20 / 23
20 姉の来訪
しおりを挟む
ブラウン伯爵家は爵位と借金全てが、コートロード家に吸収された。爵位はバージルが継いだ。血筋的には直系が継いだ形になり、バージルはコートロード伯爵となった。
わたしは第二王子が辣腕を奮って国を強引に動かして行くと思っていたが、彼は広く意見を取り入れている。多くから意見を聞いて、何人かをその任に当て話し合いながら進めていっている。うるさ型の貴族も自分の意見に耳を傾ける宰相を見ているので、協力しているそうだ。
姉とマイケルは散々喚いたが、コートロード家に雇われた。
マイケルは護衛に加わったが、訓練を怠った剣の腕は落ちてしまい、事務は最初からできないと言うことで雑用係りとして働いているそうだ。
姉は侍女として雇ったが、いつも不機嫌な顔で物を雑に扱うので、下働きに落ちるか、鬼の侍女長マリアの下で再教育かと選ばせて今、教育を受けているそうだ。
この侍女長は、没落した公爵家にいたそうで、アリスが直接雇い入れたらしい。
この公爵家の没落は皆が驚いた。宰相に目をかけていると豪語していた人物が当主だったのだ。
国政に力を注ぎすぎたのかな?
でも、不思議だ。宰相は貴族を大切にしてその意見を多く取り入れて国を運営している。それなのに貴族が力を失くし、平民が伸びている。
それは予想通りなのだが、こういう過程は予想しなかった。
そしてコートロード家は没落していく貴族から家宝と呼ばれる品を買い取っている。
その由来と失われていく家名はコートロード家の玄関ホールに飾られた後、倉庫に保管される。
「奥様、お姉さまがお見えですが・・・」と侍女が急ぎ足で伝えて来た。
断りきれなかったのね、いいわ。
「こちらに案内して、お茶を用意したら下がって」と言うと机の上の資料を閉じて原稿を引き出しにしまった。
前に引き裂かれたことがあるのだ。怖いわねぇ!
「もう、侍女の躾はどうなっているの?」と言いながら姉が部屋に入って来た。
「お姉さま、何度も申し上げました」と言ったところで言い直した。
「何度も言いましたよ。あなたはバージルの家に雇われています。そして休みなく働くように言いつけられています。ここに遊びに来る時間はありません。すぐに戻ってマリアに謝って。仕事に戻って。すぐにです。わたしにだって下らない愚痴を聞く時間はないのですよ」
「ひどいわ。落ち目の伯爵家を押し付けたくせに」
「落ち目になったのはご自分とマイケル様が原因ですよ」
「マイケルはわたしを守ろうと・・・」
「そう言って遊び回ったではありませんか」
「それは・・・」
「もう何度もこの会話を繰り返してます。いい加減にして下さい。あなたは没落したのです。国で屈指の安定した領地でした。それを・・・」
「なによ。マイケルってはずれもいい所よ」
「何度も言いますけど。それを選んだのは、お姉さまです」
予定時間になったので侍女と護衛を呼んで姉をコートロード家に送り返した。
姉に使う時間は十分としていたが、これからは八分にしよう。
わたしは第二王子が辣腕を奮って国を強引に動かして行くと思っていたが、彼は広く意見を取り入れている。多くから意見を聞いて、何人かをその任に当て話し合いながら進めていっている。うるさ型の貴族も自分の意見に耳を傾ける宰相を見ているので、協力しているそうだ。
姉とマイケルは散々喚いたが、コートロード家に雇われた。
マイケルは護衛に加わったが、訓練を怠った剣の腕は落ちてしまい、事務は最初からできないと言うことで雑用係りとして働いているそうだ。
姉は侍女として雇ったが、いつも不機嫌な顔で物を雑に扱うので、下働きに落ちるか、鬼の侍女長マリアの下で再教育かと選ばせて今、教育を受けているそうだ。
この侍女長は、没落した公爵家にいたそうで、アリスが直接雇い入れたらしい。
この公爵家の没落は皆が驚いた。宰相に目をかけていると豪語していた人物が当主だったのだ。
国政に力を注ぎすぎたのかな?
