Norl 騎士魔王漫遊記

古森日生

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ヴァンフォルネ

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ノールたちは4つの宮を駆け下り、魔天回廊に戻った。
魔天回廊に差し掛かると、すぐに虹色の光がノールたちを導くように道を照らした。それを追っていくと、視界がすぐに明るくなり気が付けば彼らは天空に漂う魔王神殿に立っていた。
その美しさにブーケファルスとアーサーは感嘆した。ノールが歩いていくと、扉が自動で開き、神殿の奥へいざなう。
ほどなく、かれらは魔王神殿の最奥、サーヒの領域にたどり着いた。鏡張りの部屋の美しさにブーケファルスはため息を漏らした。
「おー、来たズラね」
ノールの姿を認めるとサーヒは右手を挙げて歓迎した。
「何の用だ」
「ソールの事、知ったようズラね」
うむ、とノールは頷く。
「で、どう思ったズラ?」
「わしらは武人として槍を交え、兄は死にわしは生き残った。それがすべてだ」
「ズ・・・ ズーラズラッ ズラッ ズラッ‼」
ノールが云い切るのにサーヒは呵々大笑した。
「それでこそ騎士魔王ズラ! このサーヒ、感服したズラよ‼」
これが本題に入る前の挨拶のようなものであることはノールも承知。目で先を促した。
こほん、とサーヒは咳払いした。
「ところでノール。あの娘のことに後悔はないズラか?」
「悔いはある。だが、済んだことだ」
迷わず云い切るノールに、サーヒは探るような眼で言葉を継いだ。
「・・・そうズラか。 ところで、この神殿がかつて天界の神殿だったことは知ってるズラね?」
「うむ」
「この神殿には、実はまだサーレイムの力が残ってるズラ」
神王サーレイム。
かつて神魔大戦で滅んだ神界の統治者。
そして、神魔大戦末期四人の天姫を殺し四本の聖剣、聖槍を作り出そうとした外道でもある。
神界の技術で作られた神器は、聖なるものの血を含むことでその力を吸収し神界最高の聖剣、聖槍となすことができた。
それを目の当たりにしたことも騎士魔王ヴァンノールが神王と手打ちを行わず、神界を滅ぼすことにした一因でもあった。
久々に聞いた苦々しい名にノールは眉を顰めたがサーヒの間抜けた声が続いた。
「で、今となっては私の養毛にしか使ってないズラが、歴とした蘇生の『力』ズラ。持っていくがいいズラ」
サーヒが頭上に手をかざすと虹色に光る宝玉を取り出した。
「だが、これだけではたぶん足りないズラね」
ノールはサーヒが取り出した『蘇生の力』を手に取った。暖かな光を放ちながら小手の上で輝いている。
「ノール、水神宮でムスペラードに会うズラ。あの子の力は『活力の炎』ズラ。二つ合わさればあるいは・・・」
「・・・もうよい」
ノールは蘇生の力をサーヒに返そうとしたが、サーヒは両手で押し戻した。
「まあ、持っていくだけ持っていくズラ。いらなければ使わなければいいだけの事ズラから」
ズラッとサーヒが微笑んだ。
「死したものを蘇らそうと思うのは不正だ、と思っているズラ?
『騎士魔王は何者よりも公正であるべし。』 ソールの言葉ズラ。やっぱり似てるズラよ。貴方たちは」
「・・・」
そう云われては何も言えず、ノールは黙って蘇生の力を懐にしまった。
「そうそう、水神宮に行くなら、外にフェリイオンを停めてあるズラ。乗ってくと早いズラよ」
サーヒが最後にまたズラッと笑った。
ノールは振り向かず、神殿の外へ向かった。
神殿を出た時、神殿の上を旋回していた巨大な竜が下りてきた。
飛竜フェリイオン。デュハメルとフォルトゥナという二人の精霊が笛と歌で操る大いなる竜。
やがてフェリイオンは人間界に居を移し救世英雄ナモルの乗騎となるのだがそれはまだ先の話だ。
フェリイオンは今はまだ魔界に住まう、魔王神サーヒ配下の魔神の一柱だった。
『お待ちしておりました、騎士魔王様。魔王神様のご命令で、貴方様を水神宮までお送りするように仰せつかっております』
ノールは黙ってフェリイオンにまたがった。グリムリーパーもそれに倣う。
『では、おつかまり下されませ』
云うや、フェリイオンは大空に飛び上がった。
そのまま矢のように速度を増し、ツィグリス湿原、ユフラテ、魔酔の森、妖精城の上空を一息に飛び過ぎ天水峡の水神宮に降り立った。
『到着いたしました』
フェリイオンが降りやすいように体をかがめながら云った。
「世話になった」
ノールがフェリイオンの背から降り立った。
まさか騎士魔王に礼を云われるとは思っても見なかったフェリイオンは驚いたが
『騎士魔王様にお乗り頂けるとは、このフェリイオン生涯の名誉でございました』
グリムリーパーが降りたのを確認すると再び大空に舞い上がり、姿を消した。
「き、騎士魔王様・・・?」
巨大な竜が舞い降りたため、慌てて様子を見に来たのだろう。
そこには、火神ムスペラードが立っていた。
「ムスペラディア嬢。この魔鎧については世話をかけたようだな」
「差し出たことをいたしました」
「いや、何か礼をせねばならぬ」
「騎士魔王様にお礼なんて・・・。 それよりもどうぞ中へお入りください。
騎士魔王様にお越しいただいたのに、お茶もお出ししていないなんて、兄さまに・・・、兄に叱られてしまいます」
胸の前で手を重ねてムスペラードは一礼した。
「・・・そうか。では馳走になるとしよう」
「はい」
丁寧に頭を下げて、ムスペラードは花のように微笑んだ。

