王妃はわたくしですよ

朝山みどり

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06 学院生活

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 謁見室には、誰もいなかった。椅子に座って待った。ジュディは心臓が飛び出すかと思ったが、なにも起こらず誰もなにも言わなかった。

「よし、これで終わり。国王と人質は面談した。とっても友好的でした。疲れているだろうが、次は学院だ」と書類を取り出してジュディに渡した。

 言いたいこと、質問したいことがあふれた。誰にも会っていないのに終わり? だけどバージルが笑っているからいいだろうと・・・

 それでジュディはなにも言わずに書類を受け取って目を見開いた。



「これだけですか?」とバージルを見て

「ジュディ・ストーン・・・・・・だけ・・・・」と続けた。

「あぁ、謎の令嬢だからな。荷物は学生にふさわしい物を用意している。使わない物は王宮で預かっておくからな。王妃用の荷物はいらないだろう。それから、これが当面のこづかいだ。必要な物を買え」


「時々、わたしが会いに行くから、お利口でいるんだ」とバージルが言うと

「それでは、なにも話せなくてジュディが困ります」とライリーが口を出し

「そうですね。ジュディのご両親は反対を押し切って結婚をしました。愛は尊いですからね。そして事故で死んでしまう。一人残されたジュディのことを知った。がんこじじいは後悔してジュデイを引き取ろうとするが、ポックリ死んでしまう。それで末の息子がジュディを引き取った、教育が大事だと学院に入れる。やがてその息子もポックリ」と言いかけた所で、バージルがライリーの頭を叩き

「そうだ。優しいバージル叔父さんはジュディを学院に入れて、時々会いに行く。これで行こう。間抜けな侍従が笑いを誘ういい脚本だ」

「ありがとうございます」とジュディは答えたが、呆れ果てたって口調は隠していなかった。



 ここに来た時とは違う粗末な馬車に一人乗り、ジュディは王宮を出た。

 なぜか馭者は護衛のミックだった。


 学院に着いたジュディは門番に案内されて、院長室へ行き、ミックは寮の管理人と一緒に荷物を持ってジュディの部屋へ行った。

 ジュディが戻るのを待つことなくミックは学院を後にした。

 ジュディは院長に挨拶をした後、教務主任と会い明日、編入試験があると告げられ自分の部屋に戻った。


 ジュディが部屋に戻った頃、院長が

「ふん、理由わけありですか。かまいません」と呟きながら、ファイルを片付けていた。



 自分の部屋に入ったジュディは、小さいながら浴室が付いているのに、感激してバージルに感謝した。


 タンスには普段着と制服が用意してあり、文具も揃っていたし、ちょっとした小説もおいてあった。


 食堂で、ちょっと遠巻きにされながら食事を済ませると、小説をパラパラみて早めにベッドにはいった。



 翌日、試験は午前中で終わった。


 結果は寮に連絡すると言う事で、午後は図書館に行って見た。

 帝国に関する物が、たくさん並んでいた。ジュディは一冊選ぶと読み始めた。



 夕方、寮に戻ると連絡が来ていて、五年のAクラスと書いてあり、教科書も届いていた。五年は最終学年だ。

 これなら一年で卒業出来ると思いながら教科書を持って部屋に戻った。




 初めて教室にはいると、同級生は新学期が始まってから転入して来た生徒を興味深く見た。


 生徒は笑顔だが無言で挨拶すると自分の席についた。

 授業が始まると教師はこの異例の編入生の優秀さは聞いていたが、興味もあって、さりげなく当てた。しかしジュディはうろたえることなく答えた。

 生徒も教師もジュディに一目置くべきだと悟った。


 お昼になると食堂に向かうおり、ジュディの隣の生徒が話しかけた。

「ジュディさん、一緒に行きませんか?わたしはクラリス・フォードと言います」

「あっはっはい。クラリスさん。お願いします」ジュディは、少しつっかえて答えた。


「食堂はね、お昼は定食が二つあるの。どちらもまぁまぁ美味しいですわ」とクラリスが話し始め

「並んでお盆に好きな物をいれて行くの。そして最後に料金を払うの。支払いは現金ではなく食券よ。持ってます?」

「えぇ、昨日貰った・・・えっと買った」とジュディは答えた。食券は机においてあったのだ。

「ありますのね。では並びましょう。あとは好きな所に座って食べるの」

「はい」とジュディは答えたが、内心わくわくが止まらなかった。前はお金がなくて食堂の利用が出来なくて一度でいいから食べてみたいと思っていたのだ。

 食堂に入るとそこには美味しい匂いが満ちていた。これはなんの匂いからしら?

「今日は、魚のバター焼きとローストポークですね。付け合せは粉ふきいもと野菜を混ぜたもの。この付け合せは二回に一度は出て来ます」

 食堂入口に表示してあったらしく、クラリスは献立をジュディに教えた。

『魚とお肉かぁ・・・今日はお肉にしよう』とジュディは決めた。クラリスも同じ考えだったようで、二人はお盆を持って空いた席についた。

 一口食べて、ジュディは目を丸くした。かすかに

「美味しい」と呟いた。隣のクラリスはそのため息まじりの声を聞いたが、なにも言わなかった。


「うん、今日は美味しい。ちょうど油と赤みの両方が美味しいですね」とクラリスが言うのを聞いてジュディはお肉の脂身と赤みを味わい分けようと集中した。

 なんとなくそれの区別が出来るようになった時、お肉がなくなった。

 付け合せも美味しかったし、パンも美味しかった。


 トロンとした顔になったジュディを嫉妬の目で見るものがいたが、誰も気付かなかった。

 翌日は、二人が座っている所に、パトリシア・スミスとナタリー・ドミナが加わった。


 この日もローストポークを食べたジュディは、脂身と赤身の美味しさを堪能した。




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