黙ってすっこんどいたら良かったのに

朝山みどり

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33 社長交代の日 アサト目線

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 社長交代を発表した日、用事が済むと倉庫に戻ろうとするカオリを誘って早く帰った。

 話があるというカオリに風呂を勧めて、夕食の支度を始めた。風呂上がりのいい女になるカオリを想像して、ニヤニヤしてしまうが、多分今日のことで怒るだろうから、言い訳をどうしようかと考える。

「いい匂いね」と言いながら、カオリがやって来た。

「梅酒の水割り、冷蔵庫に入ってるよ」と言うと、
「おぉ」と言いながら取り出して、立ったまま一口飲んで、
「美味しい」と笑ったが、すぐに真顔になって
「何故?内緒だったの?」と一言。じっと俺を見て
「わたし、黙ってられたわよ。信用しなかったの?」
「違う、違う、驚かせたかっただけ」と言うとじっと見つめられた。

「わかったわ。確かにあそこは、テコ入れが必要だと思う。あなたが適任かどうかはわからないけど」

「ちゃんとやるよ。これでやっと明日からは一緒に出勤できるね」と当たり前の口調で言うと、
「そうかな?一緒?」
「だって、同じ所に出勤だろ」
「そうだけど、わたし、もう大丈夫だから部屋を探すね」
「そんな必要ないよ。今、別に困ってないだろ。僕たち。」
「うん」
「だったら、このままでいいよ。そろそろグラタンが出来上がる。席についていて。あっ俺のワインを食卓に持って行って貰える?」と料理しながら、飲んでいたワインを見た。
 カオリはワインの瓶を食卓に持って行って、そのまま席に着いた。

 今日はカオリの好きな献立だ。クラッカーにクリームチーズを載せたもの。千切り野菜のコンソメ。アスパラガスのサラダ。カボチャと挽肉のグラタン。
 カオリは献立に何にも言わないけど、嬉しそうにしている。さりげなく梅酒のおかわりを作った。

 彼女はこれを俺の得意料理だと思っているが、俺はこれを得意料理にしたんだ。

 カオリがいつにない食欲で食べていくのを俺は見ていた。

「このコンソメの野菜の口当たりが真似しても出ないのよね。わたしも自分で作ってたんだけど。だって野菜を千切りにするだけでしょ。まぁわたしはざく切りで作ってたけどね。でも時間がある時、丁寧に千切りにしてもこんなにおいしくできなかった。スープはキューブよね」

「うん、キューブだよ。いつものメーカーだけど」

「うーーん不思議、かわりはないと思うけど」とカオリが言うけど、これは包丁を研いでないと美味しくないんだ。カオリの包丁は切れが悪いし、はっきり行って手際も悪い。千切りに時間をかけるのがおかしい・・・だけど、種明かしはしない。これは俺だけが作れる味だ。

 デザートのレモンゼリーを食べながら俺はカオリに言った。

「カオリ。カオリは俺の特別だ。再会できたのは神が俺にチャンスをくれたのだと思っている。俺はカオリを傷つけた二人を許せない。君の成果を横取りした奴らを許せない。君は好きにしていい。だけど俺をそばに置いて欲しい」

 カオリが俺をじっと見ている。

「信じていいの?本当に信じていいの?」

「あぁ、信じてくれ。絶対に裏切らない。愛してる。昔からずっとカオリだけを愛しているんだ」

「わたしも愛してる。大切よ。信じてる」

 席を立ってカオリの前にひざまずいた。手をとって自分の手で包み込んだ。


 それから俺は紅茶を淹れなおしてカオリの前に置いた。


 紅茶を飲みながらカオリは、いたずらっぽく笑うと、

「よかったこれで食べることにことかかない。アサトレストランを手に入れた」と言った。

 それから俺たちは、ソファに移って隣同士に座った。今、流行りの映画の話やラベンダーランドの話をした。

 いつの間にかカオリの肩を抱いていた。

 俺はカオリの腰をしっかりと抱いて寝室へ導いた。












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