ノールと3人は水神宮のムスペラードの領域の暖かな日の差し込むバルコニーに通された。
バルコニーからは美しい天水峡の眺め、そしてムスペラードの世話するサンルームが見えた。色とりどりの花々は美しく咲き誇り、かぐわしい香りが漂っていた。無論バルコニーもサンルームもクリスタルで出来ており、柔らかな日を浴び燦燦と輝いていた。
「どうぞ、お召し上がりください」
ムスペラードはノールとグリムリーパーになんと自らお茶を供したので、グリムリーパーの3人は目を白黒させてしまった。
5人はクリスタルのお茶会用テーブルにつき、ティータイムとなった。
「美味い」
「ありがとうございます」
ノールが柄にもなくムスペラードの供した茶を誉めた。ムスペラードは嬉しそうに微笑んだ。
「ムスペラディア嬢、先ほども云ったが何か望みはないか。恩を受けたままにしておくのはこの騎士魔王の名折れ。
我が名に懸けて必ず叶えて遣わそう」
ノールが重ねて云った。騎士魔王ともあろうものの申し出を二度も断るのは不敬、そう思ったのかムスペラードはおずおずと口を開いた。
「騎士魔王様・・・ 魔王神様にはお会いになられました?」
「会った」
ノールの答えに、ムスペラードは手にしていたカップを膝の上まで下ろした。
「お願いがございます」
ムスペラードは、伏し目がちだったがノールの眼を見て言葉を続けた。
「申すがよい」
「騎士魔王様は曲がったことがお嫌いなお方・・・ ですが、私はそれを重々存じ上げた上で、貴方様に曲げていただくようにお頼みいたします」
「フォルネア、か」
サーヒの話を出されたうえで、己を曲げろという言葉。何を云わんとするのかわからぬノールではない。だが、
「わからぬな・・・ なぜフォルネアを蘇らせることがそなたの望みにかなうのだ」
ムスペラードは伏し目がちだった目をはっきり上げて、ノールを見た。
「あの子が貴方様に逃がされた後・・・ ほんの少しですがあの子を匿っていたことがあるのです。
あの子は、天姫の宿命を逃れても色々辛い目に遭って来たようです。私はそんなあの子が不憫で、せめて少しでも元気になってくれるように引き取りました。ですが、ある日私が留守にしている間にあの子は姿を消してしまいました。おそらく、兄さまが・・・ いえ。
あの子が姿を消してからも、どうか幸せであってほしいと、常々思ってまいりました。それなのに・・・」
ムスペラードの赤い瞳から涙が零れる。
「騎士魔王様・・・ どうかあの子を、フォルネをお助け下さいまし・・・!」
ムスペラードは両手の指を組み合わせ、祈るようにノールを見上げた。
「ムスペラディア嬢。騎士魔王として誓おう。この魔鎧の礼としてそなたの望み、このわしが叶えよう。それでよいな?」
その姿に打たれた訳でもあるまいが、ノールにしてはありえぬほどの優しい声が出た。
ムスペラードは零れる涙をぬぐいもせず、噎び泣いてしまった。
「ああ・・・ ありがとうございます! ありがとございます・・・」
ノールはムスペラードの涙が止まるまで、じっと待っていた。
やがてムスペラードはノールの心遣いに気づいたのか、頬を染めて目頭をぬぐった。
「ああ・・・ 恥ずかしいわ。 お見苦しいところをお見せいたしました」
ムスペラードはもう一度、両手を胸の前で重ねて深々と頭を下げた。
「フォルネアを、よろしくお願いいたします」

