AV嬢★OLユリカシリーズ

道化の桃

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第4巻 OLユリカの社員旅行★深夜編 宴のあと

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 気がついたら、暗い部屋にいた。
 誰かが布団に運んでくれたらしい。裸のままだけど、拘束は解かれていた。
 撮影は終わったのだろうか。
 どうやら宿泊用の個室ではなく、宴会場に続く次の間のようだ。ふすま越しに明かりと話し声が聞こえてくる。男優かスタッフか、まだ飲んでいるのかもしれない。
 すーっと襖が開いて、誰かが入ってきた。
「あ、気がついた?」
 小声で話しかけてきたのは。
「……ひじりさん……」
「お疲れさま。今日は大変だったね」
 そう言って、聖さんはあたしの側に座った。
「なんかあたし……意識が飛んじゃって」
「うん、がんばってたもんね。疲れちゃったんだよ、きっと」
 聖さんがあたしの頭をなでる。
「……ねぇユリカちゃん、今度さ、デートしない?」
「……え?」
 言葉の意味を理解できなくて、あたしは聞き返した。
 聖さんが、するりと布団の中に手を入れる。
「約束だったでしょ。ここ、次は挿れさせてって」
「ひぁんっ……」
 前触れもなく肛門そこに触れられて、思わず変な声が出た。
「かーわいい」
 クスクスと聖さんが笑う。
「前も思ったけど、この、イカされすぎてぐったりしてる時のユリカちゃんって、ほんとかわいーよね」
「……っ!」
 顔が赤くなるのが分かる。あたしは布団を鼻まで引っ張り上げた。聖さんの顔が近付く。
「すきだなぁ――俺」
 ――え?
「――べつに俺は、今でもいいんだけどな」
 聖さんの手が、再びあたしのお尻をなでた。そして。
「……ゃんっ……」
 にゅぷっ、と、指先が穴に侵入する。
「……ハァっ……」
 あたしはたまらず、熱い息を吐いてしまう。
「すっごい、ユリカちゃん。あんなにヤリまくった後なのに、まだ感じるんだ?」
 吐息混じりの聖さんの声が、鼓膜を痛いくらい震わせてくる。
「――――っ」
 恥ずかしさと、押し寄せてくる快感に、あたしは唇を噛んだ。
「その顔。かわいすぎるんだけど」
 そんなこと言われても、こんなことされて感じないほうが、おかしい。
「いいね、そのすがるような眼。そんな眼で見られたら、ほら」
 聖さんがあたしの手を取って、浴衣の上から自分の股間を触らせる。硬く大きくなったそこを。
 そして更に深く、あたしの中に指を挿し入れた。
「あん……っ」
 あたしは朦朧としていた意識の中から理性のかけらを総動員して、聖さんを両手で押しやった。
 部屋を見回すが、カメラはどこにもいない。
 ……これは撮影じゃない。
「ダメ……聖さんっ……」
「そんなに感じながら言われても、やめられないよ」
 聖さんが布団をめくって、あたしの上に覆い被さってくる。
「――!」
 あたしは初めて、恐怖で硬直した。
「……あ……ああ……」
 聖さんの手が、胸を揉みしだく。
「ああっ、やめ……」
(そうだ、あたし、裸だった……こんなんじゃすぐにでも挿れてくださいって言ってるようなもんじゃない……)
 無防備すぎる自分の姿に、今更気付く。
「やめて……っ、お願い、……やあんっ」
 乳首をつままれて、あたしはびくんと跳ねた。
「こんなに感じてるのに?」
 聖さんの舌が乳首を舐める。その動きが官能的すぎて、また快感が押し寄せてくる。
「ここ、さっきたくさん舐め回されてたよね。10分だっけ?」
「……っ、いやぁっ」
「妬けるなぁー……」
 強く舐め上げられて、乳首がぷるんと揺れた。
「やあっ、ダメ、ああっ」
 どんなにもがいても、聖さんのがっしりした身体に押さえ込まれていて、逃げられない。
「しぃっ、声、大きいよ」
「んっ!」
 聖さんが、唇であたしの口を塞いだ。

