9 / 16
◆本編◆
9.次々と明かされる真相
しおりを挟む「俺は何としてでも君に『愛してる』を言いたくて、毎晩寝ている君を抱きしめながら言葉にしようとしたけど、どうしても口から出てこなくて……。しかし、寝惚けている君はこの上なく可愛かったな。俺に擦り寄って抱きしめ返してきて、『ヴァルフレッド様好きー』と言いながら、俺の頬にキスしてきて……。本当に毎晩が至福の時間で……。あぁ、思い出しただけでも幸せだ……」
うっとりと言うヴァルフレッド様に、私は絶句する。
やっぱり抱きしめられてたー! しかも何てことをしてるの私っ!? いくらその顔が大好きだからって、き、キスとなっ!? 寝惚けるにも程があるわ!! 恥ずかしくて今すぐに死ねるわッ!!
「け、けど、どうして私を……あ、愛しているのですか? ヴァルフレッド様とは、婚姻式まで面識が無かったと思うのですが……」
「……アディル……君、社交場の時俺をずっと見ていただろう? 柱の陰から、遠くから」
ヒェッ、やっぱりバレてたー! 睨まれた時点で分かってたけどね!!
「あ、あはは……。あれだけ見てちゃ、やっぱり気付かれちゃいますよね……?」
「あぁ。俺を見てくる奴は、大抵打算的な奴らか、好奇心の目か、色目を使った女性達なんだが、君だけは違った。純粋な“好意”の視線だった」
“好意”という名の“欲望の塊”な視線ですけどね!?
「目が合えばすぐに逸らしたりその場から逃げる奴らが殆どの中、君は目が合うといつも可愛らしく微笑んでくれた」
あんなに怖い目つきで睨まれたら、普通の人は誰でも目を逸らしたり逃げ出したくなりますって!
――って、んんっ? 可愛らしくは分かりませんが、誤魔化し笑いはしていましたね、はい。
「けれどいくら目が合っても、君は微笑むだけで決してこちらには来ようとしない。いつも遠くから俺を見つめているだけ。周りの奴らは、公爵になった俺と繋がりを持とうと必死な者達が殆どなのに。――俺は君に興味を持った。何を考えているのか知りたいと思った。けれどこちらから声を掛けると逃げられると思った俺は、別の方法で素の君を知ろうと思った」
「別の方法……?」
「『変身魔法』で動物に変化して、君に近付いた」
……っ! もしかしてあのお利口な猫ちゃんが!?
「猫になって近付いた俺を、君は想像以上にすごく可愛がってくれた。君のことを知ったらすぐに止めようと思っていたのに、君の傍は居心地がとても良くて、気付けば三年もそれを続けていた」
……あの猫ちゃんがヴァルフレッド様だったなんて……。
確かに珍しい青藤の毛の色だったし、こちらの言葉を分かっているような仕草もしてたしな……。
……待って? 私が転生者ってこと、猫ちゃん姿のヴァルフレッド様に話してないよね……?
まぁでも、もし話してたとしても信じられない話だし、作り話だと思うだろうから大丈夫かな。
――あっ! 私、猫姿のヴァルフレッド様のお腹に思いっ切り顔を埋めて匂い嗅いだりしちゃってた!
猫好きなら、猫ちゃんが目の前にいたら絶対やっちゃうって! 『猫吸い』を我慢するの無理だって!
それについてはどう思っていたのかしら……。うぅっ、訊くの怖いから無かったことにしよう……。
「君は猫の俺に沢山の話を聞かせてくれたな。そして、君は本当に純粋な気持ちで俺の顔が好きだということが分かった。ただ見ているだけで幸せだと。近付いて俺を困らせたくないと。――俺は、初めて俺の顔に感謝をした」
「え?」
「君と離れたくなかったんだ。君の人となりに触れ、その時にはもう“好き”から“愛している”に気持ちが変わっていた」
「え……えぇっ!?」
「“猫”ではなく、“人”として君の傍にいたいという欲が出た俺は、どうしたらいいかローレンに相談した。彼は、『相手から好意を持たれているのなら、結婚の申し込みをしてみてはどうか』と提案してくれ、俺は早速君に縁談の申し込みをした」
「……! あれは政略結婚の申し込みではなかったのですか?」
「政略……?」
ヴァルフレッド様は、私の言葉にポカンとした表情を浮かべた。
「違う! それは断じて違うっ! 純粋に君と結婚して、ずっといつまでも一緒にいたかったんだ! そんな誤解をさせてしまったのなら、前以て君に会って文章でもいいから気持ちを伝えれば良かったな……。その前に、あの有り得ない噂の火消しが先か……。色々と順番が間違っていたようだ。気持ちが急っついてしまって……。本当に済まない……」
……ウン、ホントノホントニネ!!
1,401
あなたにおすすめの小説
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。
甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」
「はぁぁぁぁ!!??」
親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。
そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね……
って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!!
お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!!
え?結納金貰っちゃった?
それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。
※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
急に王妃って言われても…。オジサマが好きなだけだったのに…
satomi
恋愛
オジサマが好きな令嬢、私ミシェル=オートロックスと申します。侯爵家長女です。今回の夜会を逃すと、どこの馬の骨ともわからない男に私の純潔を捧げることに!ならばこの夜会で出会った素敵なオジサマに何としてでも純潔を捧げましょう!…と生まれたのが三つ子。子どもは予定外だったけど、可愛いから良し!
図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました
鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。
素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。
とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。
「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる