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09 ロザモンドの最初の外交 2
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原稿を受け取ったロザモンドは、読みにくいと感じたが、深く考えなかった。
末席にエリザベートが座り、なぜか客に取り囲まれているのを見て、いらいらした。
ロザモンドが席に向かうのを皆が迎えた。相手によってはロザモンドが礼をする。この国を代表して大国に挨拶をしているのだ。誇らしい気持ちが沸いて来る。
ちらっと見たエリザベートは深く礼をとっている。誰にも礼をとる立場の姉に対して、自分は王太子妃となった。
皆をことさらゆっくりと見渡して、合図をすると頭が上がった。
笑顔を作ると読み始めた。
たどたどしい、古代ギリー語が聞こえ始めた。
ここにいる者だったら、諳んじている定形文だ。読めなくてもこれくらいはすらすら言える。暗記している文章を順に言って行くだけで充分なのだ。
それが
(mいなさm。こmmいちは・・・おいdえkうあsrいいい・・・・・)
出席者はおもわず、お互いの顔を見てしまい、あわててロザモンドの手元を見た。確かに原稿を持っている。どうしたんだろう。知らない言語だろうか?
(これkああrrあmmお、mあかよkう・・・)
一枚めくるとロザモンドの顔が明るくなり、一同はほっとした。
「挨拶の決まり文句。社交辞令からふたつ・・・えっと・・・なかよくしましょ・・・・リリー・バーデン」
誰も反応出来なかった。仕掛けたエリザベートでも出来なかった。誰も呼吸が出来なかった。
一番大きな反応は侍女が一人飛び上がった事だが、彼女、リリー・バーデンは客の後方に控えていた為目立たなかった。
そこに、パチパチパチと拍手が・・・・皆ほっとした。拍手してもいいんだと、息を吸いながら拍手した。
救世主は誰かとみたら、エリザベートだった。一同ほっとして拍手した。
拍手の大半はエリザベートに捧げられたものだった。
その後お茶会は出席者の努力でつつがなく進行した。救いだったのは、ロザモンドがなにも気づいていないことだった。
失敗したって悪びれる事もなく、失敗を取りつくろうと饒舌になる事もなかった事を、彼女以外の出席者は感謝した。
どんな地獄にも終わりはある。一番の賓客である、さる大国の大公夫人が暇を告げた。皆は立ち上がって大公夫人を見送った。
順に上のクラスから帰って行ったタイミングで、お開きの挨拶をしようとエリザベートが立ち上がった時、
「あなたはいいわ」とロザモンドが声をかけた。そして立ち上がると
「自分でお礼を言いたかったの。今日は来てくれたありがとう。これからもよろしくね」と息を吸って
「リリー・バーデン」と高らかに言った。
「・・・・・・・」
「よろしくお願いしま」「よろし おねが す」とくちごもりながら挨拶すると客は帰って行った。
最後にエリザベートが
「わたくしも失礼します」と礼を取ると
「ちょっともっと読みやすく書いてよ。わたしに機転が効くからよかったけど」
「それは古代ギリー語ですよ。それは貴族なら子供の頃に諳んじた単純挨拶ですよ。ロザモンド様ならご存知でないとおかしいですよ」
そういうと心配して迎えにきたキャリーと一緒に出て行こうとした。
するとロザモンドはキャリーに原稿を渡すと
「読んでみなさい」と言った。
「キャリーはまだ読めないから最初の言葉をわたくしが・・・・」
すると
「大丈夫です、最初の言葉を見ると、見当がつくので、暗記したものを言います。(みいなあmm・・・みなさんこんにちはおいでくださいましてありがとうございます)でいいですか?」
「えぇ、発音が自然になってきましたね。この字を見ながら何度も暗唱すれば、この程度すぐ読めるようになるからがんばりましょうね」
「はい、エリザベート様」
「ロザモンド、挨拶くらいできるようになりなさい。わたくしは執務を社交をあなたがやる。これくらいは理解してるでしょ。毎日キャリーと一緒に古代ギリー語を暗記しなさい。『リリー・バーデン』は挨拶の結びの句じゃないわよ」
それからロザモンドに近づくと声を潜めて囁いた
「侍女のリリー・バーデンに気をつけなさい。前から怪しかったけど今回は目に余るわ」そして帰ろうと歩いて振り向いて
「古代ギリー語を知らないとお茶会ひとつ主催できないわよ。あなたのお母様のように下位貴族とだけ付き合う?そうしたいならそうなさい」
ロザモンドの反応をみて
「キャリー、あなたの勉強時間を取って悪いけど、この人達に古代ギリー語を教えてあげて頂戴な」
(合点承知の助)
(さすが、わかってやすね)
そして二人はさっさと帰った。
その夜、王太子がエリザベートの所へ、初めてやって来た。
「おや、ロザモンド様のお使いですか?」とエリザベートが先に言うと
「お前はロザモンドに恥をかかせるようなことを」
「わたくしがかかせたとか、人聞きの悪い・・・・・古代ギリー語の初歩の決まり文句すら覚えてないのが悪いのです。侯爵家の教育が悪い?教師が悪い?もともと、侯爵家は頭が悪いんですよ。わたくしなんか何度ムチで・・・
侯爵夫人からも何度ぶたれたか・・・・この子でさえ、少しは覚えてますよ。それに(恐れ入谷の鬼子母神)の類は庶民でも使いますよ」
「明日からこの子の勉強時間を使ってロザモンドに勉強させますが、中止しますか?そうしたら社交は殿下がおひとりでなさることになりますが・・・・」
「そこは、お前が・・・」とエリザベートを見た。その目にはある種の感情が・・・・
「執務をやる為のお飾りです」と言い切ったエリザベートに
「そうだな・・・・確かにそう言った」と返した、王太子の声は沈んでいた。
「ご存知ないわけではないでしょう。ロザモンドは教育をうけてないですよ。母はあの子が嫌がる事は、一切させなかった。望む事は全て叶えた。我慢をさせなかった。我慢て言葉そのものを知らないかもしれませんね。でも王太子殿下はそれを承知で彼女を選んだ。その為わたくしをお飾りで娶った。違いますか?
確かに正直、あそこまでとは・・・・・参りました。侯爵夫人の手腕が凄かったってことでしょうか!それとも騙されたほうが・・・」とぶつぶつ言った後で、
「勉強はさせます。せめて挨拶くらいは。よろしいですね」と王太子のほうを見て、はっきり言った。
「・・・・・」
「殿下の執務はわたくしがやっておりますから、できるだけ最愛の第一妃にいろいろ教えて上げて下さいね」
「おかえりよ」とエリザベートがキャリーに声をかけるとキャリーがドアを開けて
「どうぞ」と外を指し示した。
◇◇◇
古代ギリー語の設定
古文全体のイメージです。万葉時代から明治になるくらいのぼーーとした感じです。
貴族はその言葉を百人一首のように覚えていて、会話にちょっと挟んだりして教養を示します。スピーチの時はそうやって覚えているものをパズルのように組み合わせて使います。
発音はローマ字で書いた場合、nをm でをdde くをkku のように子音が重なる事があり、忠実に子音を重ねるのが正しい発音とされています。
今回エリザベートは決まり文句のみで、原稿を書きました。二枚目の紙にはその順番を書き止めてました。その紙に署名を貰いました。侍女の名前はリリー・バーデン。実家で王太子が来ている時にエリザベートにお茶をださなかったり、ノックしてもドアを開けなかった侍女です。
ただこの事で、リリーはロザモンドの不興を買いました。
庶民の使う古代ギリー語は落語の言葉やことわざの他にちょっと古い言い回しのイメージです。
なお文中では(古代キリー語の言葉)のように記述します。
末席にエリザベートが座り、なぜか客に取り囲まれているのを見て、いらいらした。
ロザモンドが席に向かうのを皆が迎えた。相手によってはロザモンドが礼をする。この国を代表して大国に挨拶をしているのだ。誇らしい気持ちが沸いて来る。
ちらっと見たエリザベートは深く礼をとっている。誰にも礼をとる立場の姉に対して、自分は王太子妃となった。
皆をことさらゆっくりと見渡して、合図をすると頭が上がった。
笑顔を作ると読み始めた。
たどたどしい、古代ギリー語が聞こえ始めた。
ここにいる者だったら、諳んじている定形文だ。読めなくてもこれくらいはすらすら言える。暗記している文章を順に言って行くだけで充分なのだ。
それが
(mいなさm。こmmいちは・・・おいdえkうあsrいいい・・・・・)
出席者はおもわず、お互いの顔を見てしまい、あわててロザモンドの手元を見た。確かに原稿を持っている。どうしたんだろう。知らない言語だろうか?
