」

 真昼の言葉に思考が一瞬停止する。
 急いで窓を見ると、京都と書かれた看板がある。
 席から急いで立ち上がり、扉に向かって歩き出す。
 真昼も一緒に歩き出す。
 気付かない内に寝ていたのか。
 少しでも体を休めれたからよかった。
 が、終点に気づかないとは思ってもいなかった。
 俺達は駅に降りホームの椅子に座る。
 空はもう暗くなっていた。
 スマホを取り出し、時間を見ると、十八時をを超えていた。
 スマホに十ニ件の通知が合ったが、みなかった事にする。
 真昼の方を見ると笑顔だった。

「本当に京都へ来てしまったね」
「そうだな」

 真昼は嬉しそうに言った。
 本人は俺に隠してるつもりだろうが、目をキラキラさせ、京都駅の看板を見ている。
 ここまで真昼が、嬉しそうにするとは思わなかった。
 京都は観光地としても有名。
 歴史的な建物を散策するのもいい。
 でも一番真昼が行きたいのは、京都市最古の公園。
 たまにテレビや雑誌にも載っている。
 真昼はそういう物を見て、行きたがるタイプ。
 今の時期は丁度、春の季節。
 公園の中にある桜が綺麗に咲いてる時期。
 前、お花見をしたいと、言ってたから丁度いい。

「ねぇねぇ音羽君。今からどこに行こうか!!」

 真昼は無邪気な笑みを浮かべ、俺に言って来る。
 普段は才色兼備で大人ぽい。
 今の真昼は子供その物。
 もし真昼に知られたら怒られるな。
 真昼には悪いが、今から行動は出来ない。

「今からは……寝所探しだな」
「え? 嘘」
「本当、諦めろ。この時間から動けば、最悪補導される未来が見える」
「確かに……」

 真昼は少し不満そうだったが、納得をしてくれた。

「近くにホテルかネカフェないかな?」
「私達泊まれるの?」
「多分泊まれる」

 実際泊まれるかの確証はない。
 スマホで調べながら探すしかない。
 とりあえずは駅を出る事だ。
 ベンチから立ち、真昼に声を掛ける。

「とりあえず行こう」

 真昼は俺の手を取った。
 そのまま俺達は駅を出て、宿泊場所を探す事にした。
 道中、お互いお腹が空き、コンビニで夜食を買った。
 駅を離れ、役一時間くらい彷徨さまよっていた時、ネカフェ……ネットカフェを見つけた。
 外はもう暗闇だった。
 ネットカフェの前にメニュー表の看板がある。
 何時間利用でいくらと、書かれている。
 ここで宿泊する事を、考えて十何時間パックが一番妥当。
 一体どのパックにすれば?

「明日には観光したい」

 真昼はたった一言をいい黙った。
 はいはい、分かりましたよ、お嬢様。
 色々、散策をすると考えれば、朝早い時間の方がいい。
 それを踏まえると、十五時間パックだな。
 俺はどのパックにするか、決め真昼に言う。
 真昼は『音羽君が決めたのでいいよ。そういうのは君の方が詳しいし」と言った。
 無責任とも捉えられるし、信頼をされてるとも思う。
 ネットカフェに入り、受付を済ませ鍵を貰った。
 自分達が利用する個室を探し、その中に入る。

「思っていたより狭いな」

 個室には一台、デスクトップ型のパソコンが合った。
 後は周りに本棚が置いてある。
 広さは大人、二人分より少し広いくらい。

「二人だと案外狭いね」
「寝れるだけのスペースが、あればいいさ」

 適当な雑談を交わし、コンビニで買ってきた。
 弁当やら色々を食べる。
 気づいたら夜、二十三時を回っていた。

「そろそろ寝るか」
「うん、分かった」

 真昼は返事をし、俺の膝を枕にして眠りへと着いた。

「人の膝を枕にするかねこやつ」

 相変わらず、端正な顔をしているな。
 真昼は寝息を立てず、静かに寝ている。
 頭を撫でてやると、気持ちやすそうな顔を、して寝てる。

「真昼と、後どのくらい過ごせるんだろう」

 余命と言っても、実際より伸びたり、速まる事もある。
 真昼の場合、後者が当てはまる。
 いつ真昼の病気が進行するか、分からない。



 車内で寝たせいか。
 全くと言っていい程眠れない。
 眠気が一切来ない。
 折角だ、もう少し奇病について調べてみるか。
 ここはネットカフェ。
 調べたい物は出来る範囲だが、調べられる。
 朝が来るまで、俺は色々な奇病について調べた。
 操作しているパソコンの画面が、七時を映していた。

「そろそろ真昼を起こすか」

 パソコンの画面を閉じ首を動かす。
 ゴキゴキと首の骨が鳴り始めた。
 流石に長時間、パソコンを弄ると首が凝る。
 俺は真昼の体を揺らし、起こした。

「んーもう朝?」

 真昼は寝ぼけながら言った。
 まだ眠いのか、完全に目を開けてはいない。

「おはようさん。そろそろ出ないと、ゆっくり観光出来んぞ?」

 その言葉に真昼は、完全に目を覚ました。
 どんだけ京都が好きなんだ? まぁそういう俺も観光はしたい。
 重たい腰を上げ、個室から出る。
 真昼には先に外に出て貰った。
 受付の場所に鍵を返すと、同時に料金の支払いをする。

「二千四百九十円になります」
「これでお願いします」

 料金の支払いを済ませ、ネットカフェの外に出る。

「十五時間パックで、役二千五百円は安いな」

 外に出るとまだ若干暗いが、太陽は昇っている。
 個室の中から外へ出ると、肌寒い。
 まだ早朝っていう事も関係してる。

「あれ? 真昼がいない」

 本来、ネットカフェの前に真昼がいる筈。
 だが、誰もいなかった。
 次の瞬間、首筋に冷たい物が当たる。

「どう!! びっくりした?」

 呑気に言う。真昼の声が背後から聞こえた。
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