ムスペラードとのお茶会を終えて席を辞した後、見送りにと云ったムスペラードを断り、ノールは水神宮の正門へ向かった。
魔鎧の中には、蘇生の力に活力の炎を重ねた宝玉が大事にしまわれていた。負の感情を固めた碧玉などとは違い、本物の『生命の力』であった。
だが、ノールの心にはまだわずかに迷いが残っていた。今まで一万二千年示して来た魔王の矜持は、曲げると決めても簡単に割り切れるものではなかったのだろう。
正門に近づいた時、壁に背を預けて立つ男の姿が見えた。
「これは珍しい物を目にするものだな。迷いが見えるぞ、騎士魔王」
そんな迷いを、この男は敏感に察知しノールに声をかけた。
「アクアードか」
「わかっている。妹に何か頼まれたのだろう? 妹の甘すぎるところはいくら云っても治らぬ。最早病気だな」
アクアードはノールに歩み寄り、正面から見下ろした。
「・・・ノールよ」
アクア―ドは屈み、魔鎧の面頬に顔を近づけた。
「騎士の体面など、どぶに捨ててしまえ」
ノールの眼がアクアードの赤い瞳を見返した。
「これ以上に言葉が要るか?」
アクアードもまたノールの眼をまっすぐ見返した。
しばらく互いの視線をぶつけ合っていたが、やがてノールが口を開いた。
「・・・いや、要らぬ」
アクアードはにやりと笑うと屈んでいた身を起こした。
「フ・・・ 北の騎士魔王どのに吐く言葉ではなかったな」
そういうとノールの横を通り過ぎ、ムスペラードの領域へ向かった。
ノールもまた面頬の中で小さく笑った。


水神宮を出たノールたちは再び魔天回廊を経、神魔大戦の遺構である白亜の神殿の石段を駆け上った。
フレアビス、竜飛、フランキ、サグザーの守る宮を抜け、5番目の宮には針のレリーフがかかっていた。
「あれは・・・」
アーサーが小さく声を上げた。
「では、この先にいるのは黄金の魔戦士、ブライ・・・!」
彼らが宮に入りこむと、ちょうど宮の真ん中にブライが立ちふさがっていた。
「待っていたぞ! ヴァンノール‼」
「ブライか。 二度は云わぬぞ。4人目のグリムリーパーになれ。 わしの下でその力、存分に奮ってみよ」
北の騎士魔王ヴァンノールにそこまで云って貰えるのは光栄だな。 だが、わたしの主は一人! ほかに主はいらぬ‼」
ブライは両腕に凍気を込め、叫んだ。
「魔族にあっては珍しい氷の闘技の遣い手だけに惜しいがやむを得まい。 来るがよい!」
ノールの闘気が膨れ上がる。アーサーは、直々にノールがブライに手を下すことを悟り退いた。
「食らうがいいヴァンノール! これが黄金の魔戦士ブライ究極の凍気・・・! 極光爆氷晶オーロラエクスクリス‼」
ブライが両腕を合わせるとその中心に黄金の針が浮いていた。黄金の針は突端をノールに向けた。
ブライはその針をノールに向かって高速で撃ち出すと後を追うように凍気を全身にまとわせ突撃した!
ノールはメルブレイズを抜き、突撃してくるブライを薙ぎ払った!
一瞬の静寂。
ブライは両断され、静かに倒れた。
「さすがはヴァンノール・・・ 私の敵う相手ではなかったな」
両断されてなお、まだ息があるようだった。
「このわしの腕を凍り付かせたのは貴様が初めてだ」
ノールの魔鎧は小手のあたりにわずかに霜が降りていた。それは極光爆氷晶がメルブレイズの一閃に蒸発せず、わずかながらノールに届いたことを意味した。
「ヴァンノール。 ・・・お前のもとで戦うことが出来たらどれほど毎日心躍っただろうな。
だが、私にとってヴァンはあの方おひとりなのだ。 ・・・ソール様。今お傍に参ります・・・」
ブライは目を閉じ動かなくなった。
アーサーはそんなブライを眩しそうに見ていた。
「どうした。アーサー」
「・・・いえ。さすがはハーク様を倒した戦士だと感心しておりました」
もし、今ブライと闘ったらどうなったか。おそらく敗れただろう。フランキにも術で敗れ、戦技ではブライの足元にも及ばない。
わたしはハーク様のお眼鏡にかなう力があったのか・・・?
「ハーク=ユダ=イゾールドの魂は貴様の右腕にある」
ノールがアーサーを正面から見た。
「ハークは敗れたのではない。貴様に志を継いだのだ。ブライと比肩し得るかはこれからの貴様次第だぞ」
「はっ・・・」
己の心中を見透かされたことを恥じ入りアーサーは頭を下げた。
―そうだ。わたしは誓ったではないか。ハーク様に、ライティフォークに恥じぬ力をつけることを。
戦技、術、騎士魔王様の幕下で磨いて見せよう。光の炎、いつかわたしのものにしてくれる!
アーサーは心中の決意を新たにしていた。もう、迷いはない。

6番目の宮には大きな楯のレリーフがかかっていた。
宮の入り口には、黄金の楯を持った全身鎧の戦士が立っていた。
空焔はその姿を見て、刀を抜き放った。
普段、アーサーとブーケファルスで勝てる相手には空焔は刀を抜かない。
ふたりは驚きながら空焔を見た。
「数千年も前に世を捨てたお前と、まさか今また会おうとはな・・・。 クー、いや暁月空焔!」
「・・・ヴォーフラグか。お前ほどのものが、なぜこのような真似をしおる」
「お前が今になって主を決めたのと同じだ。ヴァンソールはわしにとってただひとつの黒い太陽だ」
「最後に残った道標、か」
空焔はゆったりと刀を正眼に構えた。空焔の知るヴォーフラグは一徹な漢。そこまで云うからにはもはや問うべきこともない。
「ならば、もはや言葉は不要! 天に太陽はひとつあればよい‼ わしらはそれを選んだのよ!」
空焔の気迫にヴォーフラグも楯を大きく掲げる。
「その通りだ! いざ‼」
ノールは手出しをするつもりもなく、ブーケファルスとアーサーの視界から空焔の姿が掻き消えた。
次の瞬間ヴォーフラグの懐に飛び込んでおり、下段の脇構えから頸を狙って斬り上げた!
ヴォーグラグは軽く首をひねって躱したが、空焔は返す刀で同じ剣閃を辿るように斬り落とした。
ヴォーフラグは半歩身を退いて躱す。
空焔は振り下ろした刀を横薙ぎに足を払った。
そこに黄金の楯が振り下ろされ空焔の愛刀「神喰」を受け止めた!
これらはひと呼吸の間に行われた。ブーケファルスとアーサーにはほぼ見えない速度であった。
「・・・さすがの技の冴え。クー、腕は鈍っておらんな」
空焔はにやりと笑った。
「我が二ノ閃、虎切をこうも見事に見切るのはお前くらいよ」
空焔は身をひるがえし、突きを放つ。
一突、二突、三突、いずれもヴォーフラグは紙一重でかわす。そして黄金の楯によるシールドバッシュを放つ。
空焔は左足を半歩退いて躱し体を反転し頸を狙う。ヴォーフラグは身をかがめて躱し足払いを放った。
空焔は軽く体を浮かせて躱したがそこへ黄金の楯が迫る。
思いきり斬り払ってその反動で距離を取った。
「さすがはクー。わしの楯技、忘れてはおらぬようだな」
「・・・忘れられるものか。 お前は、わしの命だったのだ。 どれだけ戦場を駆けたと思っている」
「互いに背を預けて、な・・・」
かつて、それこそ神魔大戦の前から数十、数百の戦場を彼ら二人は駆けた。空焔が攻めヴォーフラグが守り、局地の戦いでは敗れたことは一度もない。
だが、局地でいくら勝っても、勝利を得られるとは限らぬのが戦場だ。
やがて、彼ら以外の仲間は倒れ、傷つき戦場を去った。
彼らもまた長い戦いの末戦場を離れることになった。常勝不敗の名を残したままで。
その頃に彼らの時間は巻き戻っていた。
空焔とヴォーフラグは奇しくも同じ場面を思い返していた。
かつての別れ、もう二度と会うことはないと思っていた永久の別れを。

