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15話☆オフ
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人が多すぎる。新大久保駅に着いたけど人混みで改札まで進まめない。
前来たのは受験終わりの春休みで平日だったけど、それでも大学生らしき人たちで賑わっていた。
ようやく改札口に辿り着き、待ち合わせをしてる群衆からあかねの姿を探していると、隣にいる咲来があっと声をあげて指差した。
「あ、ひなー!さらりん!おつかれー!」
ふわふわした可愛らしい服装に身を包んだあかねが私たちを手招いた。
ばっちりメイクもしていて、小柄で童顔だけどぱっと見では大学生と言われてもわからない。
「ごめんね、待った?」
「ううん、一本前ので着いたとこ。さらりんも来てくれたんだーありがとー」
「こちらこそ。小山ちゃんと遊びに行くの初めてだね」
昨日の練習終わりにさらりんこと大塚咲来にこの話をすると意外にも前向きで
「うん。行く。ありがとう」
と言ってくれた。
あかねと咲来は体育の授業か、私と話してる時に少し話すくらいの仲だと思っていたので驚いた。
「お腹すいたー。あかね早く行こう!」
「はいはい行こう行こう」
ゆっくりとした人の流れに乗って私たちは歩き出した。
メイン通りには化粧品の他にも食べ歩きできるものを売ってるお店がたくさんある。クラスの友達も食べに行ったって言ってたっけ。
「この曲、いま私めっちゃ聴いてるの!ほら、この前動画見せた韓国のグループの!」
「あー、言ってたやつね。ドラマの主題歌だっけ?」
この通りではその時流行ってる曲があちこちで流れているらしい。そんな中をあかねはスマホも見ずに迷わず歩いて行く。
メイン通りから一つ入った通りをさらに進んだところにある店に着くと、あかねが予約してくれていたのか中に通してもらった。
「小山ちゃんすごい慣れててなんかかっこいいね」
「え、そー?ちょっと大人っぽかった?」
咲来の言葉にあかねは上機嫌だ。確かに私もお店に予約して入ったことがないから、何だかちょっと緊張する。
あかねは料理の目星も付けてて、私と咲来は訳がわからないまま注文も全部お任せしてしまった。
「そういえば、あかねと咲来って絡みあったんだ」
「え、そーよ。さらりんとは夜な夜な楽しくやってるわ」
意味深な表情を浮かべながら言うけどその隣の咲来がそっと補足する。
「よく一緒にゲームするの。オンラインで」
「あー、そういうこと」
「たまたまさらりんと同じゲームやってるってわかって、時々一緒にやってるんだよね」
だからこんなに仲良さげなんだ。毎日会ってる私が前田さんであかねが小山ちゃんなのがちょっと気になるんだけど。
「陽菜はさらりんとどんな話してんの?だって部活ずっと2人でしょ?」
「技のこととか、次の試合のこと、あと咲来にキックのコツ教えてもらったりしてるよ」
「もう、ほんっとプロレスバカね。華の女子高生2人いたらもっと話すことあるでしょーが」
私はやりたいことやってて楽しいから全然疑問にも思わなかったけど、まぁ健全な高校生っぽくはないのかもね。特にあかねから見ると。
「話すことって?」
「恋バナに決まってんじゃん!男の話!」
あぁ、そうだよね。私たちもう高校生なんだもんね。
でも中学は女子校だったし、公立に転校したのも3年生の時だったのであんまり馴染めなかった。あかねが同じクラスにいなかったらと思うと、ちょっと恐ろしい。
「じゃあさらりんのカレのことも知らないの?」
「えっ!?」
カレ?
彼氏?
咲来の?
