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1980年代

機動戦士Zガンダム

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宇宙世紀0087年、シャア・アズナブルはクワトロと名前を変え、反地球連邦組織エゥーゴに参加していた。

潜入したコロニー「グリーン・ノア」で、彼はティターンズが開発した黒いガンダムを目撃する。

一方、カミーユは憲兵からの尋問中に起きたガンダム墜落の混乱に乗じて脱走する。

ガンダムMk-Ⅱ奪取をたくらみ、再度コロニーに潜入するシャア。

その戦闘のさなか、カミーユはガンダムMk-Ⅱに乗り込み、操縦を見事にこなしてしまう。

それを目撃したブライトは、カミーユにアムロの再来を感じるのだった・・・。

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1985年3月2日~1986年2月22日、全50話

原作:矢立肇(原案)、富野由悠季

総監督:富野由悠季

キャラクターデザイン:安彦良和

メカニックデザイン:大河原邦男、藤田一己

音楽:三枝成章

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第50話「宇宙(そら)を駆ける」

 コロニーレーザー、グリプス2の前に浮かぶ撃沈した戦艦ラーディシュ。
 艦内船内にはカミーユと瀕死のエマがいた。
カミーユ「喋ったら疲れますよ。落ち着いたらアーガマに戻ります。しばらく辛抱してください」
エマ「もういいのよ、カミーユ。あたしの命を吸って」
カミーユ「えっ!?」
カミーユ「Zガンダムは人の意思を吸い込んで自分の力にできるのよ。そして戦いを終わらせる。それをあなたがやるのよ。カミーユ・ビダン!たくさんの人があなたを見守っている。あなたはひとりじゃない。さみしがることはなくてよ」
 そしてエマ中尉は息を引き取る。



 ティターンズのシロッコの乗るジ・オがティターンズの艦隊を守るために、コロニーレーザー砲を潰そうとしていた。
 エゥーゴのシャアの乗る百式がシロッコを追う。
 アクシズのハマーンの乗るキュベレイがシャアを追ってグリプス2の中に入って行く。



 エゥーゴの戦艦アーガマのブライト艦長は、コロニーレーザーを使おうとしていた。
 三機のモビルスーツがレーザー砲に向かっていることを知り、カミーユを守りに向かわせる。



 シロッコとハマーンに挟まれるシャア。
ハマーン「こんなところで朽ち果てる己の身を呪うがいい。もしも私のもとへ戻る意思があるのならば」
シロッコ「道を誤ったのだよ。貴様のようなニュータイプのなりそこないは粛清される運命なのだ。わかるか!」
シャア「まだだ、まだ終わらんよ!」



 百式を降りたシャアは、コローニー内居住ブロックの劇場跡に来ていた。
 突然、ステージ上のシャアをライトが照らす。
 ハマーンがシャアに銃を向ける。
 拳銃を捨てるシャア。
ハマーン「たいした役者だったよ、シャア。話し合いの余地がないとするならば。ここがお前の死に場所になるだろう」
シャア「いや、もうひとり役者がいるな」
 劇場跡にシロッコも現れる。
ハマ―ン「そうだな。こんな芝居じみたことはシロッコの領分だったな」
シロッコ「私は歴史の立会人に過ぎんからそうも見えるか。が、シャアよりは冷静だ」
シャア「私が冷静でないだと?」
シロッコ「そうだよ。貴様はその手に世界を欲しがっている」
ハマーン「シロッコの言う通りだろう、シャア。ならばザビ家再興に力を貸せばいい。そのうえで世界のことを共に考えよう。この小うるさい見物人を倒してな」
 ハマーン、今度は銃をシロッコに向ける。
シャア「ハマーン。私はただ世界を誤った方向に持ってゆきたくないだけだ」
ハマーン「では聞くが、ザビ家を倒しティターンズを廃除した世界で、お前は一体何をしようというのだ」
シャア「私は手を下さなくともニュータイプへの覚醒で人類は変わる。その時を待つ」
ハマーン「私に同調してくれなければ廃除するだけだ。そのうえでザビ家を再興させる。それがわかりやすく、人に道を示すことになる」
シャア「また同じ過ちを繰り返すと気付かんのか」
ハマーン「世界の都合と言うものを洞察できない男は、廃除すべきだ」
カミーユ「それは違う!」
 カミーユが銃を持って舞台上に現れた。
カミーユ「本当に排除しなければならないのは、地球の重力に魂を引かれた人間たちだろ!けどそのために大勢の人間が死ぬなんて間違ってる!」
シロッコ「生の感情を出すようでは俗人を動かすことはできても我々には通じんな!」
カミーユ「人の心を大事にしない世界を作って何になるんだ!」
シロッコ「天才の足をひっぱることしかできなかった俗人どもに何ができた。常に世の中を動かしてきたのは一握りの天才だ!ちっぽけな感傷は世界を破滅に導くだけだ、少年!」
 そこにファが助けに来てシャア達は逃げて再びモビルスーツに乗り込む。