『・・・おまえは、武を捨て、世を捨てるといったな。だのになぜ、その刀を手放さず後生大事に抱えている?』
若き空焔は答えた。
『笑ってくれ、ヴォーフラグ。いくら世捨て人となり隠棲するといっても、やはりこれだけがわたしの生きた証なのだ。すべての苦悩はこの刀とともにあった。この刀は、わたし自身なのだ』
『クー・・・』
自嘲するような声音に、若きヴォーフラグは首を振った。
『その剣がおまえ自身ならば、いつか迷いなく鞘走る日がまた来るのだろうか』
『さあ、どうだろうか。もし、真に王たるおかたが現れればあるいは・・・』
『王、か・・・』
ヴォーフラグは想った。今代の魔王は力を示したが、神界を屈服させることは出来なかった。
『おまえの云う王とは?』
『さあ、わたしにもわからない。だが、わたしが起つことがあったら、真のきみを見出したと、そう思ってくれ』
空焔は背を向け、そして去った。
もう、二度と出会うことはないはずだった。

「クー。おまえはかつてヴァンノールの誘いを断ったと聞いた。ヴァンノールはお前の真の王ではなかったのではないか」
「確かに。若きヴァンノールは天水峡のわしの庵を訪れ、わしの力が欲しいといった。ヴァンノールは若さと力にあふれ、すでに神魔戦争を終結させるだけの力を持っていた。だから、わしはその誘いを断ったのよ。
絶大な力だけをもつ魔王がどのような世を作り出すのか・・・、わしはよく知っていたのでな」
その結果が神魔大戦だ。数千年、一万年を超える戦火だ。魔王の代替わりがあるほどの長き戦い。
「而して、ヴァンノールは神界の亡滅を選んだ」
結果、神界は滅び神は消え、天使は魔界に穢された。平和の代償とはいえ重い事実だ。わかっていたこととはいえ、空焔はヴァンノールと相容れぬ、そう思った。
「だが、再びわしの前に現れた我が君は天使の娘を連れておった。それでわしはもう一度、この刀に懸けてみることにしたのよ」
絶大な力だけを持つわけでなく、かつて滅ぼした神界を忘れず、天姫を傍に置く魔王に。
「今、我が剣に迷いはない」
空焔は大上段に愛刀を振り被った。
「・・・そうか。われらの太陽、いずれが真物なりや?」
ヴォーフラグも黄金の楯を掲げる。
空焔は神速でヴォーフラグに愛刀を振り下ろした!
確かに受け止めたはずの刀は、黄金の楯を両断し、ヴォーフラグの頸動脈を断っていた。

「ぐはッ・・・」
ヴォーフラグの体がゆっくり大地に倒れこんだ。首筋から血が噴き出し、止まることはもうない。
そんなヴォーフラグを、空焔は見下ろした。
「わかっていただろうに。のう、ヴォーフラグ。ヴァンソールは確かにおまえの太陽と云える魔王だったのだろう。
だが、ヴァンノールは魔皇三将の筆頭。いかな兄君とはいえソールの出る幕はない。
ましてや、部下の女に良いように使われるようなものは真にヴァンとはいえぬ」
「プレイエの事か」
黄金の淑女、プレイエ=エフランタ。この先に残る最後の黄金の戦士。
空焔はソールが最後にノールと戦ったのはプレイエにそそのかされたのではないか、そう問いかけたのだ。
「プレイエは、ヴァンソール様のお力を取り込みヴァンたろうとしている。その狙いがあったことは否定せぬ。
だが、ヴァンを動かすことなど誰にも出来はせんのだ。
ヴァンソール様はご自分の意志でノール殿と戦った。そこにプレイエごときの出る幕はない。
プレイエがどれだけ望もうが、あの器ではヴァンの力は汲めぬ。プレイエの望みがかなうことはない。 だが・・・」
ヴォーフラグの眼が失血で光を失った。空焔もそれがわかったがあえて触れずヴォーフラグとの最後の時間を優先した。
「あの娘なれば・・・」
「うむ・・・。フォルネアの体を使えばありえぬことではない。フォルネアはまだ小さな『闇』だった。
だが、順当に育てば魔王たり得る魔格を具えただろう」
天姫の体を持ち、魔族として生きることを選んだ少女。無垢な心と体は何物にも染まる。いずれフォルネアは騎士魔王と並び立つかもしれぬ。
空焔はそう思っていた。
「行くがいい・・・ ヴァンソール様の神殿はすぐそこだ。行って見届けるがいい・・・」
ヴォーフラグは動かなくなる。空焔はしばらく黙祷し、やがて刀を納め、ノールに一礼した。