いや、えっ?て言うのも失礼なんだけど。
「咲来、彼氏いるの!?誰?クラスの男子?」
「うん。いるけど、でも中学からの人だよ」
「えー!そうなんだ!何、部活の先輩とか!?」
「ううん。道場にいた同い年の人。隣の中学」
何かびっくりして意味わかんないテンションで質問攻めにしてしまった。そりゃ彼氏くらいいるよね。いい子だし、可愛いもん。
道場ってことは、日本拳法の道場か。男女一緒にしんどい練習とかしてたらお互い恋心もできてくるのかな。
てか中学の頃からもう彼氏いたのか。なんか急に咲来が大人びて見えてきた。
咲来が入部して2ヶ月くらい経つけど、私ほんとに咲来のこと知らなかったんだ。
彼氏がいることもゲームが好きなことも。咲来はとにかく蹴りが上手いからそのことばっか聞いてた。
別にプライベートを詮索しようってわけじゃないけど、チームメイトのことを何も知らない自分が情けなくなった。
「ま、練習ハードだろうし、立ち上げたばっかってのもあって忙しかったんじゃない?ゲームしながらだと結構いろんな話するけどさー。あ、陽菜の話とかもするんだよ」
そっか。あかねはもしかしたら私たちのこと心配して今日誘ってくれたのかな。おちゃらけてる様で意外と冷静に周りを見ている。妙な気遣いができるんだ。きっとお互いのことを知らなさすぎることに気付いたのだろう。
何だろうこの気持ち。あかねに対するありがとうと、咲来に対する...何だろう、ごめん?みたいな気持ちが入り混じる。
自分が練習するためだけに咲来を引き込んでしまった、みたいな。そんなつもりはなかった…とも言い切れないから。
高校に入ってから今まで必死だった。
新しい学校で周りから変な目で見られながら女子プロレスサークルを立ち上げて、一人で練習して、ようやく一人入ってくれて。思えばあっという間の一学期だった。自分のことだけで精一杯だった。
「私の話って、何話したの?」
「全然男作んないって話」
「何それ。まだ高校入ったばっかだよ?あかねはどうなのよ」
「私はこれから頑張るのー。一緒にさらりん先輩にコツ教えてもらおうよ」
「確かに!それだね!」
他愛もない話をしてると料理が運ばれてきた。女子が3人集まって食べ物も揃えば、もう話が止まることは無い。
咲来と格闘技以外の話をしたのはほぼ初めてだけど、これがまた面白かった。私たちよりちょっと大人な感じ、咲来らしい独特の雰囲気や考え方にあかねと「何それ!」と声を上げる。部活の仲間だった咲来と、ようやく友達になれた気がした。
前来たのは受験終わりの春休みで平日だったけど、それでも大学生らしき人たちで賑わっていた。
ようやく改札口に辿り着き、待ち合わせをしてる群衆からあかねの姿を探していると、隣にいる咲来があっと声をあげて指差した。
「あ、ひなー!さらりん!おつかれー!」
ふわふわした可愛らしい服装に身を包んだあかねが私たちを手招いた。
ばっちりメイクもしていて、小柄で童顔だけどぱっと見では大学生と言われてもわからない。
「ごめんね、待った?」
「ううん、一本前ので着いたとこ。さらりんも来てくれたんだーありがとー」
「こちらこそ。小山ちゃんと遊びに行くの初めてだね」
昨日の練習終わりにさらりんこと大塚咲来にこの話をすると意外にも前向きで
「うん。行く。ありがとう」
と言ってくれた。
あかねと咲来は体育の授業か、私と話してる時に少し話すくらいの仲だと思っていたので驚いた。
「お腹すいたー。あかね早く行こう!」
「はいはい行こう行こう」
ゆっくりとした人の流れに乗って私たちは歩き出した。
メイン通りには化粧品の他にも食べ歩きできるものを売ってるお店がたくさんある。クラスの友達も食べに行ったって言ってたっけ。
「この曲、いま私めっちゃ聴いてるの!ほら、この前動画見せた韓国のグループの!」
「あー、言ってたやつね。ドラマの主題歌だっけ?」
この通りではその時流行ってる曲があちこちで流れているらしい。そんな中をあかねはスマホも見ずに迷わず歩いて行く。
メイン通りから一つ入った通りをさらに進んだところにある店に着くと、あかねが予約してくれていたのか中に通してもらった。
「小山ちゃんすごい慣れててなんかかっこいいね」
「え、そー?ちょっと大人っぽかった?」
