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35.いざ、敵の本拠地へ

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 魔道士団団長室に戻ってきた二人は、上級魔力回復剤を飲み、早速魔界へ行く準備を始めた。

「もう行くのかい? 休まなくても平気?」
「はい。ブラエがラルスを使っていつ攻めてくるか分からないので、できるだけ早く行きたいんです」
「……そうだね、ありがとう。じゃあこれ渡しておくよ。魔界行きの『移動ロール』……ファスの町の草原に落ちていたものだよ。保管してあったものを勝手に持ってきちゃったけど、まぁ大丈夫でしょ。ここに魔王の間の場所を魔力で書き込みすれば、直接行ける筈だ」
「ありがとうございます、バルトロマさん」
『スティ、どこ行くの? ボクも行くー!』

 エルドは起きてスティーナを待っていた。バルトロマが構い過ぎて目を覚ましてしまったらしい。

「エルド、ごめんね。これから私とイグナートは魔界に行くの。魔物達が沢山いる場所だから、エルドは連れて行けないの。あなたを危ない目には遭わせたくない。だって、私はエルドが大好きだもの。分かってくれる?」
『……うん、分かったよ。スティがボクの事とっても大好きだって! だからボクもワガママ言わずに、バルトと遊んで待ってるね!』
「ふふっ。バルトロマさんにあまりご迷惑を掛けないようにね? ありがとうエルド」

 スティーナがエルドを優しく抱きしめると、バルトロマが興奮気味に彼女に訊いてきた。

「スティーナちゃん、エルドの言葉が分かるのかい!?」
「はい。私達がトーテの町に行ってる間、この子と遊んでくれたんですね? バルトロマさんと遊んで待ってるって言ってます。バルトロマさんの事気に入ったみたい」
「えぇっ!? それはすごく嬉しいなぁ! 僕、昔からドラゴンに憧れててねぇ。ドラゴンに関する資料とか読み漁ってさ。もう大好きなんだよ! あーぁ、僕もエルドと喋れたらなぁ」
「心が通い合えば、頭の中で会話出来るみたいですよ。バルトロマさんなら出来る気がします」
「そうか! よし、早速遊ぶかエルドッ!」
『わーいっ! 遊ぼーっ!』

 バルトロマとエルドがはしゃいでいるのを、スティーナとイグナートは苦笑して眺める。


「これから敵の本拠地に赴くってのに、何か緊張感ねぇな」
「ふふっ、そうだね。……ねぇイグナート、本当にいいの? まだ間に合うから、ここに――」
「お前を一人で行かせたら、俺は一生自分を許さないだろうな。幸せな日々なんて一生やってこないだろうな……」
「う、その言い方ずるい……」
「そういう訳で、お前は俺を頼りにしてりゃいいんだよ」
「うん、実はすごく頼りにしてる。イグナートと一緒だと、すごく心強いの。ありがとう、一緒にいてくれて」
「…………っ」


 ニコリ、と嬉しそうに笑うスティーナを思い切り抱きしめたくなったが、今抱きしめたら離せなくなりそうで。

「…………ラルスと一緒に、ここに帰って来ような」
「うん!」

 何とか堪えてスティーナの頭を撫でるに留まった、理性が少しだけ成長したイグナートだった。


「君達の事は、後で皇帝陛下や神殿に伝えておくから。こちらの事は気にしないで、必ず無事に帰ってくるんだよ」
「あぁ、行ってくる」
「行ってきます。いい子にしててね、エルド」
『はーいっ! いってらっしゃい!』


 バルトロマとエルドに見送られ、二人は魔界行きの『移動ロール』を手に持ち、発動させたのだった。


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