(これkああrrあmmお、mあかよkう・・・)
一枚めくるとロザモンドの顔が明るくなり、一同はほっとした。
「挨拶の決まり文句。社交辞令からふたつ・・・えっと・・・なかよくしましょ・・・・リリー・バーデン」
誰も反応出来なかった。仕掛けたエリザベートでも出来なかった。誰も呼吸が出来なかった。
一番大きな反応は侍女が一人飛び上がった事だが、彼女、リリー・バーデンは客の後方に控えていた為目立たなかった。
そこに、パチパチパチと拍手が・・・・皆ほっとした。拍手してもいいんだと、息を吸いながら拍手した。
救世主は誰かとみたら、エリザベートだった。一同ほっとして拍手した。
拍手の大半はエリザベートに捧げられたものだった。
その後お茶会は出席者の努力でつつがなく進行した。救いだったのは、ロザモンドがなにも気づいていないことだった。
失敗したって悪びれる事もなく、失敗を取りつくろうと饒舌になる事もなかった事を、彼女以外の出席者は感謝した。
どんな地獄にも終わりはある。一番の賓客である、さる大国の大公夫人が暇を告げた。皆は立ち上がって大公夫人を見送った。
順に上のクラスから帰って行ったタイミングで、お開きの挨拶をしようとエリザベートが立ち上がった時、
「あなたはいいわ」とロザモンドが声をかけた。そして立ち上がると
「自分でお礼を言いたかったの。今日は来てくれたありがとう。これからもよろしくね」と息を吸って
「リリー・バーデン」と高らかに言った。
「・・・・・・・」
「よろしくお願いしま」「よろし おねが す」とくちごもりながら挨拶すると客は帰って行った。
最後にエリザベートが
「わたくしも失礼します」と礼を取ると
「ちょっともっと読みやすく書いてよ。わたしに機転が効くからよかったけど」
「それは古代ギリー語ですよ。それは貴族なら子供の頃に諳んじた単純挨拶ですよ。ロザモンド様ならご存知でないとおかしいですよ」
そういうと心配して迎えにきたキャリーと一緒に出て行こうとした。
するとロザモンドはキャリーに原稿を渡すと
「読んでみなさい」と言った。
「キャリーはまだ読めないから最初の言葉をわたくしが・・・・」
すると
「大丈夫です、最初の言葉を見ると、見当がつくので、暗記したものを言います。(みいなあmm・・・みなさんこんにちはおいでくださいましてありがとうございます)でいいですか?」
「えぇ、発音が自然になってきましたね。この字を見ながら何度も暗唱すれば、この程度すぐ読めるようになるからがんばりましょうね」
「はい、エリザベート様」
「ロザモンド、挨拶くらいできるようになりなさい。わたくしは執務を社交をあなたがやる。これくらいは理解してるでしょ。毎日キャリーと一緒に古代ギリー語を暗記しなさい。『リリー・バーデン』は挨拶の結びの句じゃないわよ」
それからロザモンドに近づくと声を潜めて囁いた
「侍女のリリー・バーデンに気をつけなさい。前から怪しかったけど今回は目に余るわ」そして帰ろうと歩いて振り向いて
「古代ギリー語を知らないとお茶会ひとつ主催できないわよ。あなたのお母様のように下位貴族とだけ付き合う?そうしたいならそうなさい」
ロザモンドの反応をみて
「キャリー、あなたの勉強時間を取って悪いけど、この人達に古代ギリー語を教えてあげて頂戴な」
(合点承知の助)
(さすが、わかってやすね)
そして二人はさっさと帰った。
その夜、王太子がエリザベートの所へ、初めてやって来た。
「おや、ロザモンド様のお使いですか?」とエリザベートが先に言うと
「お前はロザモンドに恥をかかせるようなことを」
「わたくしがかかせたとか、人聞きの悪い・・・・・古代ギリー語の初歩の決まり文句すら覚えてないのが悪いのです。侯爵家の教育が悪い?教師が悪い?もともと、侯爵家は頭が悪いんですよ。わたくしなんか何度ムチで・・・
侯爵夫人からも何度ぶたれたか・・・・この子でさえ、少しは覚えてますよ。それに(恐れ入谷の鬼子母神)の類は庶民でも使いますよ」
「明日からこの子の勉強時間を使ってロザモンドに勉強させますが、中止しますか?そうしたら社交は殿下がおひとりでなさることになりますが・・・・」
「そこは、お前が・・・」とエリザベートを見た。その目にはある種の感情が・・・・
「執務をやる為のお飾りです」と言い切ったエリザベートに
「そうだな・・・・確かにそう言った」と返した、王太子の声は沈んでいた。
「ご存知ないわけではないでしょう。ロザモンドは教育をうけてないですよ。母はあの子が嫌がる事は、一切させなかった。望む事は全て叶えた。我慢をさせなかった。我慢て言葉そのものを知らないかもしれませんね。でも王太子殿下はそれを承知で彼女を選んだ。その為わたくしをお飾りで娶った。違いますか?
確かに正直、あそこまでとは・・・・・参りました。侯爵夫人の手腕が凄かったってことでしょうか!それとも騙されたほうが・・・」とぶつぶつ言った後で、
「勉強はさせます。せめて挨拶くらいは。よろしいですね」と王太子のほうを見て、はっきり言った。
「・・・・・」
「殿下の執務はわたくしがやっておりますから、できるだけ最愛の第一妃にいろいろ教えて上げて下さいね」
「おかえりよ」とエリザベートがキャリーに声をかけるとキャリーがドアを開けて
「どうぞ」と外を指し示した。
◇◇◇
古代ギリー語の設定
古文全体のイメージです。万葉時代から明治になるくらいのぼーーとした感じです。
貴族はその言葉を百人一首のように覚えていて、会話にちょっと挟んだりして教養を示します。スピーチの時はそうやって覚えているものをパズルのように組み合わせて使います。
発音はローマ字で書いた場合、nをm でをdde くをkku のように子音が重なる事があり、忠実に子音を重ねるのが正しい発音とされています。
今回エリザベートは決まり文句のみで、原稿を書きました。二枚目の紙にはその順番を書き止めてました。その紙に署名を貰いました。侍女の名前はリリー・バーデン。実家で王太子が来ている時にエリザベートにお茶をださなかったり、ノックしてもドアを開けなかった侍女です。
ただこの事で、リリーはロザモンドの不興を買いました。
庶民の使う古代ギリー語は落語の言葉やことわざの他にちょっと古い言い回しのイメージです。
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