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14話
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7月の東京は梅雨も終わりが近づき、晴れた日は太陽の日差しがもうかなりきつくなった。朝の7時でもそこまで涼しくはない。
今日は久しぶりの晴れで通学の自転車がほどよく気持ちいい。
紫陽花は盛りを過ぎてしまったけど、これから夏が始まる。
先月から少し早めに登校するようにしている。朝練のためだ。
咲来は超夜型らしく、絶対に来ないって言っていた。サンドバッグを蹴るだけなら一人でもできるから、咲来に教えてもらったことを復習する時間にしている。
私も朝は苦手だけど次の試合までに少しでも練習しておきたい。そう思ったのには理由があった。
南関東大会だ。
この規模の大会になると少し広い体育館を使うので、関係者以外も会場に入れるようになる。
私は咲来と一緒に試合を観に行った。東京、神奈川、千葉、埼玉から都道府県大会でベスト4に入った16人が試合をする。ここに残っている選手は全員紛れもなく強い。
「4都県の高校生のトップ16がここにいるんだね。」
「これに勝ったら?全国?」
「そう!全国!でも全国大会に進めるのは優勝と準優勝のたった2人なの」
応える声に思わず熱が入る。
だって全国だよ?もしかしたら私たちと同じ1年生が勝ち上がって全国大会に出るかもしれないんだ。
「前田さんは中学では南関東大会も出たの?」
「うん、南関東は出たよ。でも中学と高校じゃレベルが違うよ。競技人口も格段に増えるしさ」
咲来のような他の武道経験者の転向もあるから、中学でプロレスやってたからってリードしてるわけではない。
「来年は出たいな。ここで試合したい。勝って全国に行きたい」
中学の時、私は全国には行っていない。
2年生の時に南関東大会に出たけど、前年南関東2位でその年は優勝した3年生に負けてベスト4だった。
3年生になった時は女子プロレス部のない公立中学に既に転校していて、ブロック大会にも出なかった。
「決勝で咲来と戦ってさ、2人で全国いこうよ」
「前田さんもまずは都大会の突破だし、私はデビュー戦もまだなんだよ」
「まーた、そーゆーこと言っちゃって。真面目なんだから。これが戯言にならないよう、いっぱい練習しよう」
「そうだね」
そうして始まった南関東大会で、東京の1年生は初戦敗退と2回戦敗退で、2人が早々に敗れた。
そんな中、高山美優はベスト4だった。準決勝で敗れた相手は千葉の3年生で、2年次に全国大会ベスト8だった選手らしい。
そんなトップ選手を相手に試合時間の10分で勝敗が決まらず延長戦になった。最後は3年生が執念で押し切って勝負が着いた。
その3年生は高山美優との試合で力を使い切ったのか、決勝戦はぼろぼろで準優勝だった。
自分と高山美優との差は何だろう。多分たくさんある。それならとにかく一歩でも近づけるよう目の前の課題をこなそうと思った。できることを一つずつやるしかない。そのための朝練だ。
「蹴ったらすぐ元の姿勢、軸をぶらさないように、モーションが大きくならないように…」
咲来に教えてもらったことを意識しながら繰り返しサンドバッグを蹴りつける。来年あのリングに立つために。立つだけじゃなくて、全国行きの切符を掴めるように。一発一発に思いを込める。
初夏の風が吹き込む格技室に、バシっと乾いた音が響いた。
今日は久しぶりの晴れで通学の自転車がほどよく気持ちいい。
紫陽花は盛りを過ぎてしまったけど、これから夏が始まる。
先月から少し早めに登校するようにしている。朝練のためだ。
咲来は超夜型らしく、絶対に来ないって言っていた。サンドバッグを蹴るだけなら一人でもできるから、咲来に教えてもらったことを復習する時間にしている。
私も朝は苦手だけど次の試合までに少しでも練習しておきたい。そう思ったのには理由があった。
南関東大会だ。
この規模の大会になると少し広い体育館を使うので、関係者以外も会場に入れるようになる。
私は咲来と一緒に試合を観に行った。東京、神奈川、千葉、埼玉から都道府県大会でベスト4に入った16人が試合をする。ここに残っている選手は全員紛れもなく強い。
「4都県の高校生のトップ16がここにいるんだね。」
「これに勝ったら?全国?」
「そう!全国!でも全国大会に進めるのは優勝と準優勝のたった2人なの」
応える声に思わず熱が入る。
だって全国だよ?もしかしたら私たちと同じ1年生が勝ち上がって全国大会に出るかもしれないんだ。
「前田さんは中学では南関東大会も出たの?」
「うん、南関東は出たよ。でも中学と高校じゃレベルが違うよ。競技人口も格段に増えるしさ」
咲来のような他の武道経験者の転向もあるから、中学でプロレスやってたからってリードしてるわけではない。
「来年は出たいな。ここで試合したい。勝って全国に行きたい」
中学の時、私は全国には行っていない。
2年生の時に南関東大会に出たけど、前年南関東2位でその年は優勝した3年生に負けてベスト4だった。
3年生になった時は女子プロレス部のない公立中学に既に転校していて、ブロック大会にも出なかった。
「決勝で咲来と戦ってさ、2人で全国いこうよ」
「前田さんもまずは都大会の突破だし、私はデビュー戦もまだなんだよ」
「まーた、そーゆーこと言っちゃって。真面目なんだから。これが戯言にならないよう、いっぱい練習しよう」
「そうだね」
そうして始まった南関東大会で、東京の1年生は初戦敗退と2回戦敗退で、2人が早々に敗れた。
そんな中、高山美優はベスト4だった。準決勝で敗れた相手は千葉の3年生で、2年次に全国大会ベスト8だった選手らしい。
そんなトップ選手を相手に試合時間の10分で勝敗が決まらず延長戦になった。最後は3年生が執念で押し切って勝負が着いた。
その3年生は高山美優との試合で力を使い切ったのか、決勝戦はぼろぼろで準優勝だった。
自分と高山美優との差は何だろう。多分たくさんある。それならとにかく一歩でも近づけるよう目の前の課題をこなそうと思った。できることを一つずつやるしかない。そのための朝練だ。
「蹴ったらすぐ元の姿勢、軸をぶらさないように、モーションが大きくならないように…」
咲来に教えてもらったことを意識しながら繰り返しサンドバッグを蹴りつける。来年あのリングに立つために。立つだけじゃなくて、全国行きの切符を掴めるように。一発一発に思いを込める。
初夏の風が吹き込む格技室に、バシっと乾いた音が響いた。
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