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「これまで私は色んな大人の人に守られてばかりでした。ですから、今度は私が守ってあげる番なんです」
咲良の言葉に諒真は思わず口を閉じてしまう。
男として女に守られるという状況には納得のいかないものがある。
それでも、初めてできた後輩を守りたいという咲良の言い分には理解できるものがあったのだ。
「ククク、いい話だなぁ。もちろん、俺には理解できんし興味もないがなぁ」
ゆらり、と体勢を立て直した男はニヤニヤと笑みを浮かべつつ話に割って入る。
つられるように咲良も男に対して構え直す。
戦闘を再開しようとする二人とは違い、諒真だけはその場で呆然としてしまった。
咲良の言い分は理解できる。諒真が同じ立場だったら同じように後輩を命がけで守るだろう。
理解はできるが、それでも納得はできない。
諒真にだって自尊心があるのだ。男としてのものと人としてのものが。
明らかに自分よりも強いとは言っても同い年の女の子に守られているという事実は男としての自尊心を傷つける。
そしてなにより、蘇って生き延びてまですることがただ守られているだけというのは人としてダメな気がする。
ゆえに……だからこそ、諒真自身が取るべき選択肢はただ一つだ。
「うおおおおおおっ!」
化け物のようにニヤニヤと笑う男に対して全力の右ストレートを叩き込む。
もちろんその攻撃は相手にかすりもせず両手に握られた得物で軽くかわされる。
ただし、諒真の攻撃は男に対して何のダメージも与えない代わりに両手に握られた二本の得物を打ち砕く。
「諒真さんっ。ここは私が戦いますから諒真さんは下がっていてください」
「芦沢さん。……・芦沢さんは俺のことを命がけで守ってくれるんだよね?」
もう一度だけ、諒真は咲良に対して確認をする。
「……はい、私の命をかけて諒真さんを守ります」
「そうだよね。俺がもしこの男とまともに戦ったらまず間違いなく殺される。それこそ最初に殺された時のように……」
諒真はかみしめるように言う。
それこそが間違えようない事実。
まともに戦ったこともない、誰かを傷つけた経験もない諒真にとってこの化け物のような男を相手にするのは荷が勝ちすぎる。
「……そうですね、考えたくはないことですが今の諒真さんでは殺されてしまうでしょう。……だから」
「だから……、そう。だから芦沢さんは俺のことを守ってくれ」
諒真が口に出したのは今までとは真逆の言葉。
どうして自分を守るのか、と問い詰めていた今までと違い自分を守ってくれと頼む。
だからこそ次に出すのは覚悟を決めた言葉なのだ。
「その代わり……その代わりに俺は芦沢さんのことを命をかけて守るよ」
「……それは」
「俺じゃあ力不足かもしれないけれど、それでもそうしたいんだ。……ダメかな?」
「……ダメなんかじゃ……ダメなんかじゃないです」
一瞬迷った咲良ではあったが、諒真の提案を了承する。
それが本心からのものか、それとも押し問答している余裕がないからなのかは本人にしかわからないが。
「……最高だな、お前らは。要するに二人まとめて俺を殺しに来てくれるわけだ。……・ならば、こちらとしても二人まとめて殺すしかないじゃあ無いか」
咲良と諒真のやり取りを悠長に眺めながら話しかける男。
その姿からはまるで危機感を感じ取れず、自分を殺しにくる人間を心待ちにしているかのような表情をしている。
「お前を殺すわけじゃない。芦沢さんを守るってだけだ」
「お前の方こそよくわかっていないようだな。俺からそこの小娘を守るってことは、俺を殺すしかないんだよ。殺されない限り俺は何度だってお前らを殺しに現れるだろう」
表情は笑っているはずなのにその瞳には冗談を言っている色は見て取れなかった。
殺されない限り何度だって付け狙う、その言葉に嘘はないのだろう。
「でしたら、私があなたを殺します。二度と諒真さんを突け狙うことのできないように」
