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24話☆石井百合vs高山美優
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全員が1試合目を終えて2試合目が始まる。第三試合は高山美優と石井百合の対戦だ。
今回私は石井百合のセコンドに着いている。彼女の試合前は落ち着きがなくてそわそわしてるようにも見えるくらい、こまめに身体を動かしていた。緊張してるのかな。
「前田さんって中学からプロレスやってるんでしょ?」
「え。あ、はい、そうです」
「やっぱり!前に一回だけ南関東大会観に行ったことあるんだけどその時に見たような気がしたの!」
「そうだったんですね。石井さんも中学からですか?」
「うん。でも2年生の途中からだけどね。前田さん可愛いくて技はカッコよくて、一緒に観に行った友達と華あるよねって話してたの」
「えへ、そんな、なんか恥ずかしいです。でも嬉しい」
中学の頃を知られているのはどことなく複雑だけど、華があるというのは女子プロレス的にはかなりの誉め言葉だ。これが冥利に尽きるってやつ?もっと言ってほしい。
「前田さん背も高いしパワーもあって羨ましい」
「父親が背が高くて。女の子は大きすぎてもってよく心配されましたけど」
力があるのは多分よく食べるからだ。これでもしスポーツとか何もやってなかったら…。想像するのも恐ろしい。
「高山さんも背高いよねー。さっきの試合も凄かったよね。もう何やっても勝てないなって思っちゃった」
「ほんと、凄かったですよね」
と言いながら勝てないうんぬんの話には応えなかった。勝負する前から負けが決まってるなんて思いたくない。
それに、背が高いから強いんじゃない。体格差で有利不利は生まれるけど、それで勝敗が決まるならプロレスはもっとシンプルでつまらない。高山美優は、いや私だって、強くなりたくて一生懸命練習しているんだ。
「あ、終わったかな。じゃあ私行ってくるね。あー恐いなー」
「いってらっしゃい。頑張ってください」
リングに上がる石井百合を笑顔で送り出した。私にできるのはそれくらいだ。でも戦う相手に敬意があるなら真剣に戦ってほしいとは思う。
ゴングが鳴って試合が始まる。終始高山美優が主導権を握ったまま、石井百合はされるがままだった。
始めは何とか糸口を探そうとしていたけど、狙いは全て高山美優に阻まれ、ラリアットを一発決めたくらいだ。決めたといっても当たっただけで高山美優はしっかりガードし受け身も完璧だった。石井百合は早々にスタミナも随分削られて動きの切れも落ちていった。
最後は腕ひしぎ十字固めに捕まった。振りほどくこともロープに手を伸ばすこともなくタップして試合終了のゴングが鳴った。
ほぼリング中央で決まったので、逃げるのが難しかった。確かにそうだと思う。でもそういうことじゃない。どうしてそこですぐに諦めてしまうんだろう。
「やっぱ強かったわ。全然ダメだったもん」
握手を交わしてあっさりリングを降りてきた石井百合はやれやれと言わんばかりだ。
「お疲れ様です。残念でしたね」
「ありがとう。あれは仕方ないよ」
桜も似たようなこと言ってた。でも桜は攻め続けた。途中で投げ出さなかった。
負けるのは嫌だし悔しいけど、負けてしまうことはある。それはわかっているんだけど。
握手していたときの高山美優に表情はなかった。勝って嬉しいのか、それとも勝つことが当たり前なのか。注目選手だけに勝たなければというプレッシャーもあるのか、また違う感情なのか。
反対側のコーナー、高山美優の方に目を向けると今は後ろ姿しか見えない。彼女の背中は何も語ってはくれなかった。
今回私は石井百合のセコンドに着いている。彼女の試合前は落ち着きがなくてそわそわしてるようにも見えるくらい、こまめに身体を動かしていた。緊張してるのかな。
「前田さんって中学からプロレスやってるんでしょ?」
「え。あ、はい、そうです」
「やっぱり!前に一回だけ南関東大会観に行ったことあるんだけどその時に見たような気がしたの!」
「そうだったんですね。石井さんも中学からですか?」
「うん。でも2年生の途中からだけどね。前田さん可愛いくて技はカッコよくて、一緒に観に行った友達と華あるよねって話してたの」
「えへ、そんな、なんか恥ずかしいです。でも嬉しい」
中学の頃を知られているのはどことなく複雑だけど、華があるというのは女子プロレス的にはかなりの誉め言葉だ。これが冥利に尽きるってやつ?もっと言ってほしい。
「前田さん背も高いしパワーもあって羨ましい」
「父親が背が高くて。女の子は大きすぎてもってよく心配されましたけど」
力があるのは多分よく食べるからだ。これでもしスポーツとか何もやってなかったら…。想像するのも恐ろしい。
「高山さんも背高いよねー。さっきの試合も凄かったよね。もう何やっても勝てないなって思っちゃった」
「ほんと、凄かったですよね」
と言いながら勝てないうんぬんの話には応えなかった。勝負する前から負けが決まってるなんて思いたくない。
それに、背が高いから強いんじゃない。体格差で有利不利は生まれるけど、それで勝敗が決まるならプロレスはもっとシンプルでつまらない。高山美優は、いや私だって、強くなりたくて一生懸命練習しているんだ。
「あ、終わったかな。じゃあ私行ってくるね。あー恐いなー」
「いってらっしゃい。頑張ってください」
リングに上がる石井百合を笑顔で送り出した。私にできるのはそれくらいだ。でも戦う相手に敬意があるなら真剣に戦ってほしいとは思う。
ゴングが鳴って試合が始まる。終始高山美優が主導権を握ったまま、石井百合はされるがままだった。
始めは何とか糸口を探そうとしていたけど、狙いは全て高山美優に阻まれ、ラリアットを一発決めたくらいだ。決めたといっても当たっただけで高山美優はしっかりガードし受け身も完璧だった。石井百合は早々にスタミナも随分削られて動きの切れも落ちていった。
最後は腕ひしぎ十字固めに捕まった。振りほどくこともロープに手を伸ばすこともなくタップして試合終了のゴングが鳴った。
ほぼリング中央で決まったので、逃げるのが難しかった。確かにそうだと思う。でもそういうことじゃない。どうしてそこですぐに諦めてしまうんだろう。
「やっぱ強かったわ。全然ダメだったもん」
握手を交わしてあっさりリングを降りてきた石井百合はやれやれと言わんばかりだ。
「お疲れ様です。残念でしたね」
「ありがとう。あれは仕方ないよ」
桜も似たようなこと言ってた。でも桜は攻め続けた。途中で投げ出さなかった。
負けるのは嫌だし悔しいけど、負けてしまうことはある。それはわかっているんだけど。
握手していたときの高山美優に表情はなかった。勝って嬉しいのか、それとも勝つことが当たり前なのか。注目選手だけに勝たなければというプレッシャーもあるのか、また違う感情なのか。
反対側のコーナー、高山美優の方に目を向けると今は後ろ姿しか見えない。彼女の背中は何も語ってはくれなかった。
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