今更、いやですわ   【本編 完結しました】

朝山みどり

文字の大きさ
18 / 48

あのころ

しおりを挟む
僕は母上と一緒に母上の生まれたお城に行くのが好きだった。そしてそのお城に遊びに来る女の子が好きだった。

僕たちは三人でお茶をしたが、その日は庭のお花が綺麗だと従兄弟のフレデリックが、自慢してお庭でお茶をした。

フレデリックが自慢するだけあって、お庭は素敵でエリザベートは、感心してフレデリックにたくさんお礼を言ってた。

するとフレデリックは僕を見て、へへっへんって顔をした。僕の城の庭はここよりもっと素敵だ。

いつかエリザベートを呼んで、感心してもらって、一杯遊ぶんだ。と僕は思っていた。

自慢野郎のフレデリックは今度は遠くの山を見て、あの山にいつか行くんだと自慢した。

「わぁすごい。行きたいよねぇ」とエリザベートが言うと

「だろう!僕は大きくなったら馭者になるから、馬車に乗せて連れて行ってやるよ」と胸を張った。

するとエリザベートは

「馭者ってすごいよね。お馬を操ってすいすい馬車を走らせてどこでも行ける!」

「だろう。だから、エリザベートは楽しみに待っていてね」と言いながらフレデリックは、僕をへへっへって見た。

こいつが馭者になるんなら、僕は馬車が走る道を造る人になってやると思い

「そんなら、僕は道を造る人になるよ。ほら、ちゃんとした道じゃないと馬車も走りにくいでしょ」と言うとフレデリックが

「すげぇ、僕はそんな事思いつかなかった。ギル、やっぱりすごいね」と僕の手を取った。

フレデリックは自慢野郎のくせにいいやつだった。

でも、三人で過ごせたのは、この時までだ。



次の時、エリザベートの妹のロザモンドと言うチビが、泣きながらやって来て無理やり席に座った。

エリザベートの妹にフレデリックは注意しにくいだろうし、優しいエリザベートは妹に注意できないだろう。

でもこんなしつけも出来てないチビは、きちんとさせないといけない。

僕たちは普通の子より、きちんとしてないといけないのだ。僕は父上にも母上にも兄上たちにもそう習った。

だから、僕が代表で、

「君、ロザモンドは、このお席に来てはいけないよ。ほら、そこの侍女と一緒に帰りなさい」と言った。

すると侍女は僕を睨みつけて

「ロザモンド様、いじめられましたね」とチビを連れて帰った。


翌日はエリザベートとロザモンドの母親がロザモンドの手を引いてやって来た。

「三人は大きいのだから、ロザモンドと、ちゃんと遊んで下さい」と言ってロザモンドを置いて行った。

ロザモンドがいると、ちっとも楽しくなかった。




その後、父上が病気になった。すると上の兄上が、父上の代わりにお仕事をするようになった。

下の兄上は上の兄上の仕事をするようになった。僕も出来るお手伝いをするようにした。


ある日、山崩れが起きて街道がふさがった。王族からも誰かが行く必要があり、僕が行くことになった。

皆は心配したし、僕も怖かった。でも僕は王子様だ。

僕は馬車に乗って急いだ。道ががたがたで、馬車はゆっくりしか動かない。でも馭者はすごい。

馬を励まし、時に叱り進んで行く。


この時、僕は気づいた。道を造るって大事だと。それでお仕事を一生懸命に見た。街道を復旧させるために土を取り除き、また山が崩れないように崖を固めて行く。

僕はその時から、道を造るために必要なことをたくさん学ぶ事にした。


そうしてたら、母上や医者の努力で、父上の病気が治った。

家族でお祝いをしたが、その時、父上は僕に謝った。

「お前は早く大人になってしまった。もっと子供時代を楽しんで欲しかったのに・・・・すまなかった」って僕は父上にすがりついて、泣いてしまった。

大人はこんなに泣かないはずだ。僕はまだ子供だから謝らないでって言いたかったけど、泣いてたから言えなかった。



その後、エリザベートがフレデリックと婚約したと聞いた。

まだ、子供の僕は泣いた。


しおりを挟む
感想 178

あなたにおすすめの小説

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた

奏千歌
恋愛
 [ディエム家の双子姉妹]  どうして、こんな事になってしまったのか。  妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)

青空一夏
恋愛
 従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。  だったら、婚約破棄はやめましょう。  ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!  悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!

処理中です...