でも、不思議だ。宰相は貴族を大切にしてその意見を多く取り入れて国を運営している。それなのに貴族が力を失くし、平民が伸びている。
それは予想通りなのだが、こういう過程は予想しなかった。
そしてコートロード家は没落していく貴族から家宝と呼ばれる品を買い取っている。
その由来と失われていく家名はコートロード家の玄関ホールに飾られた後、倉庫に保管される。
「奥様、お姉さまがお見えですが・・・」と侍女が急ぎ足で伝えて来た。
断りきれなかったのね、いいわ。
「こちらに案内して、お茶を用意したら下がって」と言うと机の上の資料を閉じて原稿を引き出しにしまった。
前に引き裂かれたことがあるのだ。怖いわねぇ!
「もう、侍女の躾はどうなっているの?」と言いながら姉が部屋に入って来た。
「お姉さま、何度も申し上げました」と言ったところで言い直した。
「何度も言いましたよ。あなたはバージルの家に雇われています。そして休みなく働くように言いつけられています。ここに遊びに来る時間はありません。すぐに戻ってマリアに謝って。仕事に戻って。すぐにです。わたしにだって下らない愚痴を聞く時間はないのですよ」
「ひどいわ。落ち目の伯爵家を押し付けたくせに」
「落ち目になったのはご自分とマイケル様が原因ですよ」
「マイケルはわたしを守ろうと・・・」
「そう言って遊び回ったではありませんか」
「それは・・・」
「もう何度もこの会話を繰り返してます。いい加減にして下さい。あなたは没落したのです。国で屈指の安定した領地でした。それを・・・」
「なによ。マイケルってはずれもいい所よ」
「何度も言いますけど。それを選んだのは、お姉さまです」
予定時間になったので侍女と護衛を呼んで姉をコートロード家に送り返した。
姉に使う時間は十分としていたが、これからは八分にしよう。
1,961
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ・取り下げ予定】契約通りに脇役を演じていましたが
曽根原ツタ
恋愛
公爵令嬢ロゼは、優秀な妹の引き立て役だった。周囲は妹ばかりを優先し、ロゼは妹の命令に従わされて辛い日々を過ごしていた。
そんなとき、大公から縁談を持ちかけられる。妹の引き立て役から解放されたロゼは、幸せになっていく。一方の妹は、破滅の道をたどっていき……?
脇役だと思っていたら妹と立場が逆転する話。
これでもう、『恥ずかしくない』だろう?
月白ヤトヒコ
恋愛
俺には、婚約者がいた。
俺の家は傍系ではあるが、王族の流れを汲むもの。相手は、現王室の決めた家の娘だそうだ。一人娘だというのに、俺の家に嫁入りするという。
婚約者は一人娘なのに後継に選ばれない不出来な娘なのだと解釈した。そして、そんな不出来な娘を俺の婚約者にした王室に腹が立った。
顔を見る度に、なぜこんな女が俺の婚約者なんだ……と思いつつ、一応婚約者なのだからとそれなりの対応をしてやっていた。
学園に入学して、俺はそこで彼女と出逢った。つい最近、貴族に引き取られたばかりの元平民の令嬢。
婚約者とは全然違う無邪気な笑顔。気安い態度、優しい言葉。そんな彼女に好意を抱いたのは、俺だけではなかったようで……今は友人だが、いずれ俺の側近になる予定の二人も彼女に好意を抱いているらしい。そして、婚約者の義弟も。
ある日、婚約者が彼女に絡んで来たので少し言い合いになった。
「こんな女が、義理とは言え姉だなんて僕は恥ずかしいですよっ! いい加減にしてくださいっ!!」
婚約者の義弟の言葉に同意した。
「全くだ。こんな女が婚約者だなんて、わたしも恥ずかしい。できるものなら、今すぐに婚約破棄してやりたい程に忌々しい」
それが、こんなことになるとは思わなかったんだ。俺達が、周囲からどう思われていたか……
それを思い知らされたとき、絶望した。
【だって、『恥ずかしい』のでしょう?】と、
【なにを言う。『恥ずかしい』のだろう?】の続編。元婚約者視点の話。
一応前の話を読んでなくても大丈夫……に、したつもりです。
設定はふわっと。
愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし
香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。
治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。
そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。
二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。
これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。
そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。
※他サイトにも投稿しています
妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?
百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」
あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。
で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。
そんな話ある?
「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」
たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。
あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね?
でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する?
「君の妹と、君の婚約者がね」
「そう。薄情でしょう?」
「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」
「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」
イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。
あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。
====================
(他「エブリスタ」様に投稿)
【完結】わたしの欲しい言葉
彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。
双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。
はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。
わたしは・・・。
数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。
*ドロッとしています。
念のためティッシュをご用意ください。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。
全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。
しかも、王妃も父親も助けてはくれない。
だから、私は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる