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十七話 犬神
しおりを挟む「おっはよー」
「ニエさん、おはようございます」
「ほらナキさんも挨拶は大事でしょ?」
「……おはよう」
犬神さんが教室に入って、席に。
特に誰かとかかわる様子はみうけられないが、彼は私をよく見ている。
私は赤鬼に惚れている故に、まさかとは少し思っている。
「俺に何か?」
「……犬神さん、何か怨まれるような心あたりありませんか?」
「ある」
「ハッキリとご自覚が!?」
「俺たち妖怪は裁判にならないからな――本来ならば何千億年と罰されてもおかしくない」
何をやらかしたというのだろうか。村を一つ焼き殺した者ですら数千年で済んだのだ。
最も、あとから罪を重ねてしまえばそれだけではない。
最初からそのような判決になるほどのこととは何だろうか。
「ちーっす、僕ちゃん登校だよー」
「ライトさんおはようございます」
「珍しい組み合わせで話してんねー」
確かに犬神さんと私が会話をするのは珍しい。
彼は寡黙で、ヒロシさんにかまわれていることはあれど自分からは話さない。
けれど決して協調性がないとかではない、皆で絵をかくことにも参加していた。
「そうですね、そういえば今日ヒロシさんは――?」
「盆の時期だから今の日本を見に行った」
確かにこの時期は鬼も人も少ない。
彼は何かまだ未練があるわけではなく、逆に復興したいまの日本を見に行った。
近代に起きた国同士の巨大な戦で焼けた町の今を見にいっていると。
「今日の放課後、少々のお時間いただけますか?」
「俺に断ることなどできはしない」
「……無理にとはいいませんよ」
「いや、俺はシノガタの願いをどんなことであろうと実行する」
先生がやってきて授業を始めた。
今日は戦争という歴史と地獄の対応について。
教科書に載るのは焼けるより上、黒く解けた人々。
「ここは正確に言えば日本の地獄、海外には海外の地獄があります」
何時もの授業が終わり言葉や歴史についてまた一つ賢くなった。
給食を食べたら掃除をして下校、いつもの風景。
だが私が犬神さんの家に行かせてほしいと頼むのは珍しい光景だろう。
「かまわないが何もないぞ」
「何もない?」
「ああ、本当に何もないとしかいいようがない」
学校から彼の帰路をたどる、で、屋根もない土地。
まるで校庭みたいな草の生えない地面が数メートルあるだけ。
「俺は学校以外ではここで寝ている」
「ここまで何もないのは想定してなかったですね」
「何を聞かれてもすべて答える」
「では……家に住まない理由が今一番気になってます」
他に多く聞きたいことはあるが、地面に寝ているのを聞かせられたら何故と思うのは自然だろう。金がないのか、それとも他に理由があるのか。
「河童について習っただろう?」
「頭に皿を乗せた相撲が好きな妖怪ですよね」
「地獄の川にも彼らは暮らすが、家など持たぬ」
「なるほど?」
「巣を持つ感覚が俺にはない、だがシノガタが家に住めと命ずるなら従う」
私の命令に従うその理由、それこそ私が求めているものだ。
というか妖怪ならば河童・鬼など名前があるだろう。
まずはココを聞かねば話がややこしい。順番に分かることから質問するべきだ。
「犬神さんは何という名前の妖怪でしょうか?」
「テンダロス」
「てん……?」
「日本語の意味は『番犬(ばんけん)』だ」
それは、泥棒などに吠えてもらうための犬を指す。番をしていた、何かを護っていた。
だが為せなかった、だから私に何かが起きた?
「とりあえず家に住みませんか――?」
今日のところは一先ず家に連れ帰った。
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