咲来の言葉にあかねは上機嫌だ。確かに私もお店に予約して入ったことがないから、何だかちょっと緊張する。
あかねは料理の目星も付けてて、私と咲来は訳がわからないまま注文も全部お任せしてしまった。
「そういえば、あかねと咲来って絡みあったんだ」
「え、そーよ。さらりんとは夜な夜な楽しくやってるわ」
意味深な表情を浮かべながら言うけどその隣の咲来がそっと補足する。
「よく一緒にゲームするの。オンラインで」
「あー、そういうこと」
「たまたまさらりんと同じゲームやってるってわかって、時々一緒にやってるんだよね」
だからこんなに仲良さげなんだ。毎日会ってる私が前田さんであかねが小山ちゃんなのがちょっと気になるんだけど。
「陽菜はさらりんとどんな話してんの?だって部活ずっと2人でしょ?」
「技のこととか、次の試合のこと、あと咲来にキックのコツ教えてもらったりしてるよ」
「もう、ほんっとプロレスバカね。華の女子高生2人いたらもっと話すことあるでしょーが」
私はやりたいことやってて楽しいから全然疑問にも思わなかったけど、まぁ健全な高校生っぽくはないのかもね。特にあかねから見ると。
「話すことって?」
「恋バナに決まってんじゃん!男の話!」
あぁ、そうだよね。私たちもう高校生なんだもんね。
でも中学は女子校だったし、公立に転校したのも3年生の時だったのであんまり馴染めなかった。あかねが同じクラスにいなかったらと思うと、ちょっと恐ろしい。
「じゃあさらりんのカレのことも知らないの?」
「えっ!?」
カレ?
彼氏?
咲来の?
いや、えっ?て言うのも失礼なんだけど。
「咲来、彼氏いるの!?誰?クラスの男子?」
「うん。いるけど、でも中学からの人だよ」
「えー!そうなんだ!何、部活の先輩とか!?」
「ううん。道場にいた同い年の人。隣の中学」
何かびっくりして意味わかんないテンションで質問攻めにしてしまった。そりゃ彼氏くらいいるよね。いい子だし、可愛いもん。
道場ってことは、日本拳法の道場か。男女一緒にしんどい練習とかしてたらお互い恋心もできてくるのかな。
てか中学の頃からもう彼氏いたのか。なんか急に咲来が大人びて見えてきた。
咲来が入部して2ヶ月くらい経つけど、私ほんとに咲来のこと知らなかったんだ。
彼氏がいることもゲームが好きなことも。咲来はとにかく蹴りが上手いからそのことばっか聞いてた。
別にプライベートを詮索しようってわけじゃないけど、チームメイトのことを何も知らない自分が情けなくなった。
「ま、練習ハードだろうし、立ち上げたばっかってのもあって忙しかったんじゃない?ゲームしながらだと結構いろんな話するけどさー。あ、陽菜の話とかもするんだよ」
そっか。あかねはもしかしたら私たちのこと心配して今日誘ってくれたのかな。おちゃらけてる様で意外と冷静に周りを見ている。妙な気遣いができるんだ。きっとお互いのことを知らなさすぎることに気付いたのだろう。
何だろうこの気持ち。あかねに対するありがとうと、咲来に対する...何だろう、ごめん?みたいな気持ちが入り混じる。
自分が練習するためだけに咲来を引き込んでしまった、みたいな。そんなつもりはなかった…とも言い切れないから。
高校に入ってから今まで必死だった。
新しい学校で周りから変な目で見られながら女子プロレスサークルを立ち上げて、一人で練習して、ようやく一人入ってくれて。思えばあっという間の一学期だった。自分のことだけで精一杯だった。
「私の話って、何話したの?」
「全然男作んないって話」
「何それ。まだ高校入ったばっかだよ?あかねはどうなのよ」
「私はこれから頑張るのー。一緒にさらりん先輩にコツ教えてもらおうよ」
「確かに!それだね!」
他愛もない話をしてると料理が運ばれてきた。女子が3人集まって食べ物も揃えば、もう話が止まることは無い。
咲来と格闘技以外の話をしたのはほぼ初めてだけど、これがまた面白かった。私たちよりちょっと大人な感じ、咲来らしい独特の雰囲気や考え方にあかねと「何それ!」と声を上げる。部活の仲間だった咲来と、ようやく友達になれた気がした。
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