咲良は高々と宣言する。
「いいぞ、その調子だ。それでこそ俺の求める獲物だ」
男は咲良の宣言に愉悦の表情を浮かべつつ、右手に長大な日本刀を出現させる。
取り回しやすさよりも破壊力を求めたのか、新しく出現したその武器は狭い廊下では扱いにくそうだ。
「ですが、今ここであなたを殺すのはいささか難しいようです」
男が新しく能力を発動させる様子を眺めながら、咲良はそう言い放つ。
諒真と協力したとしても今の状態でこの化け物じみた男を殺すことはできないと判断したのだろう。
「ククク、ならばどうする? 俺はお前らを逃がすつもりはないぞ?」
「もちろん逃がしてもらいます」
そう宣言すると咲良は自身の周りに浮かばせていた水の塊を一気に水蒸気へと変化させる。
急激に気体へと変換されたソレは濃霧となって辺り一帯の視界を埋め尽くす。
「……チッ!」
男が慌てて右腕に握りしめた日本刀で空を切るも能力によって生み出された霧は些かも晴れる気配はない。
「諒真さん、今です。逃げますよ」
咲良はそう言うやいなや諒真の腕を掴み走り出す。
「ククク、ならば仕方ない。時間が必要だというのなら少しばかりは待ってやろう。だが、一日だけだ。明日の夜にここの校庭にやって来い。やってこない場合はここの生徒を一人ずつ切り刻む。……まあ、己の身だけが可愛ければそのまま逃げだしてもいいがな。全員殺した後はお前らを探し出して殺してやるがな」
男の宣言を聞きながら諒真と咲良は全速力で離脱する。
咲良がその場から離れたことによって能力で生み出された濃霧は徐々に晴れてゆく。
もちろん辺りが見通せる状況になったその時には咲良と諒真の姿は跡形もなく消えていた。
「そうだ、それでこそ殺しがいがある。……そしてまだまだでもある。俺を殺したければもっと、もっと強くなれ。そうしたらそのお前たちを殺し、俺は快楽の絶頂に導かれるだろう。クククク、ハーッハッハッハッ!」
日が沈み、暗闇に飲み込まれる校舎の片隅で男は悪魔のように笑い続ける。
咲良の言葉に諒真は思わず口を閉じてしまう。
男として女に守られるという状況には納得のいかないものがある。
それでも、初めてできた後輩を守りたいという咲良の言い分には理解できるものがあったのだ。
「ククク、いい話だなぁ。もちろん、俺には理解できんし興味もないがなぁ」
ゆらり、と体勢を立て直した男はニヤニヤと笑みを浮かべつつ話に割って入る。
つられるように咲良も男に対して構え直す。
戦闘を再開しようとする二人とは違い、諒真だけはその場で呆然としてしまった。
咲良の言い分は理解できる。諒真が同じ立場だったら同じように後輩を命がけで守るだろう。
理解はできるが、それでも納得はできない。
諒真にだって自尊心があるのだ。男としてのものと人としてのものが。
明らかに自分よりも強いとは言っても同い年の女の子に守られているという事実は男としての自尊心を傷つける。
そしてなにより、蘇って生き延びてまですることがただ守られているだけというのは人としてダメな気がする。
ゆえに……だからこそ、諒真自身が取るべき選択肢はただ一つだ。
「うおおおおおおっ!」
化け物のようにニヤニヤと笑う男に対して全力の右ストレートを叩き込む。
もちろんその攻撃は相手にかすりもせず両手に握られた得物で軽くかわされる。
ただし、諒真の攻撃は男に対して何のダメージも与えない代わりに両手に握られた二本の得物を打ち砕く。
「諒真さんっ。ここは私が戦いますから諒真さんは下がっていてください」
「芦沢さん。……・芦沢さんは俺のことを命がけで守ってくれるんだよね?」
もう一度だけ、諒真は咲良に対して確認をする。
「……はい、私の命をかけて諒真さんを守ります」
「そうだよね。俺がもしこの男とまともに戦ったらまず間違いなく殺される。それこそ最初に殺された時のように……」
諒真はかみしめるように言う。
それこそが間違えようない事実。
