婚約者を借りパクされました

朝山みどり

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13 先ずは婚約破棄。次も婚約破棄。

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「ちょっとふざけただけで・・・」とマイケルが言うと
「ふざけた?アミスト家の婚約者を相手にふざけたのか?」アミスト侯爵が静かに言った。
「まぁいい話を戻そう。ダグラス侯爵。親睦会でクリスティーン嬢を婚約者として紹介したそうだな。もうここまで行ってはどうしようもない。愚息とそちらのブラウン伯爵の息女の婚約は破棄と言うことにさせて貰う。早めに言ってくれれば醜聞を防げたのに。金が名誉は回復しないが、金を使えば気が晴れる。慰謝料はそれなりの金額を請求する。アレクが帝国へ行って一年もたってないというのに」
「待って下さい、待って下さい。どうしてそんな話になるのですか?」と父が必死に言うが
「どうして、そんな話にならないと思うのか?」とアミスト侯爵が不思議そうに言った。
その時、兄のギルバードが天幕に入って来た。

「お呼びと伺いましたが」と兄が言うと
「ギルバード殿、今のわたしたちを見て、なにを推察する?」とアミスト侯爵が聞いた。
「両家、いえ三家の婚約の結び直しでしょうか?」と兄が答えた。
「何故、そう思う?」と父が兄に言った。

「何故?そうですね。マイケル殿とクリスティーンの揃いの衣裳を見たら誰でも思うでしょう。学院のことも、二人が市井で過ごしていたこと。それに懇親会と言う公の場に婚約者同士といった態度でね。いっそ、そこまで堂々としていれば二人の仲は公認だと思いますね」と父に答えて、ついでダグラス侯爵に向かって
「親睦会にクリスティーンが来て、なにも思わなかったのですか?」と聞いた。
「レイチャルの都合とはなんだろうかと思ったのだが・・・もう少し考えるべきだった」とダグラス侯爵は答えた。

そして、わたしの前に立つと
「マイケルの親として、無責任なことをした。婚約は破棄させて貰う。マイケルの有責だ。長いこと愚息の面倒を見て貰ってお礼を言う」と言うとわたしに頭を下げた。

「どうしてだ。ちょっとふざけただけだ。これくらいがなんだって言うのだ。レイが取りなしてくれたらいつものように解決するだろう」とマイケルが言った。

「そうよ、レイ。クリスティーンを守るためだったのよ。わかるでしょ」と母が言った。
「わかりますわ。でもですね。ほら!お姉様とアミスト侯爵家御子息との婚約は、さきほど破棄されておりますから、マイケルとお姉様は堂々と婚約者として、今まで通りお付き合いできますわね。守れます」と答えると

「そういうことじゃないのよ。だから・・・」と母は呟いたが、はっきりと言うことができないようだった。

「アレクサンダー様!ご理解いただけますわよね。わたくしはマイケル様とは義姉と妹の婚約者の関係でございます」とお姉様は面白そうに見ていたアレクサンダー様の前に立って涙をこぼしながら言い出した。
「理解ですか?そうですね。行為そのものについてはまだ、詳しく聞いておりませんが、あなたとマイケル殿の服装を見て状況を判断できます。そこまで突き抜けたらいっそ清々しいですね。心が洗われます」とアレクサンダー様が言った。
「容赦ねえな」とデニスが言ったのが、意外と大きく聞こえて、兄が軽く笑った。
それを見てわたしも笑いそうになったが必死でこらえた。それなのに
「アレク、わたしはそういう教育はしてな・・・」と笑いだしたのが、アミスト侯爵だった。

それで、天幕のなかが抑えた笑いに満ちてしまった。アレクサンダー様って・・・

「冗談ついでに・・・冗談であればいいのだが、そのギルバード殿が女の衣装にうるさいと言うのはどういうことなのか聞いてもいいか?」とアミスト侯爵が笑いを抑えて言った。

「うるさい?ドレスに?」と兄は戸惑った。そこにバージルが登場して
「お兄様は上のお姉様が一度しか着てないドレスをレイ姉さまにあげるのをやめるように煩く言うでしょう。それで上のお姉様は泣いてた」と言うと母が慌てて
「バージル。いらっしゃい」と言ったが、アミスト侯爵はバージルににっこりと笑いかけると
「そうなのか?それはいつもかな?」と言った。
「違うよ。今、レイ姉さまが着てるのは違う。せっかく上のお姉様が着てあげようとしたのに、レイ姉さまは嫌がったんだ。でもレイ姉さまは近づいたらいけないからね。仕方ないんだ。僕の婚約者は上のお姉様とレイ姉さまが着たドレスを貰えるんだ。いいでしょ」と言った。

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