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2章 領都
17 キラーバード
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「さて、レイジ。早速、レイジにしかできない仕事が舞い込んできたな」
「うん、僕もウィリアムさんについていっていいか聞こうと思ったけど、この量のお肉は僕がいないと大変だよね」
「わかってくれてありがたいよ。ウィリアムさんも全員連れて行かないで解体用に二、三人置いていってくれてもよかったのにな」
正直、声をかけようと思った瞬間には食堂の外に駆け出して行ってしまったので声をかけそびれてしまったのだ。
「……本当に昨日食べたのは獣のお肉だったんですね」
「ああ、やはり領主様たちの中でも半信半疑だったんですかね。まあ、今までは見向きもしなかったものが美味しいと言われてもにわかには信じられないですよね」
俺もヘビースネークやドラゴンマッシュルームを食べた時には覚悟を決めたものだ。
「いえっ、マサト様のことを疑ったわけではないのですが」
「ええええ、わかっていますよ。俺も初めて食べる食材は鑑定で食用可能と出ていても覚悟がいりますからね」
「ミーナはマサトさんが言うなら大丈夫だと思いますよ?」
「とはいっても、俺の作っている料理は本当は材料が違うものだからな、これからもおいしい保証はないんだぞ?」
「でも、これから作るキラーバードはおいしいんですよね? マサトさん、心なしかウキウキしていますし」
おっと、ミーナには気づかれてしまったか。
まあ、鶏肉に似ているということは唐揚げやテリヤキチキンだけじゃなくスープに入れたり何だったらキラーバードの骨からは鶏ガラが取れるかもしれないってことだ。
しかも、キラーバードの卵はオムレツに卵焼き、目玉焼きも作れれば、パンの種類や甘味も増やせるのだ。
「ああもちろんだ、俺の鑑定結果通りならキラーバードは肉も卵も最高にうまいぞ」
まあ、神様からもらった食材鑑定が裏切ったことはないから不安はないのだが、情報が見えていない人間からすれば本当に大丈夫なのかわからないからな。
「とりあえず、キラーバードの肉はレイジに任せて卵を使って簡単な料理を作ってみるかな」
卵だけで作れてパンや斑芋に合う料理といえばオムレツだろう。
いや、本当はオムライスとか親子丼とか作りたいんだがなにせこの世界では米を見つけられていないから作りようがないんだよな。
もちろん、デビルボアを使ったボアカツだとか目玉焼きのせハンバーグなんてものも作れるには作れる。
だが、今は昼前で、しかも領主一家にほとんどのパンを献上してしまった結果、保管棚にもパンが一つもないのだ。
まあ、ウィリアムさんたちに黙って肉料理を出したらあとで怖いというのも心の中にあるっちゃあ、あるのだが。
そんなわけで、本日の昼飯はキラーバードの卵を使ったシンプルオムレツと斑芋のガレットにしよう。
本当は両方のメニューにはチーズを入れるのが大正義なのだが、牛乳同様チーズが手に入らない以上その選択肢は外すしかない。
「ミーナはイーリスに斑芋の毒抜きを教えて、終わった斑芋をスライサーで細くカットしてくれ。くれぐれも怪我には気を付けるように」
「はい、マサトさん。イーリスさん、教えますからこちらに来てください」
「レイジはキラーバードの解体を続けてくれ。夜飯には騎士の人たちが大勢やってくるだろうから一口大に切ってくれるとありがたい」
「了解、マサト兄ちゃん」
さてと、俺のほうは卵を使ったシンプルなオムレツ作りか。
正直な話、こういった料理人としての技量と経験が重要になってくるシンプルな料理が俺の一番苦手な領分なんだよなあ。
料理を行う上での工程が増えれば増えるほどごまかしがきく場面が増えていくのだが、こういったシンプルな料理にはごまかしがきかないので料理人の天職を持っているミーナとの差が歴然となるのだ。
とはいえ、初めて作る料理になるわけだし、愚痴っていても仕方がない。
まずは今は使わない分の卵を冷蔵庫にしまうか。
というか、ウィリアムさんたちも遠慮なく拾ってきたんだな。
軽く四十個は超えてるぞこの卵の量は。
もちろん、業務用の冷蔵庫には卵ポケットなんてものは存在しないので、こちらで移し替えたザルごと卵を収納していく。
これも保管の手段としてはあまりよくはないのだろうが、仕方がないということで目をつぶろう。
そういえば、卵には細菌がいて前の世界でも生食できる地域や国は限られていると知識にはあるが、こちらの世界ではどうなんだろうか?
『名前:キラーバードの卵(無精卵) 可食部:殻以外 年齢:十日 食用:可 殻が厚く中身を取り出すのに苦労する。卵黄は味が濃く、卵白は淡白な味わいがある。無精卵の場合は三十日ほどで食べられなくなる。受精卵の場合は受精後三日ほどで雛が形作られるので料理に使用する場合は注意が必要。受精した瞬間から色合いが強くなり、孵化直前には橙色に近くなる。キラーバードには細菌がおらず、卵の生食が可能』
は? なんだこれは……キラーバードの卵が生食可能なのはいい情報だが、キラーバード自体に細菌がいないのか?
