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不調
しおりを挟む「ノアの調子はどうだ」
「まだ自室に篭られており、大丈夫、とのことですが……」
「そうか」
昼食の途中から、どこかノアの様子がおかしかった。
あんなに楽しみにしていたカレーを、時間をかけて食べ切ったかと思えば、顔色を悪くして部屋にすぐ戻っていった。
夕飯の準備ができて呼びにいけば、今日はもう食欲がない、と断られてしまった。
体調が悪いんだろう。薬を用意したいが、部屋から出てきてくれる気配はない。
1人で落ち着きたい時もあるだろうし、今はそっとしておくべきか。最近は色々あって、ストレスが溜まっていたんだろう。
すぐに良くなるといいが。
「ぅ゛……」
気持ち悪さがなくならない。
あれから3日。
メイドさんが粥を毎食持ってきてくれるけど、それすらなかなか喉を通らなかった。
慣れないことばかりだったし、ストレスかもしれない。
そう思ったけど、それにしては長引きすぎて、体力が削れていく。
1週間くらいして、思い当たることが一つだけあって、冷や汗が背中を伝った。
長期の体調不良。
一度どこかで、見たことがある。
それは、“妊娠”、だと。
「……っぅ、うそでしょ……っ」
なんで。確かに妊娠する男性は多くいると聞くけど、まず妊娠してしまうようなことも、していないのに。どうして?
もし、もしこれが、本当に妊娠なんだとしたら。
この関係は、終わる……?
そんな……っ
こわくなって、身を抱いた。
せっかく、ようやく打ち解けあえるようになってきて、会話できるようになって、知っていることも増えたのに。順調に仲良くなれていたのに、こんなこと。
子どもなんて出来てしまったことがバレたら、捨てられる。怒られる。
どうしよう、どうしたらバレないだろう。
本当にお腹の中に子がいるんだとしたら、なくす方法はあるんだろうか。
子なんて邪魔で、いらない存在。
バレてしまえば、捨てられる。誰も幸せになれない。
自分がそうだったから、よく知っている。
長く続く体調不良は、俺のもしかしてを、だんだんおそらくに変えていく。
毎朝起きるのが嫌だった。どうか夢であって欲しかった。毎日願うのに、体の重さは無くならない。
毎晩エリクスが様子を見にきてくれていたけど、合わせる顔がなくなって、それももう断ってしまった。
いなくなれ、いなくなれ。
常に願っては、目を覚まして、変わらない体に涙を溢す。
どうして妊娠しちゃったんだろう。分からない。とことん神様は俺のことを嫌いなのかもしれない。
「……っ」
楽しかったのに。幸せだと思えたのに。
時間の問題だ。そのうちバレて、この生活は終わってしまうんだ。
エリクスの、俺に向けるあの瞳も、手の温かさも、名を呼ぶ声も、もう知れない。
涙が目の端から、頬を滑っていった。
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