シャアの乗る百式をハマーンのキュベレイが追う。
 その時、コロニーレーザーが起動を始める。
ハマーン「ん?コロニーレーザーが作動するのか?まずいな。これではコロニーレーザが発射される」
 グリプス2内から脱出するZガンダムたち。
 ジ・オとキュベレイも外に出る。

カミーユ「先に行ってください。あなたは、まだやることがあるでしょう。この戦争で、戦争で死んでいったひとたちは世界が救われると思ったから死んでいったんです。ぼくもあなたを信じますから!」
シャア「君のような若者が命を落としてそれで世界が救えると思っているのか。新しい時代を作るのは老人ではない!」


 カミーユ達がコロニーレーザーから脱出したのを確認したブライト。
ブライト「ようし、コロニーレーザー発射だ!」
 発射された巨大なレーザーによってティターンズの艦隊が沈んでいく。
シロッコ「う、くっ…。こ、これではエゥーゴに勝てん!」


Zガンダムがジ・オと戦う。
カミーユ「目の前の現実も見えない男が!」
シロッコ「さかしいだけの子供が何を言う!」
カミーユ「賢くて悪いか!」



 百式もまた、キュベレイと撃沈した戦艦の中で戦っていた。
 キュベレイのファンネルが百式の脚部を破壊する。
ハマ―ン「これで終わりにするか、続けるか、シャア!」
シャア「そんな決定権がお前にあるのか!」
ハマーン「口の利き方に気を付けてもらおう!」


 百式はキュベレイの背後の壁の割れ目を機銃で撃つ。
 戦艦が大爆発を起こす。
 そこからキュベレイはからくも脱出した。
ハマーン「シャア…。私と来てくれれば…」



 Zガンダムとジ・オの戦い。
カミーユ「お前だ!いつもいつも脇から見ているだけで人をもてあそんで!」
シロッコ「勝てると思うな、小僧!」
カミーユ「許せないんだ。俺の命にかえても。身体にかえても。こいつだけは!」
シロッコ「こいつ…なんだ?」
カミーユ「わかるはずだ。こういうやつはいかしておいちゃいけないって。わかるはずだ。みんな、みんなにはわかるはずだ!」
 死んでいった者たちがカミーユに話しかける。
エマ「あせりすぎよ。だからいけないの」
ライラ「パワーはダンチなんだよ。そん時はどうすればいい?」
カミーユ「俺の身体を、みんなに貸すぞ!」
 武器を捨てて突進するZガンダム。
エマ「それでいい、カミーユ」
カツ「現実の世界での生き死ににこだわるから、ひとつのことにこだわるんだ」
 その前に両手を広げて立ちふさがるサラ。
サラ「だめよ!」
カミーユ「まだそんなことを言う!」
レコア「サラ、おどき!」
ロザミア「そう、子供にはわからないんだから!」
フォウ「今はカミーユに任せるの」
サラ「嫌です。パプティマス様は…」
カミーユ「今日という時にはいてはならない男だ。わかってくれ、サラ」
それでも立ちふさぐサラ。
サラ「駄目です!パプティマス様は、私の…」
カツ「なんでそう、頭だけで考えて。そんなんじゃ疲れるばかりじゃないか。サラ」
サラ「だって…そうしないと…あたし…」
カツ「カミーユが見ているものを見てごらんよ。あの中にいる人だって、すぐこうして溶け合えるんだ」
サラ「本当?」
カツ「ああ」

