王妃はわたくしですよ

25 初めての仕事

「皆さん、お待たせしました。王妃殿下からの打診をやっと断れました」とバーバラ・ジェーンが挨拶をした。

「「「待っていた」」」と三人が返した。

「さっそくで悪いが、そこの右に積んである書類を頼む」とミックが指示を出して、すぐに自分の仕事に戻った。

　バーバラ・ジェーンが動かないのに気づいたバージルが

「どうした？」と聞くと

「運ぶのを手伝って下さい」とバーバラ・ジェーンが言った。

「運ぶ？？？それを？？」とミックが戸惑った声を出したが

「わかった」と言うと書類を全部持ち上げようとしたが、やめて半分にするとバーバラ・ジェーンの机に置いて、すぐに残りを運んだ。

「ご令嬢。これでよろしいですか？」と優しく笑うと席に戻った。

「わからない時は遠慮なく質問してくれ」とバージルも書類から顔をあげて言った。

　バーバラ・ジェーンはうなずくと書類を見た。

「数字が合っているかと見たらいいのですか？」

「うん、その程度の仕事で申し訳ないが、溜まってしまってな」とバージルがすまなそうに言った。

「はい、正直、わたくしには役不足だと思いますが、こんなものでしょう」と言うと書類を見始めた。

　途中で二度、バーバラ・ジェーンの侍女がお茶を持って来た。

「いいね。こんなのは。ありがとう」とバージルは侍女にお礼を言った。ミックもライリーも侍女にお礼を言った。

　バーバラ・ジェーンはむっとなったが何も言わなかった。

　ただ、侍女に「ありがとう」と言う声は冷たかった。


　終業の時刻になった。

「はぁ、そこまで出来たか。助かるな」とバーバラ・ジェーンの机を見てライリーが言った。

「今日は終わりだ」とミックが言ったがバーバラ・ジェーンは顔を上げなかった。

「お嬢さん。ご令嬢」とバージルが声をかけるとぱっと顔を上げて

「バーバラ・ジェーンと呼んで下さい」と言った。

「失礼、バーバラ・ジェーン。終わろう」と言った。


　三人はバーバラ・ジェーンと侍女を馬車乗り場まで送った。

「すれ違うやつら、羨ましそうだったな」とライリーが言うと

「確かに」とミックが笑った。

　三人は二人が馬車に乗るのを確認して、馬車を見送った。

「お嬢様。みなさま、お嬢様が大切なようですね」と侍女が言うと

「困ったわね。普通の令嬢と見て貰いたくないのに。同僚として見て貰いたいわ」とバーバラ・ジェーンは言った。