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33 王家主催のお茶会
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王太子とロザモンドの結婚一年目でお茶会が開催された。王太子の祝いと言う事で招待客は若かった。
二人は別々の場所で招待客の挨拶を受けていた。
エリザベートは料理に気を配り、外国からの客の応対をした。そしてカザリンも、彼女に付き従って動いた。
会場をぐるっと見渡していると、思いがけない姿を見つけた。
「ギル、久しぶり、よく来てくれたわ」とエリザベートが言うと
「元気そうでよかった」と優雅にかがむとエリザベートの手をとった。
「逢瀬はバルコニーで」と笑うとギルバードはエリザベートをエスコートしてバルコニーに出た。
「ねぇ、妹とロザモンドの事」
「えぇ、申し訳ないことをしたわ、謝罪のお手紙を出したけど・・・」
「イライザから、手紙の事は聞いた。返って恐縮していたよ・・・・よろしく、仲良くしたいって伝言受けてるよ」
「そう、良かったわ」
「一度、国に帰るけど、すぐに戻って来る。この国の道を造るよ」とギルバードはエリザベートを見ながら言った。
「フレデリックとは、手紙でやりとりしてたんだ。君には内緒でって二人で決めて」
内緒って聞いて、エリザベートが思わず口を尖らしたのを、見たギルバードは子供時代のエリザベートを重ねた。
「わたしだけに怒らないで、怒るなら二人でいる時に」とギルバードは大げさに震えて言った。
「もう」とエリザベートがギルバードを睨んだ時、悲鳴が聞こえた。
とっさにギルバードはエリザベートを後ろにかばったが、すぐに二人は悲鳴の方に急いだ。
侍従のダラスが
「エリザベート様、ロザモンド様が・・・・・」と言うとエリザベートをその場に押しとどめた。
「いけません。危ないです」とダラスはエリザベートを決して近寄らせなかった。
「犯人がまだいるかも知れません。狙われるかも知れません」
ギルバードが指揮を取り、客は全員、別室で待機となり、一人も帰さなかった。
被害を受けたのは、ロザモンドとフレデリックだった。
二人は別室で手当を受けているが、カザリンが家族として付き添った。
エリザベートはギルバードとダラスに付き添われて、二人を見舞ったがすぐに客と話をする為に各部屋を回った。
「カザリン、あなたが義姉になってくれて、助かるわ」とエリザベートは、カザリンの手を握るとささやいた。
エリザベートは、若い女性と話していて、違和感を感じた。古代ギリー語を会話に混ぜて来たのだ。いかにも貴族といった感じで背筋を伸ばして、言葉使いも聞き手を意識しているようだった。
結局、客は全員、王宮で一晩を過ごした。
待機していた馭者に、食事と飲み物を提供するように言ったのはギルバードだった。
「さすがだわ。わたくし、そこまで気が回らなかった」とエリザベートが言うと
「馭者は大事だ。安全に家に戻って欲しいからね」
それから、二人はロザモンドとフレデリックの様子を見に行った。
ロザモンドは薬で眠っていた。切りつけられた傷が痛々しい。嫌いで憎んだ相手だが、その姿を見ればそんな感情も消えて行った。
カザリンは侍女を休ませて自分一人で付き添っていてこう言った。
「わたくしは、家に戻れば侍女にまかせて休めますもの。ガーベラとジャスミンはこれからが大変ですわ」
「確かにそうなりますね。でもカザリンも無理しないでね」とエリザベートは返した。
フレデリックは起きて待っていた。寝てないことを責めようと口を開いた二人を見て、手で黙るように合図してフレデリックは
「君たち二人に、任せていれば安心だと知ってるけど、待っていたかった」
「そうだね。わたしも同じ事をする」とギルバードが答えた。
「明日から取り調べだな」とフレデリックは呟いた。
「しっかり、寝て明日に備えろ」とギルバードは言うとテーブルに置いてあった薬湯をフレデリックに渡した。
ギルバードは彼に笑いかけると、ゆっくりと薬湯を飲み、器を返して水の入ったコップを受け取った。
空のコップを受け取ると、
「おやすみ」というとエリザベートを促して部屋を出た。
二人は別々の場所で招待客の挨拶を受けていた。
エリザベートは料理に気を配り、外国からの客の応対をした。そしてカザリンも、彼女に付き従って動いた。
会場をぐるっと見渡していると、思いがけない姿を見つけた。
「ギル、久しぶり、よく来てくれたわ」とエリザベートが言うと
「元気そうでよかった」と優雅にかがむとエリザベートの手をとった。
「逢瀬はバルコニーで」と笑うとギルバードはエリザベートをエスコートしてバルコニーに出た。
「ねぇ、妹とロザモンドの事」
「えぇ、申し訳ないことをしたわ、謝罪のお手紙を出したけど・・・」
「イライザから、手紙の事は聞いた。返って恐縮していたよ・・・・よろしく、仲良くしたいって伝言受けてるよ」
「そう、良かったわ」
「一度、国に帰るけど、すぐに戻って来る。この国の道を造るよ」とギルバードはエリザベートを見ながら言った。
「フレデリックとは、手紙でやりとりしてたんだ。君には内緒でって二人で決めて」
内緒って聞いて、エリザベートが思わず口を尖らしたのを、見たギルバードは子供時代のエリザベートを重ねた。
「わたしだけに怒らないで、怒るなら二人でいる時に」とギルバードは大げさに震えて言った。
「もう」とエリザベートがギルバードを睨んだ時、悲鳴が聞こえた。
とっさにギルバードはエリザベートを後ろにかばったが、すぐに二人は悲鳴の方に急いだ。
侍従のダラスが
「エリザベート様、ロザモンド様が・・・・・」と言うとエリザベートをその場に押しとどめた。
「いけません。危ないです」とダラスはエリザベートを決して近寄らせなかった。
「犯人がまだいるかも知れません。狙われるかも知れません」
ギルバードが指揮を取り、客は全員、別室で待機となり、一人も帰さなかった。
被害を受けたのは、ロザモンドとフレデリックだった。
二人は別室で手当を受けているが、カザリンが家族として付き添った。
エリザベートはギルバードとダラスに付き添われて、二人を見舞ったがすぐに客と話をする為に各部屋を回った。
「カザリン、あなたが義姉になってくれて、助かるわ」とエリザベートは、カザリンの手を握るとささやいた。
エリザベートは、若い女性と話していて、違和感を感じた。古代ギリー語を会話に混ぜて来たのだ。いかにも貴族といった感じで背筋を伸ばして、言葉使いも聞き手を意識しているようだった。
結局、客は全員、王宮で一晩を過ごした。
待機していた馭者に、食事と飲み物を提供するように言ったのはギルバードだった。
「さすがだわ。わたくし、そこまで気が回らなかった」とエリザベートが言うと
「馭者は大事だ。安全に家に戻って欲しいからね」
それから、二人はロザモンドとフレデリックの様子を見に行った。
ロザモンドは薬で眠っていた。切りつけられた傷が痛々しい。嫌いで憎んだ相手だが、その姿を見ればそんな感情も消えて行った。
カザリンは侍女を休ませて自分一人で付き添っていてこう言った。
「わたくしは、家に戻れば侍女にまかせて休めますもの。ガーベラとジャスミンはこれからが大変ですわ」
「確かにそうなりますね。でもカザリンも無理しないでね」とエリザベートは返した。
フレデリックは起きて待っていた。寝てないことを責めようと口を開いた二人を見て、手で黙るように合図してフレデリックは
「君たち二人に、任せていれば安心だと知ってるけど、待っていたかった」
「そうだね。わたしも同じ事をする」とギルバードが答えた。
「明日から取り調べだな」とフレデリックは呟いた。
「しっかり、寝て明日に備えろ」とギルバードは言うとテーブルに置いてあった薬湯をフレデリックに渡した。
ギルバードは彼に笑いかけると、ゆっくりと薬湯を飲み、器を返して水の入ったコップを受け取った。
空のコップを受け取ると、
「おやすみ」というとエリザベートを促して部屋を出た。
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