32 / 36
30話
しおりを挟む
交流試合の翌日、練習は休みにした。試合は体力も使うし気も張っているから、思った以上に疲れている。激しいスポーツでは身体のメンテナンスは大切だ。
自分の部屋のベッドで横になって何時間たったかな。身体は休まってるけど気持ちが落ち着かなかった。
高山美優。その強さは想像以上だった。
ひとつひとつの技が重かった。他の選手では軽い一発が重く身体に残るような技だった。
試合運びも上手い。全ては最後のあのサソリ固めに持っていくための流れだったように感じる。軽い技(高山美優の場合それも軽くないけど)で着実にダメージを与え、徐々に威力の高い技を出していく。サソリ固めを決める上で相手に抵抗されそうな要素を潰しておけば、最後はがっちりと極めるだけだ。
一方私はといえば、まともに出せた技は無い。どれだけ自信のあるジャーマンも決めなければ意味がないけど、その形に持ち込めなかった。それ以外の技も読まれることが多かった。こっちの技が途中で止められ相手の技は食らう。差は開いて当然だ。
「あーーもう!」
悔しい。同じ高校一年生でどうしてこうも違うのだろう。
ベッドに仰向けになったままむしゃくしゃしているとドアが開いた。
「姉ちゃんうるさい」
「ちょっと康太ノックしなさいよ」
「したよ」
聞こえなかったし。てかこっちが返事してから入ってくるもんでしょ普通。
もういい。お腹空いてきた。
「昨日の試合、勝った?」
「勝って勝って負けた」
「2勝1敗?まぁまぁじゃん」
康太はスポーツなんて興味もないのに、時々こうして近況を聞いてくれる。
「そりゃどーも。全部勝てるくらい強くなりたいよ。どうしたらいいと思う?」
「必殺技とか考えてあげようか?」
「そうね。ダサいのじゃなかったら使ってあげる」
考えが中学生らしいというか、ゲーム好きの発想というか。そんな弟と話していると自分が悩んでいるのがバカバカしく思えてくる。
「でも一発で決めようとするよりコンボでハメた方が勝ちやすいんだ」
「そんなゲームみたいに上手くいったら苦労しないよ」
とは言っても、高山美優に最後やられたのはそういうことだったのかもってふと思った。ジャイアントスイングで動きを鈍らせてからのサソリ固め。あれも康太が言うみたいなコンボなのかな。
トイレに行った帰りだったのか、特に用があったわけではなかった康太は自分の部屋に戻っていった。
「コンボかぁ…」
私もそういうの、あったらいいのかな。ジャーマンスープレックスに繋がる最強コンボ。
そこまで考えてまたバカバカしくなる。何が最強コンボだ。小学生みたい。
起き上がって一度伸びをする。最近はしっかり練習していたから3試合しても筋肉痛にはならない。
必殺技とかコンボとか考えるのもいいけど、試合での反省点を修正するのが最優先だ。
窓の外は暑そうだ。昼前で既に30度になっていて、今日の最高気温は35度を超えるらしい。
早く練習したいな。
うだるような暑さだけど、強くなるにはそれしかないのだ。
自分の部屋のベッドで横になって何時間たったかな。身体は休まってるけど気持ちが落ち着かなかった。
高山美優。その強さは想像以上だった。
ひとつひとつの技が重かった。他の選手では軽い一発が重く身体に残るような技だった。
試合運びも上手い。全ては最後のあのサソリ固めに持っていくための流れだったように感じる。軽い技(高山美優の場合それも軽くないけど)で着実にダメージを与え、徐々に威力の高い技を出していく。サソリ固めを決める上で相手に抵抗されそうな要素を潰しておけば、最後はがっちりと極めるだけだ。
一方私はといえば、まともに出せた技は無い。どれだけ自信のあるジャーマンも決めなければ意味がないけど、その形に持ち込めなかった。それ以外の技も読まれることが多かった。こっちの技が途中で止められ相手の技は食らう。差は開いて当然だ。
「あーーもう!」
悔しい。同じ高校一年生でどうしてこうも違うのだろう。
ベッドに仰向けになったままむしゃくしゃしているとドアが開いた。
「姉ちゃんうるさい」
「ちょっと康太ノックしなさいよ」
「したよ」
聞こえなかったし。てかこっちが返事してから入ってくるもんでしょ普通。
もういい。お腹空いてきた。
「昨日の試合、勝った?」
「勝って勝って負けた」
「2勝1敗?まぁまぁじゃん」
康太はスポーツなんて興味もないのに、時々こうして近況を聞いてくれる。
「そりゃどーも。全部勝てるくらい強くなりたいよ。どうしたらいいと思う?」
「必殺技とか考えてあげようか?」
「そうね。ダサいのじゃなかったら使ってあげる」
考えが中学生らしいというか、ゲーム好きの発想というか。そんな弟と話していると自分が悩んでいるのがバカバカしく思えてくる。
「でも一発で決めようとするよりコンボでハメた方が勝ちやすいんだ」
「そんなゲームみたいに上手くいったら苦労しないよ」
とは言っても、高山美優に最後やられたのはそういうことだったのかもってふと思った。ジャイアントスイングで動きを鈍らせてからのサソリ固め。あれも康太が言うみたいなコンボなのかな。
トイレに行った帰りだったのか、特に用があったわけではなかった康太は自分の部屋に戻っていった。
「コンボかぁ…」
私もそういうの、あったらいいのかな。ジャーマンスープレックスに繋がる最強コンボ。
そこまで考えてまたバカバカしくなる。何が最強コンボだ。小学生みたい。
起き上がって一度伸びをする。最近はしっかり練習していたから3試合しても筋肉痛にはならない。
必殺技とかコンボとか考えるのもいいけど、試合での反省点を修正するのが最優先だ。
窓の外は暑そうだ。昼前で既に30度になっていて、今日の最高気温は35度を超えるらしい。
早く練習したいな。
うだるような暑さだけど、強くなるにはそれしかないのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる