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間章 風邪ひき師匠
第88話 お菓子、食べてもいい?
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「ふああ」
そろそろ夕飯を作ろうとしていた頃。寝ぼけ眼の師匠が、欠伸をしながら部屋から出て来ました。
「あれ? 師匠、もう起きて大丈夫なんですか?」
「うん。だいぶ体調良くなった」
「それはよかったです」
どうやら、朝に飲んだ薬が効いてくれたようですね。まあ、念のため、夕飯を食べた後にも薬を飲んでもらうとしましょう。いや、また抵抗されるのも嫌ですし、こっそり飲み物か料理に混ぜて……。
「弟子君、何か悪いこと考えてない?」
気がつくと、そこには、ジト目を向ける師匠の姿が。
「あ、あはは。ソンナコトナイデスヨ」
僕は、急いで師匠から顔をそらしました。まさか、師匠に疑われてしまうとは。そんなに顔に出ていたのでしょうか。
「……まあ、いっか。ところで、弟子君」
「何ですか?」
「…………」
「……師匠?」
一体どうしたというのでしょう。師匠は、僕に何かを言いかけた後、キュッとその口を閉じてしまいました。まるで、それを言うべきかどうか迷っているかのよう。
僕は、どこか不安な気持ちにさいなまれながら、ただ黙って師匠の言葉を待ちました。
「…………」
「…………」
壁にかけてある時計の針が、カチカチと優しい音を響かせます。十秒、二十秒、三十秒。ゆっくりと確実に流れる時間。ですが、僕と師匠の間の時間だけ、ピタリと止まってしまったかのような錯覚を覚えます。
その時間が動き出したのは、居心地の悪さに耐えかねた僕が、口を開きかけた時でした。
「弟子君」
「は、はい」
「お菓子」
「……へ?」
「お菓子、食べてもいい?」
その言葉に、僕の体から自然と力が抜けていきます。一体何を言われるのかと思えば。まさか、お菓子を食べていいかどうかの確認とは。相変わらず、風邪をひいても、師匠は師匠ですね。
「はあ……夕飯の後ならいいですよ」
「やった!」
両手を上げて子供のように笑う師匠。そんな師匠を見ながら、僕は、自分の心が温かくなっていくのを感じました。
ちなみに、この翌日、今度は僕が風邪をひいてしまうのですが……。なぜだか記憶が曖昧なんですよね。師匠の手料理を食べたところまでは覚えているのですけれど……。
そろそろ夕飯を作ろうとしていた頃。寝ぼけ眼の師匠が、欠伸をしながら部屋から出て来ました。
「あれ? 師匠、もう起きて大丈夫なんですか?」
「うん。だいぶ体調良くなった」
「それはよかったです」
どうやら、朝に飲んだ薬が効いてくれたようですね。まあ、念のため、夕飯を食べた後にも薬を飲んでもらうとしましょう。いや、また抵抗されるのも嫌ですし、こっそり飲み物か料理に混ぜて……。
「弟子君、何か悪いこと考えてない?」
気がつくと、そこには、ジト目を向ける師匠の姿が。
「あ、あはは。ソンナコトナイデスヨ」
僕は、急いで師匠から顔をそらしました。まさか、師匠に疑われてしまうとは。そんなに顔に出ていたのでしょうか。
「……まあ、いっか。ところで、弟子君」
「何ですか?」
「…………」
「……師匠?」
一体どうしたというのでしょう。師匠は、僕に何かを言いかけた後、キュッとその口を閉じてしまいました。まるで、それを言うべきかどうか迷っているかのよう。
僕は、どこか不安な気持ちにさいなまれながら、ただ黙って師匠の言葉を待ちました。
「…………」
「…………」
壁にかけてある時計の針が、カチカチと優しい音を響かせます。十秒、二十秒、三十秒。ゆっくりと確実に流れる時間。ですが、僕と師匠の間の時間だけ、ピタリと止まってしまったかのような錯覚を覚えます。
その時間が動き出したのは、居心地の悪さに耐えかねた僕が、口を開きかけた時でした。
「弟子君」
「は、はい」
「お菓子」
「……へ?」
「お菓子、食べてもいい?」
その言葉に、僕の体から自然と力が抜けていきます。一体何を言われるのかと思えば。まさか、お菓子を食べていいかどうかの確認とは。相変わらず、風邪をひいても、師匠は師匠ですね。
「はあ……夕飯の後ならいいですよ」
「やった!」
両手を上げて子供のように笑う師匠。そんな師匠を見ながら、僕は、自分の心が温かくなっていくのを感じました。
ちなみに、この翌日、今度は僕が風邪をひいてしまうのですが……。なぜだか記憶が曖昧なんですよね。師匠の手料理を食べたところまでは覚えているのですけれど……。
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