シロッコ「Zが。どうしたんだ?」
 死者の魂を集めて赤く光るZガンダム。
シロッコ「私の知らない武器が内蔵されているのか?」
カミーユ「わかるまい。戦争を遊びにしているシロッコには。この俺の身体を通して出る力が」
シロッコ「身体を通して出る力?そんなものがモビルスーツを倒せるものか!」

 カミーユの横にフォウとロザミアが現れた。
フォウ「カミーユ。その力を表現してくれるマシンに乗っている」
ロザミア「Zガンダムにね」
シロッコ「…女の声!?」
カミーユ「まだ、抵抗するのなら!」
 Zガンダムはウェブライダー形態に変形し、ジ・オに突っ込んでゆく。
シロッコ「ジ・オ、動け!なぜ動かん!」
 ウェブライダーの先端がジ・オのコクピットを突き破り、シロッコを押し潰した。
カミーユ「ここから、いなくなれーっ!」

シロッコ「私だけが、死ぬわけがない。貴様の心を一緒につれていく。…カミーユ・ビダン」
カミーユ「シ、シロッコ。やったのか?光が、広がっていく」
 ジ・オは爆発した。
 そこから離れるZガンダム。


 ファのメタスがウェブライダーに近づく。
ファ「カミーユ、生きてるんでしょ?カミーユ、返事をして!カミーユ」
 モニターにカミーユが映った。
カミーユ「大きな星が点いたり消えたりしている。あはは。大きい。彗星かな?いや、違う、違うな。彗星はもっとバーッと動くもんな」
 カミーユは精神疾患を発症していた。
 驚いた表情のファ。

カミーユ「暑っ苦しいなあ、ここ。出られないのかなあ?おい、出してくださいよ。ねえ」

 恐怖の顔のファ。
ファ「艦長…ブライト艦長…カミーユ・ビダンが…聞こえますか…アーガマ…」


 アーガマに帰って行くZガンダムとメタス。
 宇宙に浮かぶガンダムMk2の残骸。
ファ「そう…お前もアーガマに帰りたいのね?」


 壊れた百式の上半身だけが宇宙を漂い消えてゆく。



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 前作「機動戦士Ζガンダム」の一年戦争から7年後の宇宙世紀0087年に起きたグリプス戦役を描く作品。

 とにかく難解な固有名詞が飛び交い、ボーと見てただけでは誰が何をしているのか全然わかりませんでした。

 ニュータイプの能力も前作よりもオカルトじみて、死者の魂集めてモビルスーツを倒した時は視聴者ポカーンでした。

 また、主人公が精神疾患を発症して終わる最終回は視聴者に大きな衝撃を与えました。

 後に作られた新訳劇場3部作ではカミーユは無事で、最後ファと宇宙空間でイチャイチャしながら終わりますので安心してください。

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声の出演

カミーユ・ビダン:飛田展男

シャア・アズナブル:池田秀一

ブライト・ノア:鈴置洋孝

ファ・ユイリィ:松岡ミユキ

エマ・シーン:岡本麻弥

フォウ・ムラサメ:島津冴子

パプテマス・シロッコ:島田敏

ハマーン・カーン:榊原良子

ナレーター:小杉十郎太
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