彼らは第6の宮を抜け石段を駆け上がった。
ほどなく山頂の神殿が見えてくる。その神殿にはレリーフがかかっていなかった。石造りの神殿はこれまでの宮を3つ会わせたくらいに巨大だった。
やがて神殿の最奥にたどり着く。
そこには、動かぬ赤い鎧の騎士、そしてそれに頬擦りする一人の女。
黄金の淑女、プレイエ=エフランタ。
戦闘向きではない真珠をちりばめたロングドレスに、黄金の腕輪。金髪をアップに結い上げ、やや頬骨の張った顔立ちではあったが意志の強そうな美女であった。
その二人の背後に、眠るように目を閉じ、磔にされたフォルネアの亡骸があった。
プレイエは立ち上がり、挑発的な目をノールに向けた。
「あなたがヴァンノールね? 随分と小さいこと」
「ヴァンソールの勲だ」
「そのようね?」
プレイエはソールに愛おし気な目を向けた。
「このおかたにソールスティールをお渡ししたのは私・・・、心の奥底に眠っていた、貴方への拘りを後押ししたのも私・・・、
すべてソール様の御為にしたこと! なのになぜ⁉ ソール様は私に力をお与え下さらない!」
顔がゆがむのも気にせず叫ぶプレイエを、ノールは冷徹に切り捨てた。
「貴様の心には私欲しかないからだ。断じてソールのためではない」
「なんてこと…を!」
プレイエが血相を変える。
「ヴァンドール! ヴァンブレイズ! あのお方の似姿たちよ! あの美少年をヤっておしま・・・ え?」
プレイエが黄金の腕輪から2体の魔物を召喚する。1体は、空焔を配下に引き入れた時に対峙した機械仕掛けの騎士、もう1体は全身に魔炎を纏わせた不定形のガスの魔物・・・、だったがノールはメルブレイズを一閃させ、2体とも消し飛ばしていた。
「遊びは終わりだ! 下郎‼」
ノールのメルブレイズはプレイエの体を十五に切り裂いていた。
ぼとぼとと肉塊になって大地に這うプレイエだったが、まだ息絶えてはいなかった。
「なぜ・・ なぜ皆この私を拒む・・・」
呪詛とともに、ぎょろりとプレイエの眼がソールを見た。
「あれだけ尽くしてきた私に何も与えて下さらないソール様が憎い・・・ 同じ魔界衆でありながら私の事を汚いものでも見るようにねめつけたあの男たちが憎い・・・ 私と中身は同じでありながら、私より才に恵まれ、一目置かれていたサグザー、あの男が憎い・・・ 私を美しく生みながら美しい魂を育まなかった母が憎い・・・ 助けてくれなかった父が憎い・・・ そして、この女・・・」
キッと、プレイエの眼がフォルネアをにらんだ。
「若さと、美しさと、溢れんばかりの才・・・ その胸! その声‼ すべてが憎い・・・‼ 私を受け入れない! この魔界すべてが・・・
に く い ・・・‼」
細切れの肉塊だったプレイエの体が黒い魔力に染まり起き上がった。
「すべてが私を拒むなら、私はすべてを欲する‼ まずはこの娘、そして次はソール様だ! その次はお前だ! ヴァンノール‼
最後には創造主、カウアスオェル・メルティオまで取り込んでくれようぞ!」
プレイエの体が黒い魔力に溶けゲル状に変化していく。
ゲル状のプレイエは磔になっていたフォルネアの体にまとわりつき、その穴と云う穴からフォルネアの体内に消えた。
やがて、フォルネアは目を開いた。水色の美しい瞳はプレイエと同じ、黒い光を宿す瞳に変化していた。
「フッ・・・ フハハ・・・‼ 成功だ! やったぞ‼ この女、こんな魔力ものを隠し持っていたのか‼
この力があればソール様にアクセスできる・・・ 私はソール様と真のヴァンになるのだ‼」
