婚約者を借りパクされました

朝山みどり

文字の大きさ
22 / 23

22 クリスティーン目線

しおりを挟む
両親はわたしを一番可愛がってくれた。なによりもわたしを優先してくれた。
婚約者も最初にわたしが選んで残ったほうを妹に渡した。
だが、これはちょっと失敗だった。妹の婚約者のほうがおもしろくて注目されたのだ。
いつも人に囲まれて、盛り上がっている。その隣りにいるのが妹だった。
わたしの婚約者はお金持ちで、頭がよく、飛び切り美しい顔をしていた。だから、妹へ来たその話をわたしが貰った。両親もそれがいいと言ってくれた。
それなのに婚約者は全然面白くないのだ。

その婚約者が外国へ留学した。婚約者は家族にわたしのことを頼んだ。
わたしはそれを利用して、マイケルをそばに置いた。彼もまんざらじゃなさそうだった。いや、私と一緒なのを喜んだ。だって最初に婚約しようとしたのはわたしだったし。
それから、面白おかしく愉快な日が続いた。クレープ屋に行ったり、花園に行ったりどこに行っても注目の的だった。
これがほんとうのわたしの生活だと思った。
一番楽しいのが騎士団の懇親会だった。ダグラス侯爵には妹が体調を崩したから代わりに来たと挨拶した。すると信用されて妹へのお見舞いを伝えられた。

この懇親会には代わりに選んであげた妹の園遊会用の衣裳を着て行った。
はしゃぎ過ぎて、ジュースのシミをつけてしまったが、そんなに気になるものじゃなかった。それなのに、妹はわたしを非難した。
「近寄るなと言うお父様の命令だから、もうどうでもいいけど。わたしは近寄らない。あなたも近寄らないでね」
きつく言われて泣きそうになった。一回しか着てないのにわざと汚したわけでもないのに・・・
そして園遊会の日。マイケルはわたしと結婚出来るのに嬉しそうじゃなかった。
わたしもマイケルとの結婚は嬉しくなかった。
だって、妹の相手はすごくかっこいい。衣裳も豪華だった。
わたしより下が当たり前のくせに・・・
だけど伯爵家を継ぐことになったのは嬉しかった。お父様もお母様もわたしを手元に置けるのを喜んでくれた。
だけど、マイケルが騙されてすべて失った。そして平民が、バージルがわたしのものを奪い取った。
わたしとマイケルは働き出したが、身分にふさわしくない仕事をさせられた。

そして、マイケルとも別れて今は、農園で働いている。

昨日からさくらんぼのジャム作りが始まった。
一日甘いジャムの匂いを嗅いでいると食欲がなくなる。

「食べられない?匂いがだめかしら?」と話しかけられた。
無言で相手の顔を見た。
「ふふふ。あなた貴族ね。ここは大抵の人が貴族よ。あなただけじゃないわ」
「そうなの?でもこうなってはなんの価値もないわね」
「そうよね。こんなはずじゃなかった」と彼女は言った。わたしが思っていることを彼女が言った。
「そのうちわかるけど、教えるね。ここは行き場のなくなった貴族の受け皿なのよ」
「え?」
「だってね、平民に混ざって仕事っていやでしょ。貴族の経験を活かして平民の家で侍女もいいけど・・・平民に仕えたくないでしょ。ここで働いている間に自分の道が見つかるといいわね」
彼女はそう言うと離れて行った。

さくらんぼジャムの季節が終わったら、スモモのブリザードとジャム。
壁の予定表を見ると、次はマーマレード。りんご。

わたしが、こんなことをしているなんて未だに信じられない。
更衣室で鏡をみる度に、自分でもがっかりする。つやのない髪、くすんだ肌。
この前、視察とかで見学者がたくさん来た。
わたしたちは普段通り作業していて欲しいと言うことだったが、一行を案内していたのはレイだった。
見ていると質問にてきぱきと答え、時には笑いが起こっている。
わたしにふさわしい仕事だ。わたしがやるほうがもっと上手に出来るのに。

わたしは、ずっとレイの上だったのに、今は下だ。
そして、これは変わらない・・・
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ・取り下げ予定】契約通りに脇役を演じていましたが

曽根原ツタ
恋愛
公爵令嬢ロゼは、優秀な妹の引き立て役だった。周囲は妹ばかりを優先し、ロゼは妹の命令に従わされて辛い日々を過ごしていた。 そんなとき、大公から縁談を持ちかけられる。妹の引き立て役から解放されたロゼは、幸せになっていく。一方の妹は、破滅の道をたどっていき……? 脇役だと思っていたら妹と立場が逆転する話。

これでもう、『恥ずかしくない』だろう?

月白ヤトヒコ
恋愛
俺には、婚約者がいた。 俺の家は傍系ではあるが、王族の流れを汲むもの。相手は、現王室の決めた家の娘だそうだ。一人娘だというのに、俺の家に嫁入りするという。 婚約者は一人娘なのに後継に選ばれない不出来な娘なのだと解釈した。そして、そんな不出来な娘を俺の婚約者にした王室に腹が立った。 顔を見る度に、なぜこんな女が俺の婚約者なんだ……と思いつつ、一応婚約者なのだからとそれなりの対応をしてやっていた。 学園に入学して、俺はそこで彼女と出逢った。つい最近、貴族に引き取られたばかりの元平民の令嬢。 婚約者とは全然違う無邪気な笑顔。気安い態度、優しい言葉。そんな彼女に好意を抱いたのは、俺だけではなかったようで……今は友人だが、いずれ俺の側近になる予定の二人も彼女に好意を抱いているらしい。そして、婚約者の義弟も。 ある日、婚約者が彼女に絡んで来たので少し言い合いになった。 「こんな女が、義理とは言え姉だなんて僕は恥ずかしいですよっ! いい加減にしてくださいっ!!」 婚約者の義弟の言葉に同意した。 「全くだ。こんな女が婚約者だなんて、わたしも恥ずかしい。できるものなら、今すぐに婚約破棄してやりたい程に忌々しい」 それが、こんなことになるとは思わなかったんだ。俺達が、周囲からどう思われていたか…… それを思い知らされたとき、絶望した。 【だって、『恥ずかしい』のでしょう?】と、 【なにを言う。『恥ずかしい』のだろう?】の続編。元婚約者視点の話。 一応前の話を読んでなくても大丈夫……に、したつもりです。 設定はふわっと。

愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし

香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。  治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。  そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。  二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。  これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。  そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。 ※他サイトにも投稿しています

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?

百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」 あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。 で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。 そんな話ある? 「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」 たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。 あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね? でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する? 「君の妹と、君の婚約者がね」 「そう。薄情でしょう?」 「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」 「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」 イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。 あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

貴方のことなんて愛していませんよ?~ハーレム要員だと思われていた私は、ただのビジネスライクな婚約者でした~

キョウキョウ
恋愛
妹、幼馴染、同級生など数多くの令嬢たちと愛し合っているランベルト王子は、私の婚約者だった。 ある日、ランベルト王子から婚約者の立場をとある令嬢に譲ってくれとお願いされた。 その令嬢とは、新しく増えた愛人のことである。 婚約破棄の手続きを進めて、私はランベルト王子の婚約者ではなくなった。 婚約者じゃなくなったので、これからは他人として振る舞います。 だから今後も、私のことを愛人の1人として扱ったり、頼ったりするのは止めて下さい。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

処理中です...