 聖さんのキスは、彼の挿入セックスと似ていた。
 力強く、迷いなく、征服してくる。
「…………っ」
 逃げられない。
(……もう、いっか……)
 抵抗する力が薄れていく。
(別に彼氏もいないし、さっきまで犯されまくってたし、今更)
 ここで身を委ねるのと、撮影で犯されるのと、なにが違うというのだろう。
 どうせあたしはそういう女だし。
(もう……疲れたし)
 あたしは、征服された。

 あたしの身体から力が抜けたとたん、聖さんの指があたしの中を激しく掻き回した。
「やあ!あ、ああ、やぁぁっ!」
 腰が大きく反り返る。
 快感が襲いかかってくる。身を委ねたら破滅しそうなほどの。
 快感と恐怖に暴れるあたしを乗りこなすように、聖さんはあたしの一番感じる場所を執拗に攻め立ててくる。
「ああああ……!」
 気持ち良すぎて、怖い。
 頭の芯が痺れていく。
 聖さんが囁いた。
「ね、挿れていい?」
 肛門に、聖さんの亀頭が押し当てられた。
 涙で、視界が滲んだ。
 その時。
「おい」
 怖ろしく冷たい声が、征服者の動きを止めた。
「カメラの回ってないところで、うちの女優とやるな」

「……タイミング良すぎですよ、佐伯さん。いいところだったのになぁ」
 聖さんはするりと布団から抜け出た。何事もなかったかのように、はだけた浴衣の前を直す。
「まさか、この時間に東京から?」
「高速がいててよかったよ。聖くん、女優相手にあんまり悪ふざけするもんじゃない。キャリアに傷がつくぞ」
「嫌だなぁ。僕は本気で口説いていたんですが……恋愛は自由でしょ?」
「恋愛?」
 佐伯の声が一段と低くなる。
「俺は真面目に話してるんだ」
「僕だって真面目に話してますよ。キャリアは大切ですからね……あなたこそ、後ろ暗いことが色々あるんじゃないんですか?」
 佐伯はタバコをくわえて火をつけた。深く吸い込んで、煙を吐き出す。
「……なんのことだか、わかんねぇな。とにかく今夜は手を引いてくれ。彼女も疲れてる」
 わかりましたよ、と言って、聖さんは部屋から出ていった。
「おい、立てるか?」
 佐伯が布団に潜り込んでいるあたしに向かって言った。
「……泣くほど嫌なら、なんで助けを呼ばねぇんだ」
「……ごめ……なさ……こわく……て」
 今になって涙が溢れてくる。
ひじりがか?」
 あたしは答えられなかった。
「立てるか?」
 佐伯がもう一度聞いた。
「……しょうがねぇな」
 押入れの戸を開ける音がした。
 佐伯は押し入れから出した新しい浴衣であたしの身体をくるんで抱き上げた。
「とりあえず部屋いくぞ。お前、シャワーも浴びてないだろう」
「……荷物が、控室に」
 そういえば消えた洋服はどうなったんだろう。
「後で取ってくるよ」
 あたしはほっとして、佐伯の腕の中で眼を閉じた。

