地獄に落ちた男は鬼に叶わぬ恋をする~事件の謎と恋心~

宝者来価

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十三話 生活

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「赤鬼さん、授業は退屈ではありませんか?」
「……これが俺の仕事だ」

 五日ほど学校にかよいつづけ、明日は休みである。
 ひらがなとカタカナを読めるようになったし数字もわかる。
 それに歌も話も学べた、とても地獄とは思えない。……地獄ですけど。

 なにやら身体中を黒いネズミに噛まれているようだ。
 悲鳴と、血まみれの姿が見える。
 臭いもきて吐き気がした。学校からの帰り道、眼下に見えたのだ。

「……うっ」
「道に見えるようにあるのは問題だな」
「あれ、は」
「黒色鼠狼処(こくしょくそろうしょ)だ」
「ここの者は何をしたのでしょうか?」
「理由なく小動物を殺した物が落ちる地獄だ。蛇の餌や実験、家に出たから駆除するなどという理由までは構わんが……おーい!!」

 赤鬼が見張りの鬼に手を振る。
するとその鬼がこちらに駆けてきてくれた。
 赤鬼とは違い全身が青い鬼だ。

「どうされたんでぃ?」
「今さっき、あの者は何をした罪で地獄に落ちたか聞かれていてな」
「へい、ネズミの皮を生きたまま二百匹も剥いだんでぃ」
「……なるほど」

 理由は分かりません。でも、それは私にも悪い行いと思えますね。

「小さな動物も怨みを持つ、喰われる、生活を脅かされる、そんな理由ならともかく娯楽で殺されちゃあねぇ」
「青鬼さんが担当している理由もあるのでしょうか」
「ああ俺たち青鬼は赤鬼とちがって直接手をくださないんでぇ」
「そのような鬼もいるのですね」
「等喚受苦処(とうかんじゅくしょ)とか、絡繰りで拷問するんでぇ」
「聞いたことないですね」
「機械で人を殺し、かつ機械のせいにした者が落ちる」

 授業で現代の人々は機械をたくさん作ったのだと学んだ。タクシーは車であり、あの車で死ぬ人間がいるのは理解できますね。なんとも速い乗り物、当たればただではすまないでしょう。

「……そろそろ夜がきますし、家に帰りますか」
「ああ」
「ご説明、有難うございました」
「これもあっしら鬼の仕事ですんで」

 家に帰り電気を点けた。靴を脱ぎ。椅子に腰かける。

「どうにも毎日、人と顔を会わせるのは疲れますね」
「まさか人がすぐに減るとは……」

 オウカという少女は学校にこなくなった。
 先生という存在は教える立場であり、親や家族ではない。
 彼女が求めていた甘えたい場所とはほど遠い。

「子供が地獄におちた場合、賽の河原で石を積む」
「……親より先に死んだ子供が行くと聞いておりました」
「それは間違って伝わったもの、罪なきものは極楽へゆくが――罪があるならば幼いゆえに責め苦ではなく石を積むことで済まされているのだ」

 納得した。女と子供は特に優しく扱えとは母の言葉だ。皆が転生した人生をなんとも楽しそうに暮らしているとテレビで見せてもらった。

「……今の家族に愛されている、それだけで充分ですよ」

 通常のテレビ番組に切り替えた。現世で風邪が流行っている報道。そして地獄の鬼たちの変化についてやっていた。

『最近の若い鬼たちは獄卒仕事を嫌がるものも多くなっており……理由は精神的にキツイ、決まりが面倒、たいして悪くない亡者を責めたくない』
「鬼なのに?」
「……俺とて、本当はしたくない、しかし何者かがせねばならぬこともある」
「こうして一緒に暮らすことも?」
「今の生活ならば悪くない、しかしいつまでも付きっきりではいてやれぬ」
「それでも許されるかぎりは一緒にいとうございます」
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