ということは、キラーバードの肉も生食が可能ということになるのだが……。
『個体名: 種族:キラーバード 年齢:五歳 食用:可 鋭い爪と嘴を持ち空中から敵対者に襲い掛かる。草食なので普段は温厚だが自身が餌と定めた植物の周囲にいる動物を敵対者とみなして執拗に追いかける一面もある。肉質は柔らかく、味は鶏に似ている。産卵器官には細菌がいないが、肉には寄生虫がいる場合があるので生食はすすめない』
はいはい、要するに前の世界と同じような感覚で取り扱えばいいわけか。
卵は生食が可能だが、肉は生食をすれば体調不良に陥る……と。
正直、この世界の食材は前の世界に似すぎているのだが、これも神様が後にやってくる善人に向けて調整した結果なのかね。
まあ、このキラーバードの卵はいきなり半熟にするのは怖いし、レイジやミーナはともかくイーリスに半生のものを提供するのも不安があるから、オムレツはしっかり目に焼いたものにするかな。
材料はキラーバードの卵が四個とバターを適量。
キラーバードの卵は前の世界の鶏卵よりも一回りか二回りほど大きいので、一人につき一つも使えば十分だろう。
あとはバターは有塩のものも無塩のものも調味料として無限に手に入るから今回は有塩のバターを使おう。
まあ、バターが調味料として認められるならチーズや牛乳も調味料として認めてほしかったところだ。
「マサトさん、また一人で新しい料理を作るんですか?」
「おや、ミーナ。斑芋のほうは終わったのかな?」
「もちろんですよ、ミーナもイーリスさんも怪我もなくきちんと終えましたよ」
別にだらだらやっていたわけではないのだが、卵を冷蔵庫にしまったり卵や肉を再鑑定している間にミーナは斑芋の処理を終えてしまったらしい。
「じゃあ、作り方をミーナとイーリスにも見てもらおうかな。もちろん、斑芋のほうも新しい料理にするからな」
村ではスライサーもフライパンも手に入らないからガレットは候補から外していたんだよな。
「とはいえ、両方ともそこまで難しい物じゃないから一度手本を見せたら、自分の分は自分で焼いてもらうことにしようか」
「わかりました」
「えっ、私がやるのですか?」
「そりゃあそうだよ、イーリスは俺のもとに料理人の修業をしにやってきたんだろう? だったら、いろいろ挑戦してみないと。……あ、レイジの分は俺が焼くから心配するな」
キラーバードの肉塊と戦っているレイジは俺の言葉にほっとする。
いくら俺でも解体で手がいっぱいのレイジに自分の分は自分で焼けなんて流石に言わない。
「うん、僕もウィリアムさんについていっていいか聞こうと思ったけど、この量のお肉は僕がいないと大変だよね」
「わかってくれてありがたいよ。ウィリアムさんも全員連れて行かないで解体用に二、三人置いていってくれてもよかったのにな」
正直、声をかけようと思った瞬間には食堂の外に駆け出して行ってしまったので声をかけそびれてしまったのだ。
「……本当に昨日食べたのは獣のお肉だったんですね」
「ああ、やはり領主様たちの中でも半信半疑だったんですかね。まあ、今までは見向きもしなかったものが美味しいと言われてもにわかには信じられないですよね」
俺もヘビースネークやドラゴンマッシュルームを食べた時には覚悟を決めたものだ。
「いえっ、マサト様のことを疑ったわけではないのですが」
「ええええ、わかっていますよ。俺も初めて食べる食材は鑑定で食用可能と出ていても覚悟がいりますからね」
「ミーナはマサトさんが言うなら大丈夫だと思いますよ?」
「とはいっても、俺の作っている料理は本当は材料が違うものだからな、これからもおいしい保証はないんだぞ?」
「でも、これから作るキラーバードはおいしいんですよね? マサトさん、心なしかウキウキしていますし」
おっと、ミーナには気づかれてしまったか。
まあ、鶏肉に似ているということは唐揚げやテリヤキチキンだけじゃなくスープに入れたり何だったらキラーバードの骨からは鶏ガラが取れるかもしれないってことだ。
しかも、キラーバードの卵はオムレツに卵焼き、目玉焼きも作れれば、パンの種類や甘味も増やせるのだ。
「ああもちろんだ、俺の鑑定結果通りならキラーバードは肉も卵も最高にうまいぞ」
まあ、神様からもらった食材鑑定が裏切ったことはないから不安はないのだが、情報が見えていない人間からすれば本当に大丈夫なのかわからないからな。
「とりあえず、キラーバードの肉はレイジに任せて卵を使って簡単な料理を作ってみるかな」
卵だけで作れてパンや斑芋に合う料理といえばオムレツだろう。
いや、本当はオムライスとか親子丼とか作りたいんだがなにせこの世界では米を見つけられていないから作りようがないんだよな。
もちろん、デビルボアを使ったボアカツだとか目玉焼きのせハンバーグなんてものも作れるには作れる。
だが、今は昼前で、しかも領主一家にほとんどのパンを献上してしまった結果、保管棚にもパンが一つもないのだ。
