ほどけるくらい、愛して

上原緒弥

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本編

後編(02)※

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 シーツをぎゅっと握り締めて、彩瑛は湧き上がってくる熱を逃がそうとする。だが、ギルベルトの指が畳みかけるように花芽を擦ってくるので、逃げることはできなかった。

「ぁ、や、あっ、ああ!」

 花芽を摘まれた瞬間、湧き上がった熱が一気に弾けて、彩瑛の目の前が真っ白に染まった。びくびくと体が震える。
 そんな彩瑛に口付けを落とし、ギルベルトは溢れた蜜を指先に絡めながら、ゆっくりと入り口へと指を一本、差し込んだ。

「んっ……」

 内壁を割るように、ゆっくり奥へと納めていく。
 そして根本まで納まったことを指先に絡まる熱で確認すると、ギルベルトは指を動かした。
 同時に赤く尖ったふくらみの先端にくちびるを寄せた。控えめに口付けて、それから彩瑛の様子を伺いながら、胸を愛撫する。
 先端を甘噛みすると、彩瑛の口から甘い悲鳴が漏れた。

「ぁ、んん、あぁっ」

 彩瑛の淫らな声とともに、部屋には淫靡な水音が反響した。
 いつの間にか、蜜口を責める指が二本に増えていた。ギルベルトは狭い彩瑛の中を、丹念に押し広げていく。
 彩瑛も最初こそは異物感を大きく感じていたが、触れられるにつれてその感覚にも少しずつ慣れてきている。寧ろギルベルトのあの細くて骨張った指がかき回しているのだということに喜びを感じてしまい、彩瑛はいたたまれない。

「あっ、ぁんっ」

 胸と中と、両方を一緒に責められ、ぞくぞくと沸き上がる悦楽から逃げられない。
 けれどお腹の奥の疼きは止められなかった。

「ぎ、るぅ……」

 思わず強請るような声で、彼の名前を呼んでしまう。一瞬ギルベルトの動きが止まり、それから蜜口を埋めていた指が引き抜かれた。
 引き抜かれたギルベルトの指には、溢れた蜜が絡みついている。彼はそれを躊躇うことなく舐め取った。
 そしてとろりとした瞳で見上げてくる彩瑛のスカートをたくし上げると、裂けて使い物にならなくなったストッキングと下着を、一気に引き下ろした。
 彩瑛が我に返るころには、すでにそれらは取り払われ、床に落とされてしまっていた。

「……痛かったら背中に爪を立ててくれてもいいし、肩を噛んでもいいから」

 自身の履いているスラックスの留め具に手を掛けながら、ギルベルトがそう囁く。僅かに掠れたその声に胸がきゅんとして、彩瑛は目を閉じてこくこくと頷くのが精一杯だった。

「んんッ」

 片足を持ち上げられ、露わになった秘部に、熱いものが添えられる。
 そして息を飲む間もなく、先ほどまでギルベルトの指が納められていた蜜口に切っ先が押し付けられた。
 十分に濡れ、丹念に広げられたとは言え、初めて受け入れる場所は狭い。
 雄芯で蜜口を押し広げられるたびに、鈍い痛みが走る。溢れる涙が目尻を伝って落ちていった。

「サエ……」
「だい、じょうぶ……ですから」

 痛みを逸らしてあげたくて、ギルベルトは僅かに歪むその顔に口付けを落とす。
 ほんの少しだけ彩瑛の表情が緩み、キスで気を紛らわせながら、ギルベルトは腰を進めていった。
 痛みで彩瑛が声を上げるたびに、変わってあげたいという想いと、この痛みを与えているのが自分だという歓喜がギルベルトの胸の中で渦巻く。
 ──ギルベルトに恋愛感情を抱かせてしまった時点で、彩瑛に逃げ道なんて存在していなかった。

「は、ぁ……は……んん……」

 苦しそうに呼吸を繰り返し、しがみついてくる柔らかい体を抱き寄せる。
 狭くて熱い中は、ギルベルトの雄をきゅうきゅうと締め付ける。
 顔を覗き込むと、彩瑛は苦痛で表情を歪めてはいたけれど、その瞳にはどこか恍惚とした色が見えた。
 頬にそっと指先を滑らせ、僅かに赤く色付いているくちびるを親指で撫でる。
 柔らかくて、触れると甘い。菓子はあまり好まないが、これならいくらでも食べられそうだ。
 そんなことを考えていると、不意に彩瑛のくちびるがちゅ、とギルベルトの親指にキスをした。

