ほどけるくらい、愛して

上原緒弥

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その後

中編※

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 小さな声だったのに、ギルベルトはきちんと言葉を拾ってくれたようだ。色彩の違う彼の瞳が見開かれ、そして彼はその目を細めて、まるで眩しいものでも見るかのように彩瑛を見つめた。
 彩瑛の頭を支えていた手が離れ、再び腰に回される。視線を落として、ギルベルトは彼女の肩口に顔を埋めてきた。

「……一生、大切にする」
「はい……」
「次勝手にいなくなったら、屋敷に閉じ込めて二度と出られなくするから」
「え」
「嘘だよ。……半分だけね」

 そう言われたかと思ったら、肩口にキスを落とされて、彩瑛の体がぴくりと震えた。

「ぁ……」

 触れて離れて、そしてまた、くちびるが落ちてくる。
 甘えるような声が出てしまって、彩瑛は恥ずかしくて空いている方の手で口を塞いだ。
 先ほどまでの行為の名残なのか、それとも浴室という環境の所為なのか、もしくは両方か。過敏になった体は、簡単に反応してしまう。

「んっ……ひっ……え……?」

 思わず逃げようとして身を捩ると、力の抜けた体をそのまま抱えられ、ひっくり返されてしまった。
 驚いて、口元を押さえていた手が外れてしまう。そしてその手は、空いていたもう片方の手とともにギルベルトの肩を掴んだ。
 正面から腰を抱かれて、彩瑛の体はギルベルトの胸元に預けられる。
 どうしていきなり体勢を変えたのか、問いかけようとしてギルベルトの方を見たら、その色の違うふたつの瞳にぎらぎらとした熱を孕ませ、彩瑛を見つめていた。

「──っん、んんっ!」

 何も言えずに固まっていると、今度は正面から、くちびるを奪われた。伸びてきた手に後頭部をしっかりと押さえられる。
 まるで食べられているような錯覚すら覚える荒々しいキスに、彩瑛は翻弄された。
 ギルベルトの舌が潜り込んできて、彩瑛の舌を攫っていく。抵抗する間もなく絡め取られて撫でられると、背中が震える。

「んっ……ん、ぁ……」

 悩ましげな甘い声が彩瑛のくちびるから溢れて、反響する。
 銀の糸がふたりを繋ぎ、そしてぷつりと切れた。

「は……ぁ……」

 彩瑛は必死に酸素を取り込もうと呼吸を繰り返すけれど、ギルベルトはその間にも攻めの手を緩めようとはしなかった。
 くちびるが、首筋を伝って下りていく。胸元に辿り着くと、そのふくらみの上にキスを落とされた。ちゅ、ちゅ、とリップ音が響いて、彩瑛の羞恥を煽る。

「っあ! や、あぁっ」

 皮膚に触れていたくちびるが赤く色づいた先端に吸い付いてきて、彩瑛は我慢できずに声を上げた。
 熱く濡れたもので胸の頂を包み込まれると、体が震えるのを止められない。

「尖ってきた。……真っ赤になって、可愛い胸」
「っギルが……触る、から……ぁっ」

 ギルベルトはくちびるで吸い上げながら、舌で先端を愛撫する。
 彩瑛は彼の言葉に真っ赤になりながら首を横に振るけれど、胸先が固くしこり、そこから快楽を拾っていることは確かだった。
 反論はしてみたが、ギルベルトは楽しげに「そうだね」と頷いて。
 赤く尖った先端に歯を立てた。

「ひ、ぁあっ!」

 齧られたのは胸なのに、背中にびりびりと電流が走った。胸の頂をちろちろと舌で舐め上げられたと思ったら甘く噛まれて、背中がしなる。
 いつの間にか彩瑛の後頭部を押さえていた手は離れ、まだ触れられていなかった方の胸を包み込んだ。ギルベルトの骨張った指が肌に食い込み、やわやわと揉み上げられる。
 爪先で先端を引っかかれて、僅かな痛みとともに気持ちよさが沸き上がった。
 片方は手のひらでふくらみを揉まれて、もう片方は口で愛撫される。ギルベルトが胸元に顔を埋めている──その淫靡さを明かりの点いた今の状況では直視できなくて、彩瑛は顔を逸らした。

「ふぁ……ん……んんっ」

 下腹部が疼いて、一度は落ち着いた熱がじわじわと呼び起こされる。

「──サエ」

 ギルベルトに名前を呼ばれる。
 恐る恐る胸元へと視線を向けると、上目遣いになったギルベルトと目が合った。瞳から欲情の色が見て取れて、胸がどきりと高鳴る。
 顔が近付いてきたので瞳を伏せたら、くちびるを奪われた。
 ──キス、気持ち、い……
 押し付けられたくちびるは熱い。ちゅ、とリップ音を立てて、何度も吸われる。
 口付けの合間に、胸元を愛撫していた手は下りていて、気付いたら太股に触れられていた。
 内側をするりと、ギルベルトの指先が撫でる。