まあ、ウィリアムさんたちに黙って肉料理を出したらあとで怖いというのも心の中にあるっちゃあ、あるのだが。
そんなわけで、本日の昼飯はキラーバードの卵を使ったシンプルオムレツと斑芋のガレットにしよう。
本当は両方のメニューにはチーズを入れるのが大正義なのだが、牛乳同様チーズが手に入らない以上その選択肢は外すしかない。
「ミーナはイーリスに斑芋の毒抜きを教えて、終わった斑芋をスライサーで細くカットしてくれ。くれぐれも怪我には気を付けるように」
「はい、マサトさん。イーリスさん、教えますからこちらに来てください」
「レイジはキラーバードの解体を続けてくれ。夜飯には騎士の人たちが大勢やってくるだろうから一口大に切ってくれるとありがたい」
「了解、マサト兄ちゃん」
さてと、俺のほうは卵を使ったシンプルなオムレツ作りか。
正直な話、こういった料理人としての技量と経験が重要になってくるシンプルな料理が俺の一番苦手な領分なんだよなあ。
料理を行う上での工程が増えれば増えるほどごまかしがきく場面が増えていくのだが、こういったシンプルな料理にはごまかしがきかないので料理人の天職を持っているミーナとの差が歴然となるのだ。
とはいえ、初めて作る料理になるわけだし、愚痴っていても仕方がない。
まずは今は使わない分の卵を冷蔵庫にしまうか。
というか、ウィリアムさんたちも遠慮なく拾ってきたんだな。
軽く四十個は超えてるぞこの卵の量は。
もちろん、業務用の冷蔵庫には卵ポケットなんてものは存在しないので、こちらで移し替えたザルごと卵を収納していく。
これも保管の手段としてはあまりよくはないのだろうが、仕方がないということで目をつぶろう。
そういえば、卵には細菌がいて前の世界でも生食できる地域や国は限られていると知識にはあるが、こちらの世界ではどうなんだろうか?
『名前:キラーバードの卵(無精卵) 可食部:殻以外 年齢:十日 食用:可 殻が厚く中身を取り出すのに苦労する。卵黄は味が濃く、卵白は淡白な味わいがある。無精卵の場合は三十日ほどで食べられなくなる。受精卵の場合は受精後三日ほどで雛が形作られるので料理に使用する場合は注意が必要。受精した瞬間から色合いが強くなり、孵化直前には橙色に近くなる。キラーバードには細菌がおらず、卵の生食が可能』
は? なんだこれは……キラーバードの卵が生食可能なのはいい情報だが、キラーバード自体に細菌がいないのか?
ということは、キラーバードの肉も生食が可能ということになるのだが……。
『個体名: 種族:キラーバード 年齢:五歳 食用:可 鋭い爪と嘴を持ち空中から敵対者に襲い掛かる。草食なので普段は温厚だが自身が餌と定めた植物の周囲にいる動物を敵対者とみなして執拗に追いかける一面もある。肉質は柔らかく、味は鶏に似ている。産卵器官には細菌がいないが、肉には寄生虫がいる場合があるので生食はすすめない』
はいはい、要するに前の世界と同じような感覚で取り扱えばいいわけか。
卵は生食が可能だが、肉は生食をすれば体調不良に陥る……と。
正直、この世界の食材は前の世界に似すぎているのだが、これも神様が後にやってくる善人に向けて調整した結果なのかね。
まあ、このキラーバードの卵はいきなり半熟にするのは怖いし、レイジやミーナはともかくイーリスに半生のものを提供するのも不安があるから、オムレツはしっかり目に焼いたものにするかな。
材料はキラーバードの卵が四個とバターを適量。
キラーバードの卵は前の世界の鶏卵よりも一回りか二回りほど大きいので、一人につき一つも使えば十分だろう。
あとはバターは有塩のものも無塩のものも調味料として無限に手に入るから今回は有塩のバターを使おう。
まあ、バターが調味料として認められるならチーズや牛乳も調味料として認めてほしかったところだ。
「マサトさん、また一人で新しい料理を作るんですか?」
「おや、ミーナ。斑芋のほうは終わったのかな?」
「もちろんですよ、ミーナもイーリスさんも怪我もなくきちんと終えましたよ」
別にだらだらやっていたわけではないのだが、卵を冷蔵庫にしまったり卵や肉を再鑑定している間にミーナは斑芋の処理を終えてしまったらしい。
「じゃあ、作り方をミーナとイーリスにも見てもらおうかな。もちろん、斑芋のほうも新しい料理にするからな」
村ではスライサーもフライパンも手に入らないからガレットは候補から外していたんだよな。
「とはいえ、両方ともそこまで難しい物じゃないから一度手本を見せたら、自分の分は自分で焼いてもらうことにしようか」
「わかりました」
「えっ、私がやるのですか?」
「そりゃあそうだよ、イーリスは俺のもとに料理人の修業をしにやってきたんだろう? だったら、いろいろ挑戦してみないと。……あ、レイジの分は俺が焼くから心配するな」
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