19 / 48
14 侍女長は来た
しおりを挟む
侍女長の訪れが告げられキャリーがドアを開けた。
「ようやく挨拶にきたの。随分とお忙しいのね」と部屋に足を踏み入れた途端にエリザベートからこう言われた侍女長は、礼儀を忘れて
「お飾りの妃殿下には、侍女長の忙しさは理解できないかと」と返した。
「なるほど、忙しいとちゃんとした礼をとる必要はないとお考えなのかしら?」
「・・・・・・」
「侍女長、あなたの考えを聞かせて下さい。態度で知らせて下さいましたが、きちんと言葉で伝えて下さい」
「・・・・・・・」
「忙しいと言う事よね。黙っているのは時間が勿体無いと思うけど・・・・付き合って待つつもりはないわ」
そういうとエリザベートは書類の処理を再開した。
「これは数字が違ってます。この数字がおかしいのは元帳が間違っているってことだから、キャリー悪いけど行って指導してあげて」
「はい、エリザベート様」とキャリーが出て行った。
隅に控えていたエミリーに視線を送ると、心得顔のエミリーが、お茶を持って来た。
お茶を飲みながら、エリザベートは侍女長をじろじろと見た。
すごくいい気持ちだった。身分から言うとわたくしが絶対に上。きちんとした礼儀を要求するのは当たり前だ。
もっと付け上がらせてから叩いても良かったけど・・・・まぁっ徹底的にやらせて貰うわ。
あの夜会の時の若者の一人が偶然、侍女長の親戚だっていうのも、おあつらえ向きだし・・・
そこにキャリーが戻って来た。一人ではなかった。
二人の男性が一緒だった。二人は侍女長を見てぎょっとしたが、キャリーもエリザベートもエミリーもすましているので、なにも言わず、迂回してエリザベートのそばにやって来た。
「元帳はどうなってたの?キャリー」と言うエリザベートの言葉にキャリーではなく二人が答えた。
「妃殿下、去年の数字が間違ってました。どうやって修正したらいいでしょうか?」
「今年の数字だけ修正すればいいわ。注をきちんと入れておけばいい。去年その仕事をした文官と、連絡は取れる?」
「はい」と言いながら二人の目が泳いだ。
「犯罪じゃないでしょうが・・・・こういう事は見逃せない。妃としてここにいる以上はね」
「妃殿下、あの・・・」と一人が口ごもった。
「うん?・・・・・その文官には元帳の数字が違っている件で話したいと、わたくしが言っていると伝えて頂戴」
二人は深く頭を下げて帰って行った。
「考えはまとまったかしら、侍女長」とエリザベートが声をかけると
「この事はロザモンド様に申し上げます」
「この事ってなんの事でしょう。侍女長」と薄ら笑いを浮かべてエリザベートが問いかけた。
「わたくしを立ったまま待たせた事です」と侍女長が気色ばむと
「えーーとつまり、立ったままって事が侍女長のお気に召さなかったってことなの?」
「わたくしの前で侍女長に座る権利があったとは存じませんでした」とエリザベートは、書類の処理を続けながら
「侍女長、あなたこそわたくしをさんざん待たせましたね。質問に答えずに・・・・お飾りの妃に答える気はないと言う事ですね・・・・・」
悔し涙だろうか?うっすらと目を潤ませた侍女長に向かって手をひらっと動かしながら
「お下がり」とエリザベートは言い放った。
ここに、来た理由も忘れたのかしら?友人の婚約者二人を、わたくしが奪い取って、婚約解消させた件はどうなったの?とエリザベートは行儀悪く、肩をすくめた。
「ようやく挨拶にきたの。随分とお忙しいのね」と部屋に足を踏み入れた途端にエリザベートからこう言われた侍女長は、礼儀を忘れて
「お飾りの妃殿下には、侍女長の忙しさは理解できないかと」と返した。
「なるほど、忙しいとちゃんとした礼をとる必要はないとお考えなのかしら?」
「・・・・・・」
「侍女長、あなたの考えを聞かせて下さい。態度で知らせて下さいましたが、きちんと言葉で伝えて下さい」
「・・・・・・・」
「忙しいと言う事よね。黙っているのは時間が勿体無いと思うけど・・・・付き合って待つつもりはないわ」
そういうとエリザベートは書類の処理を再開した。
「これは数字が違ってます。この数字がおかしいのは元帳が間違っているってことだから、キャリー悪いけど行って指導してあげて」
「はい、エリザベート様」とキャリーが出て行った。
隅に控えていたエミリーに視線を送ると、心得顔のエミリーが、お茶を持って来た。
お茶を飲みながら、エリザベートは侍女長をじろじろと見た。
すごくいい気持ちだった。身分から言うとわたくしが絶対に上。きちんとした礼儀を要求するのは当たり前だ。
もっと付け上がらせてから叩いても良かったけど・・・・まぁっ徹底的にやらせて貰うわ。
あの夜会の時の若者の一人が偶然、侍女長の親戚だっていうのも、おあつらえ向きだし・・・
そこにキャリーが戻って来た。一人ではなかった。
二人の男性が一緒だった。二人は侍女長を見てぎょっとしたが、キャリーもエリザベートもエミリーもすましているので、なにも言わず、迂回してエリザベートのそばにやって来た。
「元帳はどうなってたの?キャリー」と言うエリザベートの言葉にキャリーではなく二人が答えた。
「妃殿下、去年の数字が間違ってました。どうやって修正したらいいでしょうか?」
「今年の数字だけ修正すればいいわ。注をきちんと入れておけばいい。去年その仕事をした文官と、連絡は取れる?」
「はい」と言いながら二人の目が泳いだ。
「犯罪じゃないでしょうが・・・・こういう事は見逃せない。妃としてここにいる以上はね」
「妃殿下、あの・・・」と一人が口ごもった。
「うん?・・・・・その文官には元帳の数字が違っている件で話したいと、わたくしが言っていると伝えて頂戴」
二人は深く頭を下げて帰って行った。
「考えはまとまったかしら、侍女長」とエリザベートが声をかけると
「この事はロザモンド様に申し上げます」
「この事ってなんの事でしょう。侍女長」と薄ら笑いを浮かべてエリザベートが問いかけた。
「わたくしを立ったまま待たせた事です」と侍女長が気色ばむと
「えーーとつまり、立ったままって事が侍女長のお気に召さなかったってことなの?」
「わたくしの前で侍女長に座る権利があったとは存じませんでした」とエリザベートは、書類の処理を続けながら
「侍女長、あなたこそわたくしをさんざん待たせましたね。質問に答えずに・・・・お飾りの妃に答える気はないと言う事ですね・・・・・」
悔し涙だろうか?うっすらと目を潤ませた侍女長に向かって手をひらっと動かしながら
「お下がり」とエリザベートは言い放った。
ここに、来た理由も忘れたのかしら?友人の婚約者二人を、わたくしが奪い取って、婚約解消させた件はどうなったの?とエリザベートは行儀悪く、肩をすくめた。
673
あなたにおすすめの小説
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)
青空一夏
恋愛
従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。
だったら、婚約破棄はやめましょう。
ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!
悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる