私、自立します! 聖女様とお幸せに ―薄倖の沈黙娘は悪魔辺境伯に溺愛される―

望月 或

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10.悪魔辺境伯の仰天発言

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 外から聞こえる小鳥の鳴き声で、フレイシルは目を覚ました。
 キョロキョロと周りを見回すと、ここは自分の部屋のようだ。
 辺境伯の部屋を出ようとした時に気を失ってしまったから、彼がここまで運んでくれたのだろう。
 後でお礼を言わなきゃと思いながら、フレイシルは起き上がり支度をする。
 目覚めはスッキリだ。魔力も完全に回復したようだ。

 部屋を出て、朝ご飯を食べる為に食堂に向かう途中で、アディに会った。


「フレイシル! 良かった、起きたんだね! 倒れたって聞いたよ!? 大丈夫かい!?」


 心配そうに身体を見回すアディに、フレイシルは笑顔を見せて頷いた。


「良かった……ホント無理はしないでおくれよ?」


 自分を心配してくれるアディに嬉しくなり、自然と笑みを浮かばせながら彼女の手をギュッと握りしめる。


「フレイシル、もう身体は平気か?」


 そこへ、セリュシオンとカイが現れた。
 フレイシルは大きく頷くと、ジッとセリュシオンを見上げる。
 心做しか、彼の顔色が少し良くなり、目の下の隈も薄くなったような気がした。


「大丈夫だ。昨夜のことはコイツら以外には誰も言わない。安心してくれ」


 ニッと笑うセリュシオンに、フレイシルはホッとしたように笑みを返した。


「昨晩言えなかったから今言うな。フレイシル、ありがとな。お前のお蔭で魔物化しなくて済んだし、被害も出さずに済んだ。お前がいなかったらマジでヤバかったんだ。感謝してもしきれねぇよ」


 頭を下げて礼を言うセリュシオンに、フレイシルは目を白黒させて首と両手を左右に振る。


「でさ、お前に頼みがあるんだ。オレが屋敷にいる時は、毎晩オレと寝て欲しい」


 セリュシオンの仰天発言に、三人はギョッと思いっ切り瞳を見開いた。


「バカか主はっ!? そんなの、ずぇっったいダメに決まってるだろーがっ!! 大却下だ大大大却下っ!! このハレンチドスケベ野郎っ!!」
「主様っ、貴方はいつの間にそんな大胆スケベ野郎になってしまわれたのですかっ!? あぁっ、何と嘆かわしいっ!!」
「………………」
「はっ? ――あぁっ!? いやいや違う違うっ! そのまんまの意味だ! ベッドで横になって寝るだけだ! コイツが傍にいると、オレん中にいる魔物が大人しいんだよ! 要は“浄化”の為だ! マジで何もしねーよ! お前らの前で宣言してやるっ!」


 若干顔を赤らめながら弁解と宣言したセリュシオンに、アディとカイはそれなら……と了承した。
 フレイシルは、それで辺境伯の苦しみと痛みがなくなるなら……と、こちらも了承を出した。


「はぁ……ドッとヘンな汗かいちまったぜ……。じゃ、また夜にな、フレイシル」
「言い方が悪いんです。自業自得ですよ、主様」
「あー言う以外どう言えってんだよ!? お前らがヘンな方に持ってくのが悪いんだよ!!」


 セリュシオンとカイは言い合いながら去って行く。


「フレイシル、もし主がヘンなことしてきたら、思いっ切り股間を蹴り上げるんだよ。男は皆そこが弱点だからね」


 握り拳を作って真剣な表情で言ってきたアディに、フレイシルも真面目な顔をして頷いたのだった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 面会の約束もしていないのに、昨日の今日で突然メルローズがやってきた。
 メルローズが屋敷に向かって歩いて来ることに、玄関の窓を見て気付いたフレイシルは、また慌ててほっかぶりをする。
 そこへ丁度玄関にやって来たセリュシオンに、再び大笑いされた。カイはまた横を向いて俯き、身体を震わせている。


「お、お前……ホント、っかし……っ。何で毎回かぶってんだよ……っ。オレを笑い殺す気かっ?」


 腹を抱えて笑っているセリュシオンに説明している時間はなく、アタフタしている間に玄関の鈴が鳴ってしまった。
 セリュシオンに頭を下げて走り去る後ろ姿を、勝手に扉を開けて入ってきたメルローズは見てしまった。
 彼女は怪訝に眉を顰めたが、目の前にいる婚約者に笑顔を見せた。


「ご機嫌よう、愛しの婚約者様……フフッ。ダイヤの指輪、用意して下さいました?」
「するわけねーだろボケが」


 真顔のセリュシオンにズバッと返され、メルローズの口元が大きく引き攣る。


「今日は約束してねぇが……。ま、丁度いいか、早く伝えたかったし。今回の約束ナシの訪問に関しては大目に見てやるよ」
「え……? まさかプロポーズッ!? そうですわよね!? あぁ、ダイヤの指輪は結婚指輪まで取っておくのですね? フフッ、それを先に言って下さいな。では先にプラチナの婚約指輪を――」
「は? 勝手にフザけた話進めてんじゃねぇよ。――お前、もうここに来んな。必要ねぇわ。マジいらねぇ」
「……は……?」


 畳み掛けるように信じられない言葉が投げられ、メルローズの顔に引き攣りが戻る。


「お前の“浄化”がなくても、オレやっていけっから。【王命】も絶対に取り消す。だからお前とは金輪際サヨナラだ。もう二度とここに来んな。じゃあな」


 セリュシオンの、冷たく無表情のまま紡がれた言葉と同時に、カイが愕然とするメルローズの背中を押し、玄関の外に出した。


「馬車は待たせたままにしてありますので、気を付けてお帰り下さい。では失礼致します」


 カイは微笑し優雅に一礼すると、玄関の扉を閉めた。

「……っ」

 締め出され、暫く呆然としていたメルローズは、やがて身体を震わせて般若の顔つきに変化させた。



「……そんなの、絶対に許さない……。セリュシオン様の美貌と財産は私だけのモノよ……。側近の彼も結構いい男だし、いずれ必ず私の虜にしてあげるわ……。見てなさいよ……。貴方を決して逃さないから――」



 メルローズは親指の爪を噛みながらブツブツと口の中で呟くと、馬車に向かって歩き出したのだった。




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