   *****

 部屋に入ると、佐伯はあたしを抱いたままベランダに出た。
 ベランダには囲いがしてあり、周囲からは見えないようになっている。
 ベランダの端には檜の浴槽があって、佐伯はそこにあたしを横たえた。
 ワイシャツの袖をまくりあげてシャワーの温度を確認し、弱い水圧であたしの身体にかけていく。
 色んな汚れにまみれていたあたしの身体が、さらさらときれいになっていく。
 気持ちいい。
「お前なぁ、なにも毎回気絶するまでやんなくていいんだぞ?監督にもう無理だって言ったら止めてくれるから」
 分かってる。でも実際に撮影が始まってしまうと、そんなタイミングはないんだ。
 それともあたしがおかしいんだろうか。
「……佐伯さん、どうして来たの?」
「来ちゃ悪いかよ」
「だって、遠いのに」
 確か、都内から貸切バスで2時間ちょっとかかったはずだ。
「武藤が連絡よこしてきたんだよ。お前がまた気絶したって」
 身体の汚れをひと通り流し終えると、浴槽にお湯を溜め始める。
 あったかいお湯がゆっくりと溜まっていって、泥のように疲れていた身体が少しずつ軽くなっていく。
「高速ぶっ飛ばして来てみたらこのざまだ」
「……ごめんなさい」
「なんで聖に犯されかけてんだよ」
「……ごめんなさい」
 佐伯はため息をついた。
「あったまったら上がれよ。寝るなよ?俺はこれ以上介護しねえぞ」
 そう言って立ち上がると、佐伯は部屋の中に入ってしまった。
「介護って……」
 そんな、ひとをおばーちゃんみたいに。でも。
「……シャワー、気持ちよかったな……」
 お湯が湯船を満たしていく。
 仰向けになって、頭を浴槽のふちにあずけると、あたしの身体は軽く浮き上がった。
 目隠しの柴垣に切り取られた小さな空に、満月より少し欠けた月が浮かんでいる。
 眼を閉じると、そのまま夜に浮遊していくような気分だ。
 ――すきだなぁ――俺。
 ――恋愛は自由でしょ?
(聖さん……どういうつもりだったんだろう……)
 あれは、好きだからやったの?
 それとも。
(そういう、遊び――?)
 わからない。
 聖さんにとっては、恋愛そのものが遊びなのかもしれない。
 それでも、聖さんのことを思い出すと、子宮の奥がきゅうっとよじれるのを感じた。
(ずるいよ、聖さん)
 眼を閉じたまま、あたしは胎内たいないに聖さんの余韻を蘇らせていた。
(だって、気持ちよすぎるんだもん……)
 あの征服するような、絶対的で、有無を言わせない行為セックス
 その記憶だけで、内側からとろとろと濡れていくのを感じる。
 たとえ仕事で交わったに過ぎなくて、愛情なんて微塵も存在しなくても、身体が覚えている。
 ずるいのは、あたしだろうか。
(だって、あたしは……)
 こんなに他の男に濡らされながら。
(あたしが好きなのは……)
 それでも彼のことを考えると、切なくなるのはどうしてだろう。

 お風呂から上がって部屋に入ると、佐伯が座椅子に座ったまま眠っていた。
 時計を見ると深夜1時近い。
 東京で仕事した後、ここまで高速を運転してきて、疲れているのか。スーツのベストとスラックスを着たまま、ワイシャツの袖はさっきまくりあげたまま。ジャケットは畳に無造作に置かれている。
 佐伯の右手は座卓の上の灰皿に伸びて、ほとんど灰になりかけたタバコが挟まっている。あたしはそれを灰皿に押し付けた。
「佐伯……さん」
 起こしたほうがいいのか、寝かせておいたほうがいいのか、わからないままに一応声を掛けてみる。
「ね、お布団に寝ないと」
 部屋には布団が二組、間を空けて敷いてある。
「疲れ、とれない、よ?」
 佐伯の睫毛は、ぴくりともしない。すうすうと寝息を立てて、よく寝ている。
 うっすらと開いた唇からは、かすかにタバコの匂い……。
 もう少しで触れそうなくらい顔を寄せて、あたしは佐伯を観察した。起きている時はこんなに近付けない。
 つるつるではないけれど、たるんでもいない肌。あたしの肌より少し焼けている。
 朝剃って、伸びかけた髭。うすい唇。
(あたし、佐伯さんとキスって、してないんだな)
 初めて会った、その場で抱かれたのに。
 あんなに激しく、何回もいかされたのに。
(あの後、一度も、れようともしない)
 そう思うと、眠っている佐伯にあたしが触れてはいけないような気がした。
 あたしはそっと佐伯のそばから離れた。れないように注意深く。
 掛け布団を一枚佐伯に掛け、落ちていたジャケットをハンガーに掛ける。
 部屋の隅には、あたしがお風呂に入っている間に佐伯が取ってきてくれたのだろう、あたしの私物がまとめて置いてあった。
 入り口の鍵が閉まっているのを確認して、あたしはひんやりとつめたい布団に潜り込んだ。
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