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21 マイケル
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いつも、助けてくれていたレイが助けてくれなかった。
我が家の懇親会にクリスティーンを連れて行ったのは確かにやりすぎだった。
そしたら、普段ふざけている騎士仲間が
「婚約者の交代か」とふざけたのでにやにや笑っていたんだ。
そのままの勢いで園遊会にクリスティーンをエスコートしてしまった。衣装もお揃いにしてしまった。だって
「レイだって着るのだから、同じよ。作ってしまいましょう」と言われてそうだなと思ってしまったのだ。
そして天幕で、アミスト侯爵からいろいろ言われている時、いつものようにレイが助けに来てうまく纏めてくれるのを待っていたのに、レイは来てくれなかった。
そしてクリスティーンとの結婚が決まってしまった。
後で父上にも叱られた。
「レイチャル嬢はいつも程よくお前を窘めてくれていた。そしてお前が少々ハメをはずしても上手くことをおさめてくれていた。だからお前とお前の甘えた仲間は好きに出来ていたのだ。わたしもうかつだったし、彼女に甘えていた。
彼女がどうでもいいと思った時から、お前は破滅に向かって歩いて行ったのだ。あの愚かな娘と楽しく腕を組んでな。我が家も責任は慰謝料でしか表せない。
だが、騎士団団長はお前に譲るつもりだ。なにも起こさずに腕を磨くのだ」
そう言うと父は俺に笑いかけると
「まぁ頑張るんだ」と言った。
それから、俺は剣をがんばった。それ以上に精神を鍛えた。前からレイが言っていたのだ。
「マイケル、人はあなたの腕だけに惹かれるのではありませんよ。人間性です。賑やかに騒げと言ってませんよ。もう少しだけ分別を持って」
「だって、レイ。俺が賑やかに喋っていると、周りに人が集まるじゃないか。それって人間性だろ?」
「確かにそうですが、そう言った場合敵もそこを見てますよ。やりすぎはダメです。昨日は公爵閣下を怒らせたでしょ?」
「それはレイが。レイ様があいつをおだてて」
「やめて下さい。わたしは真摯に謝ったのですよ。それでなんとかです」
「マイケルは面白いと評判なんだから、これからは少し『考えている』と思われるくらいでちょうどです」
そうだ。少し喋るのを控えよう。そう決心していたのだ。
それがあの剣術の時間。平民ごときが俺に勝った。その無礼を咎めようとしただけなのに・・・
あの時の平民、ラルフ・ペレスは今、騎士団で活躍している。平民出身を売りにして媚びているのだ。
そして、それで俺は団長の座を譲って貰えなかった。
ブラウン伯爵を継ぐ話が来た時は嬉しかった。あの間抜けなバージルが継ぐと思っていたら、平民に身売りするとかで・・・
だから、俺は伯爵家を盛り立てようと思ったのだ。
このマイケルがやるのだ。うまくいくに決まってる。
それで収穫を担保に道を作るという会社に投資した。用地買収が大変だと聞いて伯爵家の名を出して協力した。するとうまく行きだした。
「ブラウン伯爵閣下。やはり貴族の名前は有効です。代表として名前を貸して下さいませんか?面倒な仕事はわたしどもがやります。ただ、お名前を貸して下さればいいのですが」
そう言われた時は、驚いた。同時に当然だ。とも思った。俺の名前でかなり仕事をしているしな
「それに代表ともなれば、配当金の他にもお金の割り当てがありますし・・・もちろん責任も増えますが・・・仕事はわたしどもがやりますよ。いかがでしょうか?」
いい話だ。こうして思い返してもいい話だ。だが、騙された。
会社は潰れ代表の俺がすべての責任と負債を抱えた。
我が家の懇親会にクリスティーンを連れて行ったのは確かにやりすぎだった。
そしたら、普段ふざけている騎士仲間が
「婚約者の交代か」とふざけたのでにやにや笑っていたんだ。
そのままの勢いで園遊会にクリスティーンをエスコートしてしまった。衣装もお揃いにしてしまった。だって
「レイだって着るのだから、同じよ。作ってしまいましょう」と言われてそうだなと思ってしまったのだ。
そして天幕で、アミスト侯爵からいろいろ言われている時、いつものようにレイが助けに来てうまく纏めてくれるのを待っていたのに、レイは来てくれなかった。
そしてクリスティーンとの結婚が決まってしまった。
後で父上にも叱られた。
「レイチャル嬢はいつも程よくお前を窘めてくれていた。そしてお前が少々ハメをはずしても上手くことをおさめてくれていた。だからお前とお前の甘えた仲間は好きに出来ていたのだ。わたしもうかつだったし、彼女に甘えていた。
彼女がどうでもいいと思った時から、お前は破滅に向かって歩いて行ったのだ。あの愚かな娘と楽しく腕を組んでな。我が家も責任は慰謝料でしか表せない。
だが、騎士団団長はお前に譲るつもりだ。なにも起こさずに腕を磨くのだ」
そう言うと父は俺に笑いかけると
「まぁ頑張るんだ」と言った。
それから、俺は剣をがんばった。それ以上に精神を鍛えた。前からレイが言っていたのだ。
「マイケル、人はあなたの腕だけに惹かれるのではありませんよ。人間性です。賑やかに騒げと言ってませんよ。もう少しだけ分別を持って」
「だって、レイ。俺が賑やかに喋っていると、周りに人が集まるじゃないか。それって人間性だろ?」
「確かにそうですが、そう言った場合敵もそこを見てますよ。やりすぎはダメです。昨日は公爵閣下を怒らせたでしょ?」
「それはレイが。レイ様があいつをおだてて」
「やめて下さい。わたしは真摯に謝ったのですよ。それでなんとかです」
「マイケルは面白いと評判なんだから、これからは少し『考えている』と思われるくらいでちょうどです」
そうだ。少し喋るのを控えよう。そう決心していたのだ。
それがあの剣術の時間。平民ごときが俺に勝った。その無礼を咎めようとしただけなのに・・・
あの時の平民、ラルフ・ペレスは今、騎士団で活躍している。平民出身を売りにして媚びているのだ。
そして、それで俺は団長の座を譲って貰えなかった。
ブラウン伯爵を継ぐ話が来た時は嬉しかった。あの間抜けなバージルが継ぐと思っていたら、平民に身売りするとかで・・・
だから、俺は伯爵家を盛り立てようと思ったのだ。
このマイケルがやるのだ。うまくいくに決まってる。
それで収穫を担保に道を作るという会社に投資した。用地買収が大変だと聞いて伯爵家の名を出して協力した。するとうまく行きだした。
「ブラウン伯爵閣下。やはり貴族の名前は有効です。代表として名前を貸して下さいませんか?面倒な仕事はわたしどもがやります。ただ、お名前を貸して下さればいいのですが」
そう言われた時は、驚いた。同時に当然だ。とも思った。俺の名前でかなり仕事をしているしな
「それに代表ともなれば、配当金の他にもお金の割り当てがありますし・・・もちろん責任も増えますが・・・仕事はわたしどもがやりますよ。いかがでしょうか?」
いい話だ。こうして思い返してもいい話だ。だが、騙された。
会社は潰れ代表の俺がすべての責任と負債を抱えた。
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