哄笑を上げるプレイエだったが、一瞬動きを止めた。そして、唇がわずかに動いた
『ノール様・・・ あなたを・・・ 殺したくない・・・』
フォルネアの声だった。
『逃げて・・・ 逃げて下さい・・・』
懇願するような声、その声にノールは―
「黙れ」
簡潔な言葉で応えた。
『え・・・』
「何だと・・・?」
フォルネアとプレイエの言葉が重なる。
「フォルネア。この騎士魔王に逃げろとは随分不遜ではないか」
『ごめんなさい・・・ でも・・・ 今のあなたでは・・・』
「このヴァンノール、ヴァンとなり戦場を駆ける事数万。ただの一度も背を見せたことはないのだ。フォルネア、ヴァンの真髄を見せてやろう」
プレイエは、フォルネアは、呆気にとられたように固まった。
『うれしゅう・・・ ございます・・・』
「力の分際で、この私を差し置いて口をきくな‼ ヴァンノール、どこまで私を馬鹿にするか・・・ ソール様の前に貴様を吸収してやる‼」
プレイエはフォルネアの翼を大きく広げた。白い両翼から雷の弾が生じ、ノールに迫る。
ノールは雷の弾を薙ぎ払いながら声を張り上げた。
「グリムリーパーよ! わしに続け!」
フォルネアの眠れる力を扱う今のプレイエは、いかに力をつけつつあるとはいえノール一人で勝てる相手ではない。
さりとて、空焔以外のグリムリーパーなどこの戦場では荷物でしかない。
それがわかっていたノールは魔力を放出した。
魔力は空焔、アーサー、ブーケファルスを包み、力を与えた。
その分ノールの力は弱まるが、トータルで考えればグリムリーパーが強化された方が勝算は高くなった。
プレイエはさらに魔力を解放した。フォルネアの身にまとっていた装束は破れ飛び、両肩から角がせり出す。
さらに膝からも角がせり出し、爪は刃物の鋭さをもって伸びていく。翼は黒く染まり、瞳は赤く光る。全身は黒い魔力で覆われている。
まさに魔王の姿。いわば魔王の力に目覚めたフォルネア、ヴァンフォルネだった。
ヴァンフォルネはその腕を無造作に振り回した。
途端数え切れぬかまいたちがノールたちを襲った。ノールと空焔は切り払い、ブーケファルスとアーサーは力を合わせて魔力の楯を作り防御した。
「ほ・・・」
空焔が踏み出しヴァンフォルネに迫る。
ヴァンフォルネは空焔の神速の一撃を爪で受けとめた。
「光の炎よ!」
アーサーが叫び空焔の愛刀が光の炎を帯びる。
途端、ヴァンフォルネの爪は空焔に斬り飛ばされた。
「おのれ・・・」
ヴァンフォルネは全身から魔力を放った! 力ないものは砂になって消えるほどの大魔力だった。だが―
天法輪印シール!」
ブーケファルスの声が響いた。
途端ヴァンフォルネの放出した魔力が威力を半減した。
「小賢しい・・・ ヴァンブレイク!」
ヴァンフォルネは体の前で両手を合わせ、両手から魔力を放出した!
ブーケファルスに最期が迫る。だが―
「ルミナスミラー!」
アーサーがブーケファルスの前に割り込み術を完成させる!
ヴァンブレイクの魔力はそのままヴァンフォルネに跳ね返った!
「なに・・・⁉」
慌てて打ち消すヴァンフォルネだったが、その隙を見のがすノールではない。
ヴァンフォルネの背後に回り、その両翼を切り落とした!
「グガアッ!」
ヴァンフォルネが大地に落ちる。
「絶閃・・・ 天殺!」
空焔の秘奥義がヴァンフォルネの両腕を切り落とした。
「終わりだ」
両腕を落とされ、膝をついたヴァンフォルネをノールのメルブレイズが袈裟に切り裂いていた。


