気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

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第15話 朝食を食べない家風ですか?

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二人はメイナード侯爵に向かって

「侯爵家は朝食を食べない家風なんでしょうか?」と先ず言い出した。
「朝食?」と侯爵が不思議そうに言うと
「質問が悪かったでしょうか?」と首を傾げながらバートは言うと
「今日は朝食を召し上がりましたか?」と聞いた。
「もちろんだ」と答えると
「ご家族全員ですか?」と圧のある問い方をした。
「我が家の方針で食事は家族揃って食べる」と侯爵が答えると
「なるほど、家族揃ってですね」と二人は目交ぜしながら答えた。

「その確認したいのだが、アリスはあなた方二人とここで仕事をしていたのかな?」
「はい、そうですね。アリス様はまだ婚約者で執務実態がありませんので、わたくしたちの辞令はありませんが、ここで一緒に仕事をしていました」とヘドラーが答えた。
「いつから?」
「王太子妃教育の一環ということでしたので、婚約されてからすぐですね。最初は簡単な資料を読んで要約などが多かったですね。統計資料を判断しやすいように並べるとか、根気のいる面倒な仕事ですね」

「その、合間にお茶をするとかは?」と侯爵が聞くと
「お茶くらいは飲みますよ。朝食を食べてないことはわかりますから、わたしたちがお菓子やパンを持ち込んで、それをつまんでましたから・・・」と睨みつけられた侯爵が
「食べていないとは?」と間抜けな声を出した。
「子供がおなかを空かせていれば、それなりにわかりますよ」とバートが言った。
「姉上たちと食べているのではないのか?」と呟いた声は小さくて二人に聞こえなかった。

「王太子殿下や王妃殿下とお茶をすることは?」と声を振り絞った。二人は顔を見合わせて
「どう?」「どうかな?」と言うと
「覚えているかぎりありません」と答えた。

侯爵はもっとたくさん質問したいことがあったが、二人の侮蔑を込めた視線を浴びて質問する勇気がでなかった。だが、死に物狂いでこう尋ねた。

「その・・・お昼は」と言ったところでじろっと見られて、かろうじて
「食べてい・・た・・の・・・かな」と小さな声で言い終えた。

「あぁ、昼ね・・・一度職員用の食堂にお連れしたことがありまして」とバートが言ったのを聞いて侯爵は
「職員?なぜ・・・姉上は・・・家族だって・・・アリスは」と口走るとバートは黙ってじろじろと顔を見て来た。
「すまん、黙っているから続きを」と侯爵が言うと
「職員食堂に一度行って、戻ったら王妃殿下の使いが待っていて利用を禁止された。働く職員の為の施設を働いていない」と言ったところでバートの顔が歪み涙声になり
「働いていない、婚約者が使うことならんということで」と言うとハンカチを出して涙を拭いた。
「そんな・・・そんな・・・」
「大丈夫ですよ。パンとかお菓子をつまみましたから・・・」とヘドラーが笑って言った。

「無礼を承知で質問しますが、我々は働くと給料を貰いますが、アリス様の給料は侯爵閣下が盗っていたんですか?」と言ったバートは侯爵を睨みつけていた。
「盗る?」と侯爵は呟いたが意味を理解して
「どういうことだ?」と言った。
「早朝から、食事もなしで働いて無給なので?」とヘドラーが不思議そうに言った。
「お小遣いとか渡してないんですか?」とバートが聞いた。
「貴族に当てはまるかわからないけど、僕たちは街で買い食いしたり買い物をする小遣いを貰ってましたが」とヘドラーも言った。
「お貴族様は・・・食事がないのがわかっていても、なにか買って食べたりしないのですか?」とバートが言った。
侯爵は二人の言葉が頭のなかを飛び交った。意味がわからない・・・知ってる言葉なのに・・・
アリスの出費の予算はある。身なりを整えたり・・・婚約者としての体面だって。自分だって学生時代にお茶をしたり、気に入った物を自由に買っていた。だが、どうしてそんな質問を・・・いや、そんな質問が出るということは!!

二人はそんな侯爵を見て、お互いを見た。それから黙って礼を取ると去って行った。

「遠くに行く人みたいでした」去り際の一言はこうだった。
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