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しおりを挟む「そなた……名は何と申す。」
王は話の途中に割り込んできた、失礼な乱入者の名を聞く。
それに対し、セオドアは王に対し手を胸に添えながらお辞儀をする。
「私はレンダリル国近衛騎士団団長セオドアと申します。アンデリックの王よ、勇者との決闘、ぜひ私が戦うことを許可していただけないでしょうか!」
「別に構わん。選手が変わったところで、願いは変わらないからな。勇者殿はどうだ?」
「本当は魔王がよかったんだが……、いいだろう!受けて立つぜ。」
セオドアは魔王に向き直り、その場で片膝をついて頭を下げる。
「我が主、どうか願いを聞き入れてくれないだろうか。」
魔王は懇願してくる部下を静かに見据える。
「………。」
「御身にもしものことがあっては、私の存在意義がありません。それに……が戦っているのに……ただ見守るのは無理だ……。」
後半の言葉は小声で聞き取りづらかった。
だが、何か切迫詰まっているのだろう。
必死に何かを伝えようとしているのが目で語っている。
「……直ちに準備せよ」
そう言った魔王様は、私のところに戻ってきて帰るぞと言わんばかりに腕をグイッと出してきました。
私は行きと同じように魔王様のその腕に手を添え、観衆の真ん中を歩いて城の外に向かう。
後ろに連れてきた者たちも引き連れて。
「感謝いたします。」
セオドアは嬉しいのか、軽くガッツポーズをとっているのが見える。
セオドアはどうして急にこんなことを言い出したのだろう……。
いつもの彼らしくない。
彼なら、[頑張って勝って来て下さいよー!俺待ってますんで!]とか言いそうだと思っていたのですが。
魔王様の実力を疑って?
それはないと思いますが……
私だって、魔王様が負けるとは思っていませんし。
勇者に何か、強者にしか分からない力が見えたのでしょうか?
歩きながらグルグルと考え事をしている私を、魔王様は静かに見守る。
魔王様は私が何に疑問を抱いているのか分かるのか、こう答えた。
「私だってそうする。」
そう言いながら、魔王様は片手を私の頬に優しく触れた。
……忠誠心ゆえに?
そんなこんな考えているうちに、我が国の魔導車が置いてあるところまで来ていたようだ。
これから向かう目的地は、この国の大型闘技場である。
私も連れられたことがあるが、私はこの国の闘技場は私に合わず、あまり好き好んで行くことはなかった。
一応、レンダリル国にも世界最大級の闘技場はある。
ルールは、一対一の決闘で相手が棄権又は戦闘不能だと判断すれば勝利となる。
だが、この国のルールは違うのだ。
複数人が闘技場内に集まり戦闘するのだ。
1人で倒すのが普通だが、これはチームを組んで倒すことも可能。
多人数で1人を一斉に叩きのめすのだ。
それだけでも良い気はしないのだが、ここのルールは相手が棄権または息の根を止めるまで試合は止まらない。
棄権と宣言しても、すぐに退場しなければ殺されてしまう恐れがある。
だが、恐ろしいのはそれだけでない。
質の悪い選手が、相手が棄権と言わせないために魔法で相手の音を消す、つまり相手が何か喋っても聞こえなくさせるのが多くいるのだ。
集団でその者を命尽きるまでリンチする。
無理やり王家の方々に連れられた時は、私だけが観客席で気分が悪くなり早々に退席したことがある。
だから私は心配である。
今回の決闘はどこまでなのだろうか。
それに、セオドアは強いとはいえ、勇者に勝つことができるのだろうか。
セオドアが魔王様の代わりにならなければならないぐらい強いのか?
それに、セオドアの様子もいつもとは違っていた。
不安で不安でしかたない。
頭の中がグルグルと渦巻いているようだ。
その時、魔導車の対面の席に座っていた魔王様が私の隣に座り直した。
そして私と見つめ合う。
魔王様の瞳の中には不安げな表情をしている私がいた。
魔王様は私の片手に自身の手を重ねて、静かにポツリと言葉をこぼす。
「大丈夫だ。」
セオドアは強い、信じろ。
そんなことも言っているような気がした。
……そうですね。
魔王様の言う通り信じましょう、我が国の騎士団長を。
きっと、無事に勝ってくれる。
勇者様も優しそうなお人そうだし、それにあの聖女様だっているのだ。
この胸騒ぎも、ただの気の所為だ。
「ありがとうございます、魔王様。少々疲れが溜まっていたようです。魔王様のおかげで落ち着きました。」
「……そうか。」
魔王様はそう言いながら、目線を私から魔導車から見える外の景色に移動させた。
重ねている手はそのままで。
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