「ん……む……」

 そして控えめに、そっとギルベルトの指に舌を這わせた。ちろちろと、彼の様子を伺いながら、指の腹を舐める。きっと本人は意図してはいなかったのだろう。見上げてくる視線は、ギルベルトから見れば上目遣いになるような形だった。
 ──その仕草に、今まで必死に保っていたギルベルトの理性の箍が外れた。

「……煽ったのは、サエだからね」

 琥珀色と紅色の瞳が、ぎらぎらとした光を宿して彩瑛を見下ろしてくる。

「ひっ……ぁ、ああッ」

 腰を引かれて、納まっていたものが抜けていく。けれど完全に抜けることはなく、再び押し込められる。
 痛いし、苦しい。指で慣らされたとは言え、それとは比にはならない異物感が、下腹部を襲う。
 ギルベルトの背中に回した腕の力が強くなる。苦しさから逃れたい一心で、指先を手のひらに食い込ませて、必死にしがみついた。

「んっ……ふあ……あっ、ああ」
「っ爪立てていいよって、言ったよね。──立てて」
「っや……傷に、なっちゃ……っ」
「そのときは、サエが薬塗ってくれる?」
「できたら、塗るけど、ぉ……あっ、ゃあ……だ、め……ッ」

 痛みと苦しみばかりだったのに、むずむずとした感覚が生まれてきて、彩瑛は動揺する。
 その間にもギルベルトは動きを止めてはくれない。気付けばギルベルトの背中に爪を立てるように、しがみついていた。シャツ越しに、彼の体の熱さが伝わってくる。

「あ……ああっ……」
「サエの中、熱くて、狭くて……気持ちいい」
「そ、ゆこと……言わない、でぇ……っ」

 ギルベルトの口から出た卑猥な言葉に、思わずお腹の奥がきゅんとする。
 ベッドが軋む音も、結合部から聞こえる水音も、くっついている体から伝わる熱も、全部に体が反応してしまう。

「ぁ、んっ……あっぁあっ」

 ギルベルトの雄芯が彩瑛の奥を突き上げる。
 苦しいのに、胸はいっぱいに満たされていた。

「ぁあ……あんっ……んっ、ギル、キスして欲し、の」

 ギルベルトの欲情に塗れた瞳と目が合う。口付けを強請ると、僅かに頬を緩めてキスをしてくれる。

「んっ……んん、ギル……すき……」

 一度も言っていなかった想いを口にして、今度は彩瑛の方から口付ける。くっつけるだけの、拙いキス。

「ひぁっ……ぁああっ!」

 だが、触れ合わせたくちびるに満足して離れようとしたとき、ギルベルトが引いていた雄芯を彩瑛の最奥へと突き立てた。

「そういう可愛いことするの、反則……っ」
「あっ、ああっ、ぁんっ」

 先ほどよりもずっと激しい抽送に何も考えられなくなる。最奥を抉られるたびに、体が震えた。声が溢れて、止まらなくなる。

「あんっ、あっ、ゃあ!」

 先ほど花芽で達せられたときよりも大きな波が湧き上がってくる。

「っや……も、だめ、ぇ……っぁ、あ──ッ」
「……っ」

 湧き上がる熱に抗えず、彩瑛は体を震わせ、達した。
 内壁がギルベルトの雄芯を締め付けてくる。その誘惑に従って、最奥に白濁を吐き出した。

 ──このまま、孕んでしまえばいいのに。
 そんな考えが頭に浮かんだけれど、見上げてくる彩瑛のとろりとした瞳に、まだいいかと考えを改める。
 受け入れてくれなかったのなら、それも視野に入れていたが、彩瑛はギルベルトのことを受け入れてくれた。なら、まだしばらくはふたりでいたい。

「ギ、ル……?」

 首を傾げて名前を呼んでくる愛しい人の額にそっと口付けを落として、まずはお風呂と避妊薬かなとギルベルトは考えを巡らせた。
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