まともに戦ったこともない、誰かを傷つけた経験もない諒真にとってこの化け物のような男を相手にするのは荷が勝ちすぎる。
「……そうですね、考えたくはないことですが今の諒真さんでは殺されてしまうでしょう。……だから」
「だから……、そう。だから芦沢さんは俺のことを守ってくれ」
諒真が口に出したのは今までとは真逆の言葉。
どうして自分を守るのか、と問い詰めていた今までと違い自分を守ってくれと頼む。
だからこそ次に出すのは覚悟を決めた言葉なのだ。
「その代わり……その代わりに俺は芦沢さんのことを命をかけて守るよ」
「……それは」
「俺じゃあ力不足かもしれないけれど、それでもそうしたいんだ。……ダメかな?」
「……ダメなんかじゃ……ダメなんかじゃないです」
一瞬迷った咲良ではあったが、諒真の提案を了承する。
それが本心からのものか、それとも押し問答している余裕がないからなのかは本人にしかわからないが。
「……最高だな、お前らは。要するに二人まとめて俺を殺しに来てくれるわけだ。……・ならば、こちらとしても二人まとめて殺すしかないじゃあ無いか」
咲良と諒真のやり取りを悠長に眺めながら話しかける男。
その姿からはまるで危機感を感じ取れず、自分を殺しにくる人間を心待ちにしているかのような表情をしている。
「お前を殺すわけじゃない。芦沢さんを守るってだけだ」
「お前の方こそよくわかっていないようだな。俺からそこの小娘を守るってことは、俺を殺すしかないんだよ。殺されない限り俺は何度だってお前らを殺しに現れるだろう」
表情は笑っているはずなのにその瞳には冗談を言っている色は見て取れなかった。
殺されない限り何度だって付け狙う、その言葉に嘘はないのだろう。
「でしたら、私があなたを殺します。二度と諒真さんを突け狙うことのできないように」
咲良は高々と宣言する。
「いいぞ、その調子だ。それでこそ俺の求める獲物だ」
男は咲良の宣言に愉悦の表情を浮かべつつ、右手に長大な日本刀を出現させる。
取り回しやすさよりも破壊力を求めたのか、新しく出現したその武器は狭い廊下では扱いにくそうだ。
「ですが、今ここであなたを殺すのはいささか難しいようです」
男が新しく能力を発動させる様子を眺めながら、咲良はそう言い放つ。
諒真と協力したとしても今の状態でこの化け物じみた男を殺すことはできないと判断したのだろう。
「ククク、ならばどうする? 俺はお前らを逃がすつもりはないぞ?」
「もちろん逃がしてもらいます」
そう宣言すると咲良は自身の周りに浮かばせていた水の塊を一気に水蒸気へと変化させる。
急激に気体へと変換されたソレは濃霧となって辺り一帯の視界を埋め尽くす。
「……チッ!」
男が慌てて右腕に握りしめた日本刀で空を切るも能力によって生み出された霧は些かも晴れる気配はない。
「諒真さん、今です。逃げますよ」
咲良はそう言うやいなや諒真の腕を掴み走り出す。
「ククク、ならば仕方ない。時間が必要だというのなら少しばかりは待ってやろう。だが、一日だけだ。明日の夜にここの校庭にやって来い。やってこない場合はここの生徒を一人ずつ切り刻む。……まあ、己の身だけが可愛ければそのまま逃げだしてもいいがな。全員殺した後はお前らを探し出して殺してやるがな」
男の宣言を聞きながら諒真と咲良は全速力で離脱する。
咲良がその場から離れたことによって能力で生み出された濃霧は徐々に晴れてゆく。
もちろん辺りが見通せる状況になったその時には咲良と諒真の姿は跡形もなく消えていた。
「そうだ、それでこそ殺しがいがある。……そしてまだまだでもある。俺を殺したければもっと、もっと強くなれ。そうしたらそのお前たちを殺し、俺は快楽の絶頂に導かれるだろう。クククク、ハーッハッハッハッ!」
日が沈み、暗闇に飲み込まれる校舎の片隅で男は悪魔のように笑い続ける。
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