「っぁ……や、ギル、待って……っ」
「わかってる、中には挿れないから」
「ん……ひぅ……ぁあっ」

 先ほどギルベルトを初めて受け入れたところは、まだ違和感がある。痛みもないとは言えない。
 そのことを訴えてみたら、ギルベルトは頷いて、額にキスをくれた。
 だから安心したのだけれど、どうしてか彼の指は足の付け根に潜り込んでくる。動揺する彩瑛を後目に、その指先は割れ目をなぞってきた。

「お湯、じゃないね。厭らしい蜜が溢れて、濡れてるよ、サエ」
「っや……っ……ぁ、ああっ」

 耳元で、掠れた声に囁かれる。否定しようと首を振ったけれど、敏感な花芽をつつかれて言葉が途切れてしまった。
 蜜口には触れずに、ギルベルトの指は愛液で濡れた割れ目を上下してくる。
 時折花芽を掠るように撫でられて、彩瑛の腰が揺れてしまう。快楽をやり過ごそうとするけれど、波のように襲ってくるので、彩瑛はギルベルトに必死にしがみつくのがやっとだ。

「あ……ふぁっ……」

 ギルベルトの肩を掴む指先が震える。目尻を生理的な涙が流れて、湯の中に落ちて溶けた。

「ひ……あ……んっんんっ」

 割れ目をなぞっていた指先が集中的に花芽を擦る。敏感になったそこを擦り立てられたら、高ぶっていた熱が弾けて、彩瑛の視界が白く染まった。
 体勢を保っていられなくて、彩瑛の体はギルベルトの胸元に崩れ落ちる。

「はぁ……んっ……は……」

 疲労感が一気に襲ってくる。
 荒い呼吸を繰り返しながら熱が落ち着くのを待とうとしたのだけれど、より密着したことで下半身に当たる熱くて硬いものを感じて、彩瑛は心臓が高鳴るのと同時に、お腹の奥が疼いたのがわかった。
 何とか密着しないようにと腰を引こうとするが、ギルベルトに腰を抱かれていて動けない。
 様子を窺うように彼を見上げると、余裕のない、情欲の浮かんだ瞳を向けられた。

「ギ、ル……」
「挿れないよ。……でも少し苦しいから、サエのここ、貸してくれる?」

 ギルベルトに太股の内側を撫でられる。一瞬ぽかんとして、それからその意味を理解して、顔が熱くなってくる。
 けれど苦しそうなギルベルトの表情に、彩瑛は戸惑いながらも頷く。
 僅かに頬を緩めたギルベルトにキスをされる。そして浴槽の縁に手を掛けると、彼は彩瑛を片腕で抱えて立ち上がった。

「後ろ向いて、壁に手、突いて」
「ん……」

 腰に回っていた腕の力が緩む。彩瑛は体を反転させ、ギルベルトに取られた手を誘われるままに壁に伸ばした。
 壁に手を突いた彩瑛の背中に、ギルベルトが覆い被さってくる。
 臀部を突き出すように腰を緩く掴まれ、太股に熱くて硬いものを押し付けられた。
 それは、ゆっくりと足の間に割り入ってくる。

「ぁっ……あっんんっ」

 ギルベルトが腰を揺らすと、雄芯が蜜に濡れた割れ目をなぞる。先端で花芽を擦られて、彩瑛は背中を震わせた。

「ふ、ぁっ……あっ……」

 蜜口から溢れてきた蜜が、くちゅくちゅと淫らな水音を立てた。

「は、んんっ……ひゃうっ」

 耳朶に、生温かいものが這ってきた。ギルベルトの舌が耳殻を沿って、彩瑛の耳を舐める。耳を甘噛みされて、びくん、と彩瑛の体が跳ねた。

「かわいい」

 楽しげに、ギルベルトが耳元で囁いてくる。
 低く、掠れた声が色っぽくて、心臓がどくんと一際大きく高鳴った。

「ん……ぁあっ……」

 臀部を掴んでいた手が片方外されたと思ったら、密やかに揺れる胸を揉み上げられた。
 涙でぼやける視界に、ギルベルトの手によって形の変わった胸が見える。

「っひ……あっ……あんんっ」

 赤くなった突起を摘まれて、甘ったるい声が浴室中に響いた。
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