王妃はわたくしですよ

朝山みどり

文字の大きさ
24 / 38

24 先方のお名前は?

しおりを挟む
「今、よろしいですか?」とジュディが部屋に入って来た。部屋に三人だけなのを確認して、さらにバーバラ・ジェーンの机を指して不在なのを確認して

「この名前のスペルの確認をと思いまして」と要件を口にした。

「あぁ、これね。ssとppはこれで正解。発音はsとpでいいそうだ。これに関しては自慢話があるみたいだから話題に出してくれ」

「なんですか? それ! 調べられないのですか?」とジュディが迷惑そうに言うと

「そうだ。取って食われるわけじゃなし。お茶飲みながら・・・こうさらっとね」とライリーが言うと

「はぁ・・・八つ当たりしたくなる気持ちわかります。彼女は明日からですか?」とジュディは机を見ながら言った。

「そのようだね。なんでも王妃からの誘いがしつこくて断るのが大変と連絡があったからもっと遅れるかもな」とライリーが言うと

「あの王妃、それなりに王妃だからな。自分の得には敏感だ」とバージルが言うと考えながら

「あの王妃を侮るな。なにかを企む頭はあるからな」と付け加えた。

「はい。気をつけます。それじゃ戻りますね」とジュディは部屋を出た。


「過保護ですね。突き放すのではなかったですか?」とミックが言うと

「そのつもりだったが、心配で」とバージルが答えると

「まぁいいでしょう」とライリーが笑いながら言った。

「こちらが頑張ってくれるといいけど」と机を見ながらライリーが言うと

「わたしたちがいるんですよ」とミックが答えて、二人はうなずいた。


 ジュディは部屋で資料をまとめると

「王妃殿下、新しい資料です」と渡した。

「あら、面倒な名前ね」

「発音は面倒ではなく普通ですが、この綴りについてお話するのがお好みだそうです。話題をそちらに誘導して下さいませ」

「まぁ面倒。ジュディがやりなさい」

「わたくしは後ろに控えておりますので、それは・・・」とジュディが言うと

「面倒ね。ほんとはジュディが会って話せばそれですむのに」と王妃が言うと

「ほんとはとは王妃殿下。その、とんでもないことでございます」とジュディが言っていると

「ちょっと宰相を呼んで。すぐ来るようにって」と後ろに向かって言った。

 すぐに侍女がその場を離れた。

「殿下」と思わずジュディが言うと

「あら、ジュディも慌てるのね」と王妃は笑うと

「これ美味しいわよ。どうぞ」とジュディの皿にマカロンを乗せた。


 程なく不機嫌なバージルがやって来た。

「わたくしは不安だからジュディ隣りに置きたいの。だけどわたくしが言うと角が立つでしょう。わたくしそういうの怖いから、バージルがジュディを押したってことにして欲しいのよ。だ・け・ど・ジュディは王妃つきのままよ。宰相は影からジュディを応援するの。それとジュディは当日わたくしと同じ衣装を着せたいの。わたくしは予算は気にしないけどね。まわりが気にすると思うのね。だからそこは宰相がね」

「わかりました。王妃殿下の為です。おつきはジュディ一人でいいですか?」とバージルが聞くと

「・・・ええ、ジュディ一人で充分よ。この件が終わるまでジュディに全て任せるわ。ジュディの言葉はわたくしの言葉よ。わかったわね。でも気をつけて。ジュディは謙虚だからそこは駄目って言ってね。ジュディは王妃同然だから」と王妃が言うと

 バージルは大きなため息をついて

「畏まりました」と言うと王妃に殺気のこもった一瞥を投げるとくるりと身を翻した。

 後ろの侍女と護衛が一斉に止めていた息を吐いた。





しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...