鈍感宰相は寡黙な魔王様に付き従う

みけみけみっみ!

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「皆よ、ここまでの移動わざわざご苦労であった。しかし、その苦労も今からの決闘を見れば吹き飛ぶことになるだろう。」

 王は手に持っている王杖をカツンと床に打ちつける。
 
「まずはルールを決めようではないか。選手たちよ、何か意見があれば申すがよい。」

 そして、王は下の広場にいる勇者とセオドアに問いかける。
 
「ルール決めっていってもなぁー。武器使用有りとか無しとかのことか?なぁ……えっと、団長さん?は有りでいいよな?

「セオドアで構わない。あぁ、有りでいい。マサキ殿がそう言うのなら。」

「武器もそうだが、魔法もではないか勇者様よ。」

「ああ!そうだった。あとは……、試合が終わるのは相手が負けを認めたらだよな?セオドアさん。」

「それで構わない。お互いトドメは刺さないことにしよう。」

「そうか。あくまで試合ということか。両者がそう申すのなら、そのようにしようではないか。」

勇者はそう言いながら、見たことのない動きのストレッチをする。

「武器といったら……」
 
 勇者は武器を空間から突然出現させた。
 その現象に私を含め、周囲の人々が驚きに目を開く。

「これっしょ!」

 勇者が持つ武器はこの世界では珍しい細長い武器で、見たことのない形状をしていた。

「マサキ殿、そのような武器は見た事もない。そちらの世界ではその武器が主流なのか?」

「え?いや、俺の国だけかな。この武器は刀っていうんだ。別の国ではセオドアさんのような武器を使っているイメージだよ。」

 楽しそうに語る勇者をセオドアは嬉しそうに聞いている。
 
「両者共に準備はできたか?」
 

「これから、我が国代表として勇者であらせられるマサキ様とレンダリル国の近衛騎士団団長殿との一騎討ちの決闘を行う。」

「両者、配置に」

「始めよ!」
 
 王の声と同時に勇者が先に動き出す。

 物凄い音がすると思ったら、勇者が居た場所には勇者本人がおらず、勇者が居た地面が抉れていた。

 猛スピードでに向かってくる勇者を、セオドアはただ静かに構えて迎えている。
 その様子のセオドアを見た勇者は、セオドアに武器が接触する際に姿勢をさらに低くした。
 中段から下段の横払いの構えに変更する。
 狙いはセオドアの足首だろう。

 だが、セオドアにそんな小細工は通用しなかった。
 
 セオドアはその攻撃を自身の剣を地面に刺して防いだ。
 勇者は防がれたことにより両手持ちしていたためか、両手ごと武器が横にそれて勇者の正面に隙がうまれた。
 
 そこをセオドアは逃さなかった。
 
 セオドアは勇者を肘で下から上に攻撃する。
 勇者は下からの攻撃になす術がなく、一瞬少し体が浮く。
 その一瞬にセオドアは横蹴りを勇者の胴体にいれ、追い討ちをかける。
 勇者はセオドアの攻撃により吹っ飛び、勢いにより闘技場の壁に少しめり込んだ。

 セオドアは嬉しそうに勇者に語りかける。

 
「マサキ殿、降参するか?」

 その言葉に勇者は笑う。

「いやいや!そんな勿体無いことはしないよ。色々試したいからな。」

 そう言いながら、勇者は壁にめり込んだ体を取り出す。
 そう言う勇者にセオドアは嬉しそうに笑う。
 
「マサキ殿ならそういうと思った。だが、早々に武器がなくなったぞ。次はどうする?」

「そうだよなー。自動アシストされているけど、やっぱ経験値足りない感じすんだよなー。それなのに、いきなり中ボスに立ち向かう俺。はははっ。やっぱり初期の低レベルでは歯が立たないな。」

 歯が立たないと聞いた人間たちは、どよめき騒ぎだした。

「う、嘘だ!勇者様はお強いと……。殿下!殿下がそう言ってたではないですか?!」

 王太子の部下たちが一斉に問い詰めだす。
 
「私だって驚いておる!私の責任にするな!私ではなく王であろう!」

 息子に指を差された王本人はというと、現状を目の当たりにして言葉が出ず、目を大きく開き口を半開きにしながら静かに自分の席にズリッと座り込んだ。

「……想定外だ。……やはり我々人間は魔族に勝てないということか……。」


 その光景を下から見ていた勇者はフンッと鼻で笑う。

「失礼な奴らだぜ。」

 勇者の言葉にセオドアは頷く。

「そうだな。まだ始めたばかりだというのにな。……何か言ってやろうか?」

 セオドアは騒ぎ立てる者たちを睨みつける。
 
「ほっとけ、ほっとけ!楽しいのに水を差しやがって。勝手に落胆しとけっつーの!」


 勇者は両手を組んで上体を伸ばすストレッチをする。

「次はどうしよっかなー。近接系は相性悪そうだからパスとして……。となると、遠距離一択なんだよなー。」

 空を見上げながら考えごとをする勇者に、セオドアは提案する。

「別に光属性で攻撃しても構わんぞ。得意ではなかったか?」

 その言葉に、勇者は人差し指だけを伸ばしてチチチッと言いながら横に振る。
 
「いや、あれはイマイチ制御きかんのよ。もう、即スキル発動!てな感じ。」

「すきる?」

「あぁ……。えーっと、魔法!魔法のことだよ。俺、光属性の魔法制御は苦手なんだよ。魔力膨大すぎて。」

「試しに俺に使っていいぞ。」

「いいのか?!ありがとな!何かあったらアリカに治してもらおうぜ。」

 
 そう言って勇者は魔法で弓を出現させ、綺麗に光り輝く矢をセオドアに向けて放った。


 
 そんな会話を私と魔王様は静かに見守っていた。

「魔王様、なんかセオドアが稽古に付き合っている感じですね。」

「……そうだな。」

「よかったですね。召喚された勇者がマサキ殿で。」

「そうですね。マサキは素直で良いやつですのね。たまに面倒くさい所ありますが。」

 そう言いながら、聖女は私の隣に座った。
  
「これはこれは聖女殿。あちらでお座りにならなくてよろしいのですか?私たちはあなたをいつでも歓迎しますが、あちら側の方々がお許しにならないのでは?」

「ふふっ。心配してくれてありがとうございます。ですが心配ご無用。あちらをご覧下さいませんか?」

 私は言われた通り、私たち魔族側とは向かい合わせで反対にある人間側を見渡す。

「私がいなくなってもあれだけ騒いでおります。それだけ……ふふっ、焦っておいでなのでしょう。」

 聖女は笑いを堪えながらそう語る。

「そうですね。予定とは違うようですし、そうなるのも仕方ないのかもしれませんね。……ですが、よろしいのですか?こちらの席はあちらとは違い、座るにしては少々居心地が悪いのではないでしょうか?」

「そうですね、あちらはフカフカの絨毯の上にこれまたフカフカのソファが用意されてるから。……こんな待遇差は頭おかし――ん''っ、どうかとおもいますね。」

 どうやら毒舌を吐くのは控えたようだ。

「ですが、こっちにはあちらにはないもの・・が見れますから。」

 そう言いながら、聖女はニマニマと笑いながら私たちを見る。

「「?」」

 私と魔王様も聖女が言う意図がよく分からない。

(あぁ、そういえば聖女様がお好きなのは確か……)

「獣人にお会いしに来たのですか?確かご興味があるとか。」

「ええ!なんで私の好み……」

「あはは。当たりですね。」

 実は事前に人間以外、人外がお好きだと情報が入っていた。
 だから、あれだけ連れてきて、あわよくばこちら側に来てくれないかとハニートラップ?というか分からないが、一応仕掛けたのだが……

 予定とは違い協力的であったため、彼らの出番はなかった。
 だが、目線は獣人に釘付けだったのを覚えている。

 
「私たちがいた世界には獣人はもちろん、人間以外の人族はいなくて。……正直憧れだったのです。」

 聖女は警戒を緩めたのか、口調が柔らかくなった。

「特にモフモフとしたあの毛並みが最高で……。しかも、こっちの世界には同性との壁が無くて。こっちに来てよかったです。」

「同性との壁?とは?」

「私がいた世界での結婚とは、男と女、異性同士が主流でして。こっちは同性でもいいって聞いてテンション上がりました。」

 そう言いながら、またニマニマと私たちを見る。
 へぇ、聖女殿がいた世界ではそうであったのですか。
 ここの世界でも遥か大昔ではその時代はありましたが。
 
「ここ日差しが強いですもんね。」

 そう言いながら、聖女は私の頭上を指差す。
 私の頭上には魔王様の翼が日差し避けの為にかざしている。

「魔王様、お優しいので部下にもこのようにしてくれるのですよ。」

 私は魔王様が褒められた気がして嬉しくてなる。 

「うふふっ。これ、伝わってないじゃん。両片思い?いや違う。これ、恋に両方とも気付いてないの?でも、片方は執着してるし。」

 聖女は突然、小声で呪文のように早口でなにかを言っている。
 全然、聞き取れなかった。
 俯いて何か唱えていた感じがした聖女は、突然こちらに視線を戻してきた。
 
「魔王様、並びに宰相閣下殿。ぜひとも、私もこちら側に加勢させていただけないでしょうか。」

「こちらにとっては、とてもありがたいです。ですが勇者殿はよろしいので?」

「ああ、彼もこっちに来ますよ。あれだけ嬉しそうにしていますから。……では、いいですか?」

 魔王様は静かに頷く。
 
「……」

「やった!では、これからよろしくお願いしますねお二人共。」

 そして聖女は嬉しそうに微笑んだ。
 

 
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