「く・・・ かはっ・・・」
ヴァンフォルネは黒い血を吐いた。両腕、翼を失い、力の大半を失ったヴァンフォルネはソールの方へ手を伸ばそうとした。
だが伸ばすべき手はすでになく、倒れこんでしまう。
「ソール様・・・ おたすけを・・・」
だが、応えるものは何もない。
「ふっ・・・ ふふ・・・ はっ・・・ あはははっ・・・! あはっ・・・ はははっ・・・ は・・・」
狂ったように笑いだしたヴァンフォルネだったが、うずくまり、最後には消え入りそうな声になった。
「あくまで・・・ 私は・・・ ヴァンではない・・・ と?」
ヴァンフォルネは顔を上げた。その瞳からは血の涙が流れる。
「おのれ・・・ なぜすべてが私を拒む⁉ 私が一体何をしたというのだ‼ ソール様・・・」
ヴァンフォルネは這いずり、ソールの体に頬をつけた。
「お怨みいたします・・・ お怨みいたしますぞ・・・‼」
ヴァンフォルネは射殺すような視線をソールに向けた。
「もはやどうなってもよい! あなたさまのお力で、この魔界すべてを・・・ 消し去ってくれましょうぞ‼」
その時、ソールの赤い鎧が動いた。
ソールはヴァンフォルネの腹をその小手で貫いていた。
「ぐぼっ・・・ ソール・・・ さま・・・」
ヴァンフォルネの体が痙攣する。そして、体内に充満した魔力が出口を求めたのか、ヴァンフォルネの体からあふれ出る。
『ノール様・・・ 逃げて下さい・・・!』
プレイエの意識が消えたせいか、フォルネアの声が、ヴァンフォルネの口から零れ出た。
『私の中で・・・ 力が・・・ はじけて・・・ もう・・・ 駄目です・・・・』
ヴァンフォルネの体から魔力が立ち昇る。
「フォルネア・・・!」
抑えようとヴァンフォルネの体を押さえつけるノールだったが、ヴァンフォルネの力は強く、魔鎧に亀裂が走る。
亀裂の間から懐にした『生命の力』が零れ落ちた。
「うぬ・・・!」
力でヴァンフォルネを抑えつけるノールだったが、視界の隅で赤い鎧が立ち上がるのが見えた。
『ノールよ・・・ この力、貴様に返そう・・・』
「兄上・・・?」
ヴァンソールの赤い鎧は赤い光となり、ノールの体を包み込んだ!
魔鎧が砕け散り、ノールの体が少年のものから歴戦に鍛え抜かれた戦士のものに変わる!
「ソールスティールに食らわれた我が力が戻った・・・ だと⁉」
ノールの魔力に反応したのか、ヴァンパレスにあったはずのリヴァイトールと魔鎧がこの場に現れた。
魔鎧が全身を覆い、リヴァイトールをその手にした姿は、在りし日の騎士魔王ヴァンノールそのものだった!
ヴァンノールはリヴァイトールを構え、切っ先をヴァンフォルネに向けた。
「リヴァイトールよ! その力、存分に振るえ‼」
久々の主の命に応え、咆哮するかのようなリヴァイトールから放出されたヴァンの魔力はヴァンフォルネの体を灼き、消し飛ばしていく。
「もうよかろう、フォルネアよ。 貴様は十分に働いた」
ヴァンの魔力がヴァンフォルネを灼き切った時、『生命の力』がヴァンフォルネの体を淡く包み込み、虹色の宝玉となり転がった。


===
ヴァンフォルネ用語集

神王(しんおう)
神界の支配者。人間界においてはいわゆる主神だったが魔界に滅ぼされた今ではもうその名を知るものも無い。

フェリイオン
原作の飛空艇ポジションの竜。救世英雄ナモルをカナリアサティアンや魔王城へ運んだ。

神喰(こうじき)
空焔の愛刀。殺害数が増すほどに切れ味を増す呪われた刀。使い手の精神を蝕むが空焔ほどの力があれば呪いの影響を受けない。

虎切(こせつ)
またの名を燕返し。使い勝手の良